氷柱2

大寒の水

昨日、1月21日の節気は「大寒」。一年の内で最も寒さが厳しくなることをいうのだが、翌日の今日は東京でもまとまった雪が降り、まさに今の時期を如実に表している1日だった。

当時の後の第3戌の日を「臘(ろう)」という。この日に汲む水の事を臘雪水(ろうせっすい)という。江戸時代の頃より、この水で茶を煮るのが一番良いとされている。また、衣服及び肌を清浄すれば、塵垢を除いてサラのような状態になるという。あるいは、これに物を浸せば、腐らず虫食いもできないという、なんだか民間療法のように怪しげな霊験あらたかな臘雪水。

陰暦12月を臘月という。今に直すと1月のこと。

この臘月に餅を漬けるという作法がある。新撞餅の米粉を取り去り、冷えるのを待って平らに切り、陶製の甕の中にたっぷりと臘水に漬けて収蔵しておき、新年を迎え2月になって、古い水を捨て、取っておいた臘雪水と取替ると、夏になっても漬けた餅は腐らないという。

暑月に煮て食べると、柔らかでおいしく、腹下しをよく治す、とある。

あるいは、臘雪水1斗、塩3升をかきまぜ、陶の甕に満たし、蔬菜(昔の野菜の言い方)・鳥魚等を浸す方法もある。もし、漬けたものが浮かんできてしまう場合はすのこで沈めたそうな。これも、2月になったら水を取り換える事。

にわかに信じがたいが、江戸時代にはこれを実践していた記録が残っている。

現代のように、テクノロジーや、時短などがプライオリティ第1位ではない昔は、その季節季節の物事を慈しみ、愛しみ、大切に紡いできた。自然と共存することはもちろん、自然に畏怖を抱き、敬愛した上で、自然の恵みをいただく。こうしたことが、記録となり、先人たちの知恵となり、現代のあたしたちに恩恵をもたらしてくれている。今、残っている文書、解読・考察していただいている本を読めば、このような記録や知恵を知ることができる。読めば思わず眉唾物と眉間に皺を刻んでしまうことも時々あるが、それでも思わず実践してみたくなる知識の宝庫なのだ。

あたしの住んでいるところは滅多に雪が降る地域ではないので「よっしゃー、今から実践するか!」ということはできないのだが、機会があるならぜひ、1度くらい試してみたい。

ただ、暑さを迎えた季節に水に漬けた餅を食べるには夏の怪談ばりに背筋がすこし緊張しそうだ。






もし、気に入っていただけたら心強いです。ますます変態的に調べ、研究しまくれるようになります。