No.220 遠くまで

埃まみれの楽器ケース。
……中は時が止まっていた様に、
あの時のままだった。

高校最後の夏。

やけに涼しい会場で絶望し、
他を妬み、逃げる様に閉めた時のまま。

ケースから取り出し、ピストンに手を掛け
息を吹き込む。

目先の未来へ勢い任せに響かせていたあの時よりも、静かに熱くずっとずっと遠くまで。

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