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コロナウイルス関連費用のベトナム税務上取り扱いまとめ

新型コロナウイルスの感染第4波が依然続く中、ベトナムも経済を回していく方向に舵を取り始め、9月より徐々に規制緩和が始まっていく様相です。そこで改めて会社への出社、新規赴任者の入国、駐在員の交代などで発生する費用について、法人税、個人所得税の観点から以下にまとめてみました。(画像は、課税になる費用が次々と出てくることをイメージしています)
またI-GLOCALの以下のページで同様の内容をまとめた表もありますので、ご参考ください。

https://www.i-glocal.com/cms/wp-content/uploads/2021/09/IGL_Tax-treatments-of-expense-related-to-Covid19_17092021.pdf

1.外国人の入国時
(1)一般論
入国時のPCR検査代、治験代、隔離ホテル代、航空チケット代については、当該費用を会社負担とする旨について、①労働契約書、②財務規定、③集団労働協約のいずれかで明記している場合に法人税の損金算入とされます。
航空チケット代は出張扱いの場合、もしくは年1回の私用で帰国が書面で明記されている場合のみ、個人所得税は不課税となります。
ホテル代は、会社がホテル代を直接支払いし、かつ会社に対してインボイスが発行されている場合、家賃・ホテル代を除く課税所得の15%を上限とした額が課税所得に算入されます。
それ以外の場合は、ホテル代全額が課税所得となります。
PCR検査などのその他便益については(日本では個人の便益ではなく会社の経費の一環と考えると思いますが)、個人所得税の課税対象となります。

(2)労働許可証の有無
ベトナムで外国人が働くためには、労働許可証の取得もしくは免除が必要となります。申請不要の免除対象であれば影響はありません。

取得もしくは免除申請が必要な場合、税法令上は明確にされていませんが、ベトナム法人が負担したその人にかかる費用で労働許可証の取得前、免除申請前に発生した費用は法人税の課税所得の計算上、損金不算入として費用として認められません。

そのため初の入国、もしくは労働許可証の期限が出国期間中に切れてしまい再取得する場合は、各隔離等の費用が損金不算入となってしまう可能性が高いため、注意が必要です。
労働許可証があれば(1)の要件を満たすことで損金算入可能となります。
また、個人所得税には、労働許可証の有無による影響はありません。

(3)入国月の日本での費用(PCR、ビザ関連)
ベトナムの所得税の考え方では、所得税の課税対象期間は、入国日からではなく、入国した月から得た所得は、ベトナムで課税対象となります。

現在入国前に陰性証明の取得やビザ取得のための費用が発生し、日本の会社負担の経費とされると思いますが、ベトナムの個人所得税の課税対象になる点はご留意ください。

法人税は日本で負担していれば、関係ないですが、ベトナム負担の場合、(2)の通り労働許可証がないことを理由に損金不算入となります。

2.外国人の帰国時
外国人が帰国する場合、まず183日以上の滞在者であれば、本帰国となると出国の日から45日以内に確定申告が必要となります。出張者など183日未満の滞在の場合は、四半期ごとの申告で帰国ということでの申告タイミングに変わりはありません。
一時帰国の場合は、以下のレポートを参考ください。

https://note.com/fukubook/n/ndb5c3b711d96

また、出国にあたり、PCR検査代、治験代、隔離ホテル代、航空チケット代など各種費用が掛かると思いますが、これらは上記の入国時と同じように出張費用もしくは年1回の一時帰国費用となる場合を除き、個人所得税は課税対象となることがほとんどです。
法人税は当該費用を会社負担とする旨について、①労働契約書、②財務規定、③集団労働協約のいずれかで明記している場合に損金算入となります。

3.従業員への各種費用
(1)PCR検査代

当局からのCovidー19検査実施の指示書類、会社がCovidー19検査を実施することの決定を明示できれば、法人税の損金算入となりますが、各個人の個人所得税の課税対象にはなるものとして、Vinh Phuc税務局からオフィシャルレターが出ております。
私見ではありますが、事業に関係があり、検査を受けないと業務ができないため、また定期的に検査は必要となり、合計額は結構な金額となるため、個人所得税の基礎控除内の給与所得者の手取り額へ影響が出ることが予測され、個人所得税の課税対象というのは反発が起きるのではないかと個人的には予想します。
(2)医薬品、マスクの支給
法人税は一般的な事務用品などと同様の条件で、損金算入となります。
個人所得税においては、全社員に共有され、誰でも利用できるものであれば課税対象となりませんが、受益者の名前が明記されているなど一定の者のみ受ける場合は個人所得税の課税対象となります。こちらはコロナ前の考え方と変わらないです。
(3)隔離費用
従業員やその家族が陽性者、陽性者との濃厚接触者となることで、会社が隔離ホテル代を負担する場合、もしくは会社の泊まり込み出社などの前に一定期間ホテルなどで会社の指示で集団隔離するためホテル代を会社が負担する場合があります。
これらの費用は法人税は事業に関係する費用として損金算入が可能と考えますが、個人所得税は上記(2)同様に一定の者が受ける便益として課税対象に含まれると理解されています。

以上、多くの会社で発生することが予測される費用を中心に法人税、個人所得税の課税の有無をまとめてみました。

2021年9月現在、コロナ関連費用に関して明確に規定がされていないため、今後各地方のオフィシャルレターや新たな通達などの発行により取り扱いがことなるかもしれないので、その点は弊社ニュースレターなどでも随時案内していきます。

ニュースレターの登録は下記から簡単に行えますので、ぜひご活用ください。
https://www.i-glocal.com/newsletter/

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