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アイボリーうさぎのお母さん

シルバニアファミリーは通ってきましたか?

人によって、幼少期に通ってくるものは大きく違う。
私は残念ながらセーラームーンは通ってきてない。
おジャ魔女ドレミはしっかり通過。
カードキャプターさくらは
4巻ぐらいだけ読み、友達の家でクロウカードで占ってもらった程度。
しかしシルバニアファミリーという歴史ある古代文明に関しては
ルート66を端から端まで走り抜けた。

ちなみに
私の兄はミニ四駆を、私の弟はベイブレードという
いずれもアニメで主人公が「いっけえ〜!!」と叫ぶとおもちゃが加速する
二大過剰演出・玩具業界爆売れ狂喜アニメのおもちゃにハマっていた。
あんな誇張演出があったんだからイッテQやクレイジージャーニー、発掘あるある大辞典の納豆騒動とかはもうみんな許してほしい。あと、最近の金持ちの先祖の金庫を開けるやつとか、
絶対「そろそろ金庫ないやろ。これはやってんな〜」と思ってるけどみんなは許してほしい。

話は戻って、
シルバニアファミリーが大好きだった。
小学校1年生の時は、友達の家で遊ぶ=シルバニアファミリーで遊ぶことだった。

シルバニアファミリーという名前だが、
これはリカちゃんファミリーの様に一世帯のみをさす言葉ではなく、
またヘキサゴンファミリーの様な血が繋がっていない父ちゃん沖縄永住物語でもなく、
うさぎやイヌ、ネコやネズミなどの
いくつも種類の動物の、複数の家族で形成された世界のことを総じて「シルバニアファミリー」と呼ぶ。

シルバニアファミリーは今年で35周年であり、まだおもちゃ売り場にはシルバニアコーナーが必ずある。彼らは生き残ってきたのだ。
他の淘汰されていった人形あそびとの大きな違いは、
ドールハウスや家具のクオリティと、
飽きさせない動物たちのほのぼのとしたディテールである。

これはおもちゃ戦国時代の中戦ってきた、製作元のエポック社の工夫であった。
私はリカちゃん、メルちゃんなど人間の形をしたおもちゃが苦手だった。リアルな人間で遊ぶのが気持ち悪かった。
しかし、シルバニアのあの
ちょうどいい動物感、愛嬌のある顔、サイズ、顔と体のバランス、全て完璧だった。

家具や家屋に関しては本当に日本の重要文化財と言っても過言ではない。
エポック社は「ずっと遊んでもらえる様に、大事にしてもらえる様に
家具も安っぽくない物を作ろう。」ということで制作に取り掛かったらしい。
その為、当時の女の子の憧れであるヨーロッパ調のクセのない上品なデザインで作られたことも大きな魅力であるが
初期のお皿やトイレなどは陶器でできており、触っていても気持ちよかった。
トイレは流すと流し音が流れ、暖炉は電気をつけるとゆらゆら火がついた。
イス、机などのお気に入りの家具をパンやテーブルクロス、ティーセットなどを並べ
これまたおしゃれで洋風な家屋に並べるだけで
もうそこは自分が住みたい理想の家ができ上がり、
そこに自分を投影させた可愛いお気に入りの動物をすまわせる。
そう、システム的には
みんなが今熱狂している元祖どうぶつの森なのである。あつもりぃ!

ただ、家具にこだわりすぎたせいか、準備時間が他の遊びとは比べられないぐらい長かった。
本棚があれば、そこにさらに小さな本を並べる。
勉強机があれば、そこに本、ノート、鉛筆、それを立てるペンたて、
地球儀、お道具箱、ランドセル(ちゃんと人形が背負えるよ)、
リコーダーもリコーダー用の袋に入れてテーブルのサイドにかけた。
パン屋を使う時は棚にきれいにできたてのクロワッサンや食パンなどを所狭しと並べ、
小学校を作る時は全ての机を並べ、
黒板には黒板消しと3ミリくらいのチョークを置き
教卓に顕微鏡やアルコールランプを置き、
アルコールランプには取外せる蓋まであった。

友達の家で遊んでいる時、17時にか帰らないといけないのに
組み立てに16時50分までかかり、5分でチャチャット遊び、
残り5分で大急ぎで全て箱に仕舞って片付けをした。
細かい部分が多い、むしろ細かい部品しかなく紛失しがち玩具ランキング1位なので
いとこの家のシルバニアファミリーは
親が人形含め全部ボンドで固定していた。
トイストーリーという映画を見た時、この事を思い出し、二度と動けない彼等を思って胸が痛んだ。

友達によって持っているアイテム、おうちが違ったので
仲良い友達の、その友達の普段遊ばない子の家に行ったら見たことない新しいお家で遊べた。
その子が裕福な家庭で大きな家であれば、シルバニアファミリーも裕福で大きな家だった。
社会の縮図がそこにあった。
その子のことはあんまり好きじゃなくても、その家で遊ぶためだけに
なんとかおうちに上がらせてもらえるチャンスが巡ってこないかと思っていた。

家で一人で遊ぶのも楽しかった。
誰にも邪魔されずに好きな家具を置いて好きな動物を操れる。
私もお下がりも含めて10匹以上の動物をもっていた。うさきにもグレーうさぎやブラウンうさぎがいたが、
一番お気に入りは1番ポピュラーなアイボリーウサギの家族で、
ひとりでこの家族の都合いい物語を展開していた。
一番いい家に住まわし、一番いい家具をあてがい、
一番きれいな服を着せ、長女のアイボリーウサギのお姉ちゃんは学校で人気者だった。
ただ、一家族全てアイボリーウサギで揃えるほど持っておらず、
お父さんはシマリスであった。お母さんの遺伝子が強く出たか、連れ子だった。
また、他の家族は核家族だったり、片親で家族すべての種類が違い、
家もそんなにないので床にハンカチを置いてそこに質素なテーブルを置いた。
しかし誰もそんな些細なことは気にしないしいじめもない、
ニューヨークより多様性のある世界だった。

そんなことを飽きずに何百回も繰り返し遊んでいたので、
シルバニアの人形は薄ーく毛が生えているのだが
私のアイボリーウサギの家族は起毛が全て剥がれつるっぱげになり
全身地肌丸見え皮膚ウサギちゃんになっていった。

やがてポケモンブームがきてみんなで遊ぶ時はポケモンカードのレアなやつを自慢し
やがてシール交換ブームがきてシール手帳がタイルシールでパンパンになっても
私は一人で遊ぶときだけこっそりシルバニアファミリーで遊んでいた。

それから数年たち、自分がそんなシルバニアファミリーに熱中したことなんか
大人になってすっかり忘れていたが
社会人になって、大好きな根本宗子さんの舞台を観ていたときに、
とあるくだりで言い合いになり逆上した役が
「てめえのアイボリーウサギのお姉ちゃんをマッキーで真っ黒にしてやったよ!!」
と叫びながら真っ黒になったアイボリーウサギ握りしめるをシーンがあって、
私は雷に打たれたぐらい爆笑した。

アイボリーウサギの価値が私にはわかるから。
それは例えるなら
兄にとって「てめえのソニックセイバーの車体を真っ二つにへし折ってやったよ」
であり弟にとっての「てめえのベイブレードのシューターにガムをつっこんで二度とゴーシューできなくさせてやったよ!」と同義語なのである。
私は幼少時代にシルバニアファミリーにのめり込んだのは今日という日の伏線だったんじゃないかなと思うぐらい幸せな演劇体験であった。

去年、銀座であったシルバニアファミリー展にも行ってきた。
これまでのほぼ全ての家族、家具、家屋が歴史と共に展示されており、
旧友と同窓会をしている様な、本当に素晴らしい時間だった。
たくさんの家族の歴史が展示してあった。
私が愛したアイボリーうさぎファミリーは、もう2002年に廃番になっていて、
かわりにほぼ同じ色のくるみうさぎファミリーが登場していた。

また、実際に遊ぶときのように展開し、世界観を広げたコーナーもあった。
シルバニアファミリーの素晴らしいところは、家具をならべ、動物たちをならべると
自然と展示してある彼女たちの会話が
聞こえてくる様な感覚になれるところである。
私は幽霊は見えないし超感覚もないけど、シルバニアファミリーの声は聞こえる。

そして展示に行ってから気付いたのだが、
シルバニアファミリーの誕生が1985年3月20日、展示を見に行ったのも3月20日。
知らないうちに誕生日に立ち会わせてもらった。やはり運命を感じた。

完全に興奮して血管切れまくりのハイピエール瀧状態だった私は
ここでは2万円ほど散財してしまった。
ウエディングドレスとタキシードを着たうさぎカップルの人形を購入して玄関に飾ってみたがメンヘラやば女感が出過ぎてしまったので今は押し入れに入っている。

展示に満足し出ると目の前で文房具博覧会がやっていて、
そこで両家顔合わせの表紙になる紙を買った。

両家顔合わせしおりの後編を書こうとしたら
シルバニアファミリーの話になってしまった話。

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