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人はなぜアイドルに魅了されるのか~「崇拝」するオタクの信仰と熱狂~

アイドルのファンというのは面白い生物である。自身の時間とお金を「推しメン」に貢ぎ、いつでもどこでも「可愛い」「カッコいい」と褒め称え、「推しメン」を神格化するのである。そこには、アーティストやスポーツ選手を応援するといった、一般的なエンタメにおける「ファン」の意識とは異なるそれがある。

ここに「一般的なエンタメにおける「ファン」の意識」とは異なるそれ」と記したのは、アイドルのファンの応援姿勢の特徴が「強烈な信仰心」にあることに他ならないからである。時としてファン側が自己犠牲の姿勢を見せながら、目の前の人間にただ熱狂する様は「崇拝」と呼んでも良いだろう。

ファンはアイドルに「カリスマ性」「処女性」(女性アイドルのみ)「容姿」を求めるが、ファンはなぜアイドルに魅了され、自己を開放し、気持ち悪いくらいのおぞましい献身的な態度を示すのか。

脳科学や心理学で何度も語られてきたであろう「アイドルになぜハマるのか」という話題にあえて切り込んだのは、実はアイドルに心酔するきっかけと過程が、アイドルの映す像や提供するコンセプト・コンテンツとファンの精神状態に非常に関係しているのではないかと考えるからである。

つまり、どういうことか。例えば、自身が現在抱えているコンプレックスやうまく言語化できない日常生活でのモヤモヤがあるとしよう。その悩みやモヤモヤを同じように抱えながら頑張るアイドル、それらの内容を言語化した歌詞の曲に出逢ったらどうであろう。自己肯定感を高めてくれたり、同じように悩んでるメンバーやグループから勇気を貰うことがあるに違いない。

多くの人がふとアイドルにハマり、無意識のうちに熱狂している理由は、まさにここにあるのではないだろうか。「なぜこのアイドルにハマったのか」その理由と時期を振り返った時、おそらく自身の生活において何らかのつまづきがあったり、何かが変わる転機だった時期ではないだろうか

アイドルが見せる笑顔の裏には、人には見せない苦労と努力がある。同じアイドルでも「その時そのタイミング」でなければハマっていなかったアイドルがいるはずだ。なぜその時にあなたは好きになったのか?

今日では様々なコンセプトのアイドルが生まれており、「アイドルの戦国時代」と言われているが、その中であなたが好きになったアイドルはどんなアイドルなのか。何を歌い、何を語っているのか。

自分に足りなかったり、上手く自分の中で整理できなかった気持ちや状態、それらが投影されていた彼ら、彼女らに惹きつけられた面がきっとあるはずだろう。

ただ可愛いだけではない、ただ歌が上手いだけではない。では何に惹かれたのか。

どこまでもその笑顔と背中を追い続け、いつか必ず訪れる「卒業」という残酷な現実に打ちひしがれるファンの姿は、客観的に見たら嘲笑される対象である。

しかし、彼ら彼女らの「何か」に救われ、魅了されたのは紛れもない事実である。

「崇拝」するアイドルのファンの心には、自身の心に眠った「何か」がある。その「何か」を投影したアイドルに人は惹かれてゆく。

アイドルにかける「頑張れー!」「そんなことないよー!」という言葉は、翻って今の自分に言い聞かせている人生の応援メッセージなのかもしれない。

セゾン③

#アイドル #アイドルオタク

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