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【麻雀漫画】麻雀漫画の歴史

『まんが秘宝 青春まんがクロニクル』というムックに書いた「麻雀漫画に青春は存在するか?」のボツ編です。
読み返してみると、これは麻雀漫画史であって、そこに青春は存在するか?という切り口になってません。
これは専門家病ですわ。
自分の専門に関する常日頃から構築してきた枠組みを捨てられなくなってしまうという。
なんか出てくる漫画が古すぎてヤバイです(;^ω^)
……とまぁそんな内容なのに、改めて題をつけて売り物にしちゃってすいません(;・∀・)
トップ画像は、TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹 麻雀漫画感想と歴史年表 目次より

エロ漫画の一形態という出自

麻雀×青春というのがこの文章のテーマなので、順に作品紹介していくのが本来だと思われるが、麻雀漫画の歴史という大仰(おおぎょう)な話から始めさせていただきたい。

麻雀漫画というジャンルは、まっとうな少年漫画や青年漫画とは違って、エロギャンブル系漫画として生まれてきた。出生からしていやしかった。

麻雀漫画の第一号は、昭和四四年に『プレイコミック』に掲載された「發の罠」(つのだじろう作)とされている。『プレイコミック』という雑誌名からも、大人の読み捨て系漫画だった出自はわかるだろう。

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昨年亡くなった竹書房の元会長に伺った話によると、麻雀ブームとされていた当時ですら活字の麻雀雑誌は苦戦していたが、あるときふと思いついて麻雀漫画だけ集めた増刊号を作ってみたら即座に完売。味をしめて二冊目を作ったらこれまた完売。出せば出すほど売れたという。

その美味しさに他社も気づき、各社が争うように麻雀漫画の雑誌を出しまくったが、砂漠が水を吸い込むがごとく売れていった。当時は漫画マーケットの急速な拡大期だったと思われるが、中でも麻雀漫画は今でいうならSNS系のIT企業みたいな急成長株だったようだ。こうしてエロギャンブル系漫画の一ジャンルとして麻雀漫画は生まれ、瞬時にして定着した。

一の青春の影には千のクズ

作品的にどうだったかというと、語る価値はゼロ。まったくない。出せば出すだけ売れるから、作品を練り込むより量産が優先された。各社とも漫画家に丸投げで、漫画家が先行作品の模倣的ストーリーを量産した。

今でもたまに見かける『漫画ローレンス』みたいなエロ漫画のエロを麻雀に置き換え、シナリオの質を落としたような雑誌&作品ばかりだった。

ストーリーの典型としてはこんな感じ。
謎の渡世人なる主人公が、なんちゃらの政みたいな異名を持つ強敵と対決して、途中は相手のイカサマ技に苦戦するが、最後はうまいこと必殺技を繰り出して逆転勝ち。そして主人公は追いすがる女を捨てて、「むなしい」とつぶやきながら去っていく。

現代の目からするとリアリティはゼロ。当時の人がどう思ってそんな漫画を買いまくっていたのか本当に謎だ。

もう少し真面目に考察してみると、当時の麻雀漫画には一つのファンタジーが前提になっていたことがわかる。それは「麻雀打ち」なる謎の職業の存在だった。

賭け麻雀の勝ち分だけで暮らす麻雀打ちという人々がいて、彼らは強敵を求めて全国をさすらっている。一般麻雀ファンはそういった人たちにあこがれており、彼らを主人公にした荒唐無稽な物語を読む。そんな構図が成立していた。

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