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【現代麻雀への道】21 海底撈月と河底撈魚

海底と河底は違う?

最後のツモ牌でツモアガりすると海底撈月(ハイテイローユエ)。そして最後の打牌でロンアガリすると河底撈魚(ホウテイローユイ)。ハイテイとホウテイ、どちらも最後の1牌をめぐる1ハン役で、ツモかロンかの違いしかない。

「なぜ名前が違うのだろう?」
「どうせだったらハイティに統一しちゃえばいいのに」

そんな風に思ったことのある人もいるだろう。あるいは、この2つが違った役だと初めて知ったという人だっているかもしれない。 しかし、この2つはれっきとした別の役である。しかもハイテイは中国産の役、ホウテイは日本産の役なのだ。

それではいったいどうしてこの2つが別個に存在しているのだろうか。それが今回のテーマである。

ホウテイの誕生は昭和5年

日本初の入門書『支那骨牌(しなこっぱい)麻雀』は大正末期に出版された。

そこにはすでに海底撈月が載っている。つまりハイテイは中国から伝わったわけである。中国古典麻雀では2ハン役だったが、このときはもう1ハン役になっていた。

そしてこの冊子に河底撈魚は載っていない。ホウテイが誕生したのは昭和5年のことなのである。

そのころ、日本は恐ろしいほどの麻雀ブームにつつまれていた。当時の麻雀は知的で優雅で高尚なイメージで、そのためだろうか、ルールについて論じることがやたら盛んだったのである。

昭和4年、例の入門書の著者である林茂光(りんもこう)氏が、海底撈月という役をなくすべきだと発表した。その論拠は、ツモアガリすると役がつくのに、ロンアガリしても役がつかないのはおかしい、どちらも同じ最後の牌ではないか、というものだった。

それを受けて日本麻雀連盟では、ならばロンアガリした場合の役を作ってしまえと河底撈魚を制定した。命名したのは木村衛(まもる)氏で、 河に打たれた最後の牌でアガるから「河の底で魚を撈る」とした。

しかし、いったん決めてしまってから彼は後悔する。この名前は魚臭くてイマイチではないか。

彼が半年くらいたって知ったのが謡曲(ようきょく)「海女(あま)」だった。そのなかに海女が海底から宝珠(ほうじゅ)をとってくる話がある。

これだ! 「河底」で「魚」をとるよりも、「海底」で「珠」を取る方が美しい。そこで彼は海底撈珠に名前を変更しようとしたが、ただ面倒臭いという理由だろう、誰も耳を貸さなかったという。

議論は好んでもネーミングにはこだわらないのが日本人なのである。

ホウテイ=人和?

さらに驚くべき後日談がある。後にわかったことだが、中国の地方役にホウテイと同じものがあった。その役の名は、なんと人和(レンホー)だった。

しかしそのころ日本でも、独自に人和という役を作り出していた。天地人という言葉があるから、天和と地和があるなら人和もあっていいじゃないかと作られたものだ。これが現在でも一部で採用されている人和である。

さすがにこうなると、河底撈魚を人和に変更しようなどと言い出す者もいなかった。こうしてハイテイとホウテイが別個の役という状態のまま現在にいたっている。

今から振り返って

今回の内容は【現代麻雀への道】7 ホウテイロンの成立と同じで、切り口が少し違うだけです。
前回のやつは13枚基準論vs14枚基準論が切り口になってるだけで。

今になってnoteにアップしてて思いますけど、ネーミングで後悔してる人、多すぎですね。
栄(ロン)の林茂光、後悔したか不明だけど適当な当て字が正式名になっちゃった一盃口の天野大三、今回の河底撈魚の木村衛で3人目です。ネーミングはしっかり考えて一発で決めなきゃ!と感じられます。

ルール的な話になりますけど、個人的には、今からでも遅くはないので、2つまとめて海底(ハイテイ)という役にまとめてしまった方がいいと思いますね。別である意味がないです。

あと、1ハンは安すぎて、出現率が低い割にたいして高くもないという存在感の低さ。どうせなら4ハンくらいないと。

しかし、そうなると、最後の1牌だけ特殊になってゲーム構造的に影響を受けます。
ハイテイツモだけ高くするのは構わないと思うんですけど、ハイテイ1個前放銃なら1000点なのに、ハイテイ放銃だとマンガンみたいな話になります。
それならそれでいーんじゃね?という考え方もあるし、それは変じゃね?という考え方もあります。
ぼく個人としてはどっちでもいいですw

ということで、ハイテイは廃止するか、2つをまとめて1個の役にして3~4ハンにアップするかのどっちじゃないでしょうか。

リンシャンカイホウ、チャンカン、ハイテイ、ホウテイはみんな1ハンと安すぎなのに出現率も低くて、ただルールを複雑にしてるだけの存在だと思います。

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