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耳コピしている人の脳内

こんにちは、ひよこです。最近のnoteは勉強や就活、教育等の真面目な内容が続いたので、今回は久しぶりに音楽のことを書いてみようと思います。ズバリ、耳コピをしている人の脳内ってどうなってるの??というテーマでお送りします。

「耳コピ」とは、一般的に、音楽を譜面に頼らず自身の耳だけで読み取り、ピアノやギター等の楽器を用いてその音楽を再現する作業・能力のことを指します。習い事で楽器を経験したことがある人も「譜面を見たら弾けるけどなぁ」という方は非常に多いでしょう。音楽をかじったことがあるから、誰しもが当たり前のように「耳コピ」できるかと言われたら、そうとも限りません。反対に、楽器を弾く能力はそこまで高くなくとも、耳の力は相当ある方もいます。音大の試験に「聴音」という分野がありますが、ある程度以上に音楽能力を高めていく場合、この「耳コピ能力」は持ち合わせて損はないですし、むしろ字の通り「音」を「楽しむ」時に、「耳コピ」は非常に役に立つ特技と言えるかもしれません。

さて、本題に入りますが、実際に耳コピをしている人の頭の中では、何が起こっているのでしょうか。耳コピができる人はどのように音楽を捉えているのでしょうか、またどのように分析しているのでしょうか。音楽は、一般的に「メロディー」「ハーモニー」「リズム」の3要素から構成されています。今回は、昨年からヒットしているYOASOBIさんの「夜に駆ける」を例に、 当該要素をいかに把握するか、ひよこの視点から見ていきます。なお、耳コピの仕方は人によって異なることだけご承知おきください。

曲の構成とキーを探る

初めて曲を聴く時、まず大前提として押さえておかなければならないのが、曲の構成とキーです。構成とは、どこからどこまでがAメロ、Bメロ、サビであるかいうことです。この部分に関しては、特別な知識は必要ないかもしれませんが、大まかな構成を事前に把握しておくことは、後のキー(調)の把握やメロディーの特定に繋がるため、かなり大切です。ある程度の耳コピをこなすと、盛り上がりとコードの進行で、あと何小節で次のセクションに行くか、推測できるようになってきます。「そろそろサビきそうだなぁ」という感覚ですね。

「夜に駆ける」を参考にすると、冒頭の出だし「沈むように溶けてゆくように 二人だけの空が広がる夜に」を終え、Aメロ、Bメロを経て「騒がしい日々に笑えない君に…」に繋がっていくという、一連の曲の流れを掴む必要があります。最後のサビでは、転調もしていますね。

曲の構成と同時に、その曲の「キー」(調)も同様に把握しておかなければなりません。キーとは、その曲全体の音の高低を指しますから、どういった響きになるのかは、このキーによって変化します。その曲が何調なのかを特定する時、多くの人はメロディーから見分けるか、コード進行から特定します。明るいか、暗いか、その音に#や♭がついているか、そういった要素から、その曲のキーを確定していきます。よく「曲の最後のメロディー音に注目しなさい、最後の音がそのキーの中心となる音だから」と言われます。例えば最後が「ド」で終わったら「ハ長調」といった具合です。しかし、必ずしも最後のメロディー音が「ド」で終わったからハ長調とは限りませんし、転調したり、あるいは語り・ラップが挿入されるかもしれません。ですから、曲の最後のメロディー音がそのままその曲のキーの確定材料になるかと聞かれたら、イエスとは正直言えないですね。ただ、一番最後のコードに注目することは十分意味を持ちますから、トータルで判断していくことが大切です。曲のキーは、以下に書くように、メロディー、コード等からトータル的に把握していくことが大切です。

「夜に駆ける」では、メインのキーがE♭、2番サビがD、ラスサビがFと変化していくことが分かったら完璧です。ちなみに、このような転調の仕方(-1からの+2)は極めて珍しい形です。

メロディーとコード進行を探る

曲の大まかな全体像が把握できたら、続いて細部に目をやります。曲を支えるメロディーとハーモニーの理解です。キーが分かった上でメロディーとハーモニーを併せて特定していきます。この2つを、文字通り、ピアノやギターを使って1つ1つ音を探していく方法もありますが、コードとコード進行を覚えているととても便利です。プロアマ問わず、音楽に関わりのある方なら、特に覚えていて損はないと思います。むしろ、コードとコード進行は、実際の楽曲を演奏する際、アレンジする際に非常に役立つからです。

言わば、コード進行はコードのパズル・組み合わせに過ぎないため、そのパターンを予め理解しておくことが耳コピには欠かせません。先人たちの曲に共通して見られたいくつかの進行を後の時代の識者がいくつかのパターン・法則に分類し定義しましたが、必ずしもそのパターンにしなければならない理由はなく、そのパターンに則った音楽も、あえてパターンを外した音楽も、色々存在します。皆さんも「この感じ、どこかで聞いたことあるな」と思う曲が必ずあると思います。おそらく似たようなコード進行を用いた曲なのでしょう。自身が扱える楽器は様々だと思いますが、目の前にある楽器を実際に触る中で、各コードの響きを頭に入れておくと、音楽を聴く中でコードの分析がきちんとできるようになります。

「夜に駆ける」を例に取ると、キーがE♭ということもあり、A♭→B♭→Gm7→Cm7の繰り返しが目立ちます。こういった進行を理解すると、曲全体の流れも自ずと見えてくるようになるのです。

耳コピしている時の脳内

実際のところ、耳コピができる人は、ドレミの音やそれぞれの和音の響きをほぼ頭の中に記憶しています。どういった響きの和音だったかなという記憶が常に頭の中にあります。そして、音楽を聴いた時、脳内の記憶を辿り、瞬時のうちにその響きが保管されているメモリーを引っ張り出して照合を始めます。「この響きはAm7だ」「この進行だと次はDだな」と、脳内で検索エンジンをフル稼働させる作業、これが究極的には耳コピなんです。

というのも、曲を聴く前に予めドレミの音やコードを把握していなければ、実際に音楽を聴いてもその場で照合できません。当たり前と言えば当たり前でしょう。

曲をたくさん聴き、自ら演奏したり譜面を起こす中で、響きに対するセンサーが磨かれ、パターン学習も並行して進み、音への感覚が徐々に優れていくのです。そしてパターンを覚えていくことで、「次はこうくる」という響きの予測もできるようになってきます。

この作業を毎秒変化する曲の流れのなかでこなしていく、それが耳コピであり、耳コピという作業の実態だと思います。

私は3歳から母の影響でピアノを習っていましたが、今では母に感謝しています。音大を出た母は「譜面を見たら曲は弾ける」一方、耳コピはできません。

耳コピができるというのは、ある種の経験が齎した財産なのかもしれません。

マックのポテトを揚げる音も、ヨドバシカメラの歌も、列車が発車する時に駅のホームに流れるメロディーも、アニメの主題歌も、耳コピができれば「楽譜」は要りません。その場で「楽譜」を耳と頭で作ることができます。

自身の「耳」で音楽を創造する、それが耳コピではないでしょうか。

(終)

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#耳コピ #コード #コード進行 #YOASOBI #夜に駆ける





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