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ChatGPTに複数の役割を演じさせる

はじめに

どこで読んだか忘れてしまったが、創作のアイディアに関して複数の視点からChatGPTに意見を述べさせる、ということをやっている人がいた。前回の映画の感想実験で、それぞれのスタンスを明示することにより複数の視点からの意見を述べさせることができることがわかった。ならば、ある意見を批判的に検討する、ということもできるのではないか。

実験の設定

小説の舞台設定を検討する、という設定とした。設定する役割はアイディアを出す作家とそのアイディアを検討する二人の編集者、(今回は出番がなかったが)作家に期待している読者である。初期設定のプロンプトは以下のようにし、なるべく人物設定を細かくしている。

#指示:
これからあなたに作家、二人の編集者、読者の4つの役割を演じ分けてもらいます。
各役割の特性を以下に示すので、それに応じた応答をしてください。
出力の制約条件は以下に示します。
シチュエーションを以下に示すので、それに沿って出力を展開してください。

#シチュエーション:
作家が新作のアイディアを編集者に話しているところです。
作家はより良い作品にするため、編集者のアドバイスがほしいと思っています。
作家がもってきたアイディアのベースは以下に示します。

#作家のアイディア:
近未来の日本、高度にネットワーク化されている一方、日が暮れると暗い路地裏では怨霊が跋扈する世界。

#各役割の特性:
作家:若い気鋭の作家で、SFをベースに複数のジャンルを融合した作風が話題である。前作がヒットしており、新作に期待を期待されているが、プレッシャーを感じている。
編集者A:作家の将来に期待しており、作家の作品を好意的に評価している。作家の作品の読者層を広げたいと思っており、前作よりも良い作品を期待している。
編集者B:作家の将来に期待しているが、作家の作品はマンネリ化しつつあると考えており、より新しいアイディアと世界観を求めている。批判的な発言をするがそれはより良い作品を生み出したいためである。
読者:作家のファン。前作が非常に面白く、次回作に期待している。この読者の知人は作家をあまり評価していないようだが、きっと知人が気に入る次回作になるだろうと考えている。

#出力形式:
・出力は1000文字以内にしてください。
・【作家】のように出力の最初に役割を明示してください。

#最初の入力:
作家は自分のアイディアを二人の編集者に話してください。元のアイディアをもとに、3種類の異なる舞台設定を箇条書きで示してください。

結果

作家の初回提案

まずは最初の出力である。初期設定で示したベースアイディアをもとに、3つの異なる舞台設定が出力されればOKである。

新宿はベタなような気もするがまあいいだろう。山梨の山間部も展開次第では面白いかもしれない。しかしネットワーク化された社会はどこにいった?新興国首都は日本から離れてしまっているが、ベースアイディアから少し離れた視点をいれる、というのも良いやり方なのかもしれない。

編集者の応答

これに対し、編集者A、Bのそれぞれの意見を述べさせる。

編集者Aの考えを出力してください。もっとも良いアイディアはどれでしょうか。
複数のアイディアを融合することを作家に提案するのも良いでしょう。
編集者Bの考えを出力してください。もっとも良いアイディアはどれでしょうか。
複数のアイディアを融合することを作家に提案するのも良いでしょう。

どっちの編集者も作家に期待している、という初期設定が良くなかっただろうか。内容はともかく、似たような応答になってしまい、いまいちな感じがしなくもない。複数の視点をいれて批判的に検討してもらう場合、もっと性格の異なる人物設定にした方が良いかもしれない。
それは今後の課題として、応答を続けてみよう。

作家の再提案

編集者Aと編集者Bの意見をもとに、作家は舞台設定の新しいアイディアを3つ、再度提案してください。

ベースアイディアはどこにいった?いまいち基盤となる世界観を反映しているようには思えないが。
さて、この作家の再提案に対し、編集者A、Bの意見を述べさせる。ただ、同じ形式だとつまらないので、AとBの意見交換形式で出力させることはできるだろうか。

二人の編集者の意見交換

作家のアイディアに関して編集者Aと編集者Bの意見交換を会話形式で出力してください。

おお、できたできた。各人の意見を直接作家に返す、という形式でなく、二人の意見交換を作家が聞いてどう考えたか、という状況を作ることができたようだ。
さぁ、これに対して作家の最終アイディアを開陳してもらおう。

作家の最終提案

二人の編集者の意見交換を受け、作家は斬新なアイディアを思いつきました。
1000文字以内で詳細を編集者にわかりやすいように伝えてください。

”影のネットワーク”とか、面白そうじゃないか。もしかしたら作家と編集者の応答をどんどん繰り返していくことにより、アイディアをもっと練っていくこともできるのかも。
※ところで"影のネットワーク"なんていったいどこから出てきたんだろう?それはそれで気になるところだ。
この最終提案に対する編集者の意見を述べて終わりにしよう。

編集者の意見

編集者Aの意見を述べてください。
編集者Bの意見を述べてください。

ありゃ、ちょっとプロンプトがまずかったか。このプロンプトだと「編集者についての意見」になってしまったっぽい。失敗だったか。なんかいまいちしまりのない終わりになってしまったが、ひとまず今回はここまで。

考察

ChatGPTに複数の役割を演じ分けさせる、ということは十分に可能なようだ。各役割の設定が詳細であればあるほど、その効果は大きいものとなると思われる。
一方で、前回の映画感想で見えてきたことだが、そこまで細かい設定を事前にしなくても、ChatGPT側である程度の人物設定をしてくれている可能性がある。ただ、その人物設定もどこまで詳細なのか、一貫性はあるのか、などの課題は残るだろう。
なんにせよ、このようにアイディアの壁打ちをChatGPTでそこそこできるのは面白いかもしれない。どこで読んだか忘れたが、ここにさらに「神の視点」、つまり全体を俯瞰したときの視点を入れることもできるようだ。今回は小説の舞台設定のアイディア検討というシチュエーションだったが、社会情勢に関する意見交換、のようなシチュエーションも面白いかもしれない。

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