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映画『THE FIRST SLAM DUNK』はいいぞ、早く観てきてほしい!

From TV animation――かつてのちびっこたちには見覚えがあると思います。バンダイがアニメを元にして作ったゲームのタイトルにつける決まり文句です。大好きなアニメがゲームになる。この決まり文句にはその興奮が焼きついています。今ではもっぱらワンピースにつけられているようです。しかし、かつてFrom TV animationと言えば、スラムダンクでした。

映画『THE FIRST SLAM DUNK』が2022年12月3日に公開されました。そう、スラムダンクです。前作は1995年7月15日の公開だったようなので、27年ぶりということになります。テレビアニメの終了からだと26年になるのだそうです。テレビアニメで消化不良を味わった身からすると、待ちに待ったという感じです。再びアニメでスラムダンクを見られると思うとウズウズしました。

やはり観に行けてよかった。ストーリーはまったく未公開。声優さんを総入れ替えしているのもかなり不安でした。その発表が前売り開始の後だったことで悪い評判が立ったりもしました。かつてのちびっこにとって、"あの声"がスラムダンクです。前評判でいろんなことを言われていたので、どうしようかと考えていました。しかし蓋を開けてみれば、観に行けてよかった。控え目に言っても最高でした!

特にバスケシーンのアニメーションがすごい!この映画のバスケシーンは(おそらく)すべて、3Dのモデルを利用したアニメーションでできています。人やボールの動きはまるで本物を見ているかのようで、迫力があります。バスケのアニメですから、やはりバスケのシーンで見応えがあってこそです。ミュージカルでいうところの、歌と踊りが最高、みたいな感じです。

3Dアニメーションだからといってリアルでよいかというと、そうとも限りません。近頃は3Dのモデルを利用したアニメーションをよく見かけるようになりました。「進撃の巨人」でも「ラブライブ!」でも、迫力のあるシーンを3Dアニメーションで魅せています。トゥーンレンダリングといって、この手のアニメーションでは3Dのモデルをアニメ調にして映像を生成します。ゲームがこの表現で先駆けていて、「ジェット セット ラジオ」などは2000年当時かなり印象的でした。しかし、いくつかの3Dアニメーションは、造形が正確な分、二次元のアニメとしては気持ちよくないものだったりします。動きの硬い人形がのっぺりとしたテクスチャで動くからです。造形が正しいだけでは、逆に、迫力を欠いたものにしてしまうのです。

映画は二次元のアニメとしてすごく気持ちのいいものになっています。バスケシーンは3Dアニメーションでありながらも、二次元アニメとして魅力的です。漫画の"あのシーン"が動きのある映像の中でしっかり表現されています。人の動きも表情も、3Dモデル特有の違和感がありません。線のタッチや塗りのテクスチャは手書きのようです。線と影で表現するユニフォームのシワも、スラムダンクらしいと感じました。3Dのモデルをただ動かしてレンダリングしただけのものとは違います。シーンごとに造形や配置をかなり精密に調整しているのではないかと想像します。顔のアップのシーンでもあれだけかっこいいのは見事です。

それはまるでスポーツのハイライトを見ているかのようです。3Dアニメーションを活かしたバスケシーンはすごくリアルです。「SLAM DUNK Talkin' to the Rim」というスマートフォンアプリを知っているでしょか。宮城桜木がバスケの練習をしている姿をスマートフォンのカメラ映像に重ねて見ることができるアプリです。映画では、漫画の"あのシーン"を一枚絵で見せるのではなく、このアプリのような動きのある映像の中のシーンにしています。絵としての展開ではなく、コートの中の動きのあるゲーム展開があるのです。なので、そこで実際にプレイしているゲームを見ているかのようです。コートの上で誰がどう位置していてどう動くのか、本物のゲーム展開を再構築して映像が作られているのだと思います。

映像の中で息づかいを感じる。あるいは、時間の流れを感じる、といえるのかもしれません。絵を見ているというよりは、動きを見ている感じです。止め絵やセリフ回しのためのシーンはほとんどありません。たとえば、「速攻!」などと言いながら無限にスライドする床をドリブルし続けるような絵はないのです。「うおおぉぉ!」と手を伸ばして空中に留まり続ける一枚絵もありません。誰かがセリフをしゃべる間まわりで棒立ちしている人もいません。赤城が叫んで桜木がそれに応えてまた叫ぶ。流川が相手のシュートを模倣してみせる。三井がフリースローを決めて高笑いする。宮城が執拗なプレスをドリブルで切り抜ける。すべて、コートという場、流れる時間の中で演技しています。

新しいスポーツアニメの形を見たような気がします。リアルな人の動きとゲーム展開。止め絵を使わない動きのある見せ場。すべてが動いている中のセリフ回し。場と、時間と、生のようなものを感じました。まるで本物を見ているかのような迫力に引き込まれます。これは想像でしかありませんが、作り手はこの映画をキャラクターの劇にしたくなかったのではないかと思います。声優を総入れ替えしたのも分かる気がしました。"あの声"ではどうしてもキャラクターが先立ってしまう。すると、セリフの掛け合いをする劇になってしまう。監督は声優の変更について、「かつて育てられたキャラクターをいったん捨ててもらわないといけない」と述べたそうです。

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そういうわけで、『THE FIRST SLAM DUNK』おすすめです。前評判で気が進まずにまだ観ていない人も、足を運んでみてください。スラムダンク好きの方は観て後悔することはないはずです。映画には、今回感想を述べたバスケシーンだけではなく、人間ドラマもあります。いろんな意味で感動できると思います。なお私は、プロローグ後のオープニングでいきなり前のめりになりました。ネタバレはなるべく見ないように。スラムダンクを知らない人は、漫画を全巻読んだ後にテレビアニメを最後まで見てから、鑑賞するとよいです。テレビアニメから新しいアニメーションへの革新を見られると思います。繰り返しですが、おすすめです!

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