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ベトナム不動産投資の税務

1. 居住者の定義
2. 購入から賃貸
3. 不動産売却時

はじめに
2021年12月初めにVETTERさん主催の資産運用EXPOにて「知らなきゃ投資はできない!ベトナム不動産投資にかかる税金講座」というテーマでお話させていただきました。

資産運用EXPOベトナム2021

2020年よりコロナの影響でベトナムに渡航できない状況が続いていますが、本来であればベトナム不動産投資は2015年の不動産法改正により、制限はあるものの、魅力的な話であります。
購入条件にベトナムに入国できる者とあり、入国した実績が必要なため、コロナが落ち着くまで日本からの購入は難しいかもしれませんが、今後のために、またベトナム国内にいる者にとっては引き続き魅力のある投資であるため、ベトナム不動産投資にかかる税務について以下まとめます。

1. 居住者の定義
まず自分が税務上どういったステータスに該当するのか確認が必要になる。
ベトナムで全世界所得が課税対象となるベトナム居住者には下記の2条件のうち、どちらかに当てはまれば該当する。
① 暦年で、ベトナムに183日以上滞在している
ただし、入国初年度は、入国日から1年間で判断され、入国日と出国日は合わせて1日と数える
② 183日”以上の賃貸契約を有する(レジデンスカード保有者も注意)
②のみに当てはまる者については、日本の管轄税務署発行の居住証明書を取得すれば非居住者となる (以下、国税庁HPを参照)
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9210.htm

一方で日本の居住者は、日本国内に住所と有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有していれば日本居住者となる。

日本もベトナムも居住者以外が非居住者と定義されている。

それぞれの国での居住者、非居住者の課税関係は以下のとおりである。

図1

2. 購入から賃貸
(1)ベトナムの税金、税務手続き:ベトナム居住者、非居住者共通(全員対象)

図2

※付加価値税、個人所得税の留意点
いずれも、経費にかかる控除はない。収入が月840万VND(約4.2万円)または年1億VND(50万円)以下であれば課税対象外となる。
また、その他抑えておくべき細かい点は以下の通り。
・ 税コードの取得 申告までに間に合えばOK
・レッドインボイスの発行は不要、契約書と請求書でOK
・四半期ごとに翌月末まで、もしくは暦年分を翌年4月末までに物件所在地の管轄税務局へ申告、納税(2020年までは3月末)
・法人に賃貸した場合、法人が源泉徴収して代理で申告、納税も可能

(2)日本の税金、税務手続き:日本の居住者のみ
①購入時 
年末時点で海外財産の合計金額が5,000万円を超える場合には、所得税の確定申告時に国外財産調書を提出することになる。
この5,000万円の判定は、不動産は時価または取得価格で判断、現地の金融口座は年末時点の残高による。
固定資産は資産の所在地で課される地方税のため対象外に、消費税は日本国内で事業として行われた取引が対象のため対象外になる。
②賃貸時
所得税が課されるが、ベトナムと異なり、計算が煩雑である。

【課税所得】総収入金額-必要経費=不動産所得の金額
【税率】以下の所得税額に加えて復興税特別所得税(所得税×2.1%)と住民税(10%)課される。(以下の表は国税庁HPより)

図3

【為替換算】 収入日、支払日のTTM、ただし継続適用を条件として収入は取引日のTTB, 経費は取引日のTTSとすることも可能。
【必要経費】 必要経費には保険料、修繕費、減価償却費を含めることが可能
【減価償却】 日本の耐用年数省令に基づいて計算、為替は取得時点のTTM.
例:住居用 木造合成樹脂 22年、木造モルタル 20年、鉄骨鉄筋コンクリート 47年、 れんが造・石造・ブロック造 38年
【外国税額控除】
制度上は、ベトナムで払った所得税を日本の所得税から控除することが可能。
ただし、日本の所得税が控除できる項目が多いため、税額がベトナムに比べて少なくなる可能性がある。日本の納税額が控除限度額となるので、控除できない金額が生じる可能性あり。
また、確定申告書を提出した日の属する年で控除を適用するため、年度ごとの申告を適用する場合、もしくは四半期申告を適用した第4四半期分は控除額が1年ずれることになる。
制度上は、3年間の繰越控除の適用、もしくは控除ではなく必要経費と選択することも可能。


3. 不動産売却時
(1) ベトナムの税金
居住者、非居住者共通で個人所得税は「売却価格×2%」で課される。
申告納税期限は、譲渡契約の日から10日以内とされている。ただし、譲渡契約書に明記されており、買い手が代行して申告、納税する場合は、所有権移転日から30日以内となる。
また、免除要件として、所有アパートが1件のみであればその譲渡課税は免除とされている。しかし、現在では、所有が1件のみであることの証明手続きが必要とされており、事例が少ないため、実務上期限内に、承認を得ることが難しい。また将来的には免除規定が撤廃され、複数所有であれば税率が上がる改正が予定されている。

(2) 日本の税金
日本の居住者のみ日本でも個人所得税が課される。
【課税所得】収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額
【税率】
日本国内の不動産売却同様に分離課税。
取得後5年以内の売却は短期譲渡所得として39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)、5年超の売却は長期譲渡所得として20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
【為替換算】
原則、譲渡日、支払日のTTM、ただし売却で得た外貨を直ちにJPYにした場合は譲渡対価をTTBで計算可能。
【取得費】
減価償却費を差し引いた残額。取得時に適用される為替換算レートは減価償却同様、取得時点のTTM。そのため取得時との為替差額に注意が必要
【外国税額控除】
不動産所得同様、譲渡時のベトナム税額も外国税額控除の適用可能。他の国の国外所得や外国税額と合わせて総額計算が必要なので注意。

おわりに
上記の通り、ベトナムでは経費控除はできないものの、税率は給与所得に比べると安く、日本居住者としてもベトナムで払った税金は煩雑ではあるものの、控除できる可能性があるので、税務の面からもベトナム不動産は魅力的と考えます。

もしベトナム不動産投資を行うので、個人の税金処理を相談したいなどあれば、ぜひ弊社までご連絡下さい。



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