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LayerXの第3の事業、Privacy Tech事業を始めます、という話

どうも。すべての経済活動を、デジタル化したい福島です。本日はLayerXの3番目の事業である「PrivacyTech事業」に関してです。

一昨日、本格始動とサービスの正式提供開始を発表しました。

複数のメディア様に取り上げていただいており、昨日の日経新聞朝刊でも、スタートアップ面のトップ記事として取り上げていただいております。

企業や産業をまたいだデータ共有をどうやるか

もはや懐かしさすら感じる投稿ですが、今のLayerXの事業は、元々祖業であるブロックチェーンコンサルの中で気づいた「お客様の真のニーズ」からプロダクト開発を始めた事業になっています。

実はPrivacyTechの事業は水面下でR&Dを続けていました。上記記事の冒頭より引用した図にある「3つめの真の課題」にアプローチするものが、PrivacyTech事業になります。
(画像中の “Labs” はPrivacyTech事業部の前身だった研究開発部門の名前です。)

LayerXはブロックチェーンの会社じゃありません、という話」より

> 3つ目は「エンタープライズブロックチェーンを使って企業間で情報を共有して非競争領域の業務を楽にできないのかな」とおっしゃるお客様です。この背景にある真のニーズは「どの会社でも同じようなことをやっているような非競争領域の業務。例えば金融機関における本人確認業務やアンチマネーロンダリング業務(以下KYC・AML)は業界間でデータとロジックを共有できれば業務のコストが大きく下がるのでやりたい。でもKYC・AMLのデータやロジックを競合に見せたくないし、預けたくない。情報管理規定上も共有できないんだよなあ」という悩みです。つまり「プライバシーや企業秘密が関わるような情報を安全に扱い、企業間で共有する技術」が真のニーズだったのです。

「LayerXはブロックチェーンの会社じゃありません、という話」より

企業や産業をまたいだデータシェアリングをすることで出せる価値というのは計り知れません。一方で、特にデータとしての価値が高いパーソナルデータの場合、プライバシー保護の観点や、法規制等のハードルにより、共有しにくいものになります。

そこを超えるには2つ主要なアプローチがあります。

①データが共有できるように適切に「同意」を取る。
②データそのものを加工し、個人情報ではない形(※)で提供する。
法的には、統計情報もしくは匿名加工情報)

今回、ピボットから数年の研究開発期間を経てPrivacyTech事業部が提供するものは、②のアプローチです。

技術的に非常に高いハードルがあるものの、プライバシー保護した上でデータのロスを抑えられる(①の場合、全員に同意が取れるわけではない)という点で優れています。

何を提供するのか?それによりどういった「価値」が生まれるのか?

「合成データ」や「差分プライバシー」という技術により、統計的特徴を失わない形で情報を加工します。ここでは合成データの例について少しだけ解説します。

合成データは、機械学習の分野における学習データを増やす手法としてよく用いられられる手法であり、統計的に特徴を失わないようにダミーのデータを生成する手法です。機械学習アルゴリズムの学習用のデータを増やし、精度を上げるために使われることが多いですが、近年では「プライバシー保護」の観点でも有用であると注目されています。

ダミーのデータと聞くと一見プライバシーの懸念はなさそうですが、単に「データを合成している」というだけでは、必ずしもプライバシーは保証されません。合成データを作るアルゴリズム次第では、出力された合成データから元のデータがリバースエンジニアリングされるようなリスクは残ってしまいます。

そのため、プライバシー保証のある適切なアルゴリズムを設計する必要があります。

ここでは詳細は触れませんが、上記のようなプライバシー保護技術について気になった方は下記のブログも読んでみてください。


LayerXのPrivacyTech事業部が提供するAnonifyは、企業が持つデータを投入すると、それに対して適切なプライバシー保護処理をしたデータを出すことで、企業間でのデータ共有をしやすくします。

企業の持つデータは宝の山である一方で、リスクの観点から他社に共有したり販売できないという課題があります。

Anonifyは「Data sharing as a Service」のようなイメージで、データビジネスを始めたい大企業のEnablerになりたいと考えています。そして、医療や金融、行政などの領域でデータ流通が進むことで、様々な社会課題の解決に貢献したいと思います。

3つの事業をやる意志をもつ

スタートアップが、3つの事業をやるというのはセオリーに反しているといわれます。

もちろん、それは百も承知です。しかし、多くの会社はIPO後、2つ目の事業を立ち上げられずに停滞していきます。マーケットサイズの上限が決まっている日本では、きちんと複数の事業を立ち上げきる「新規事業創出力」のある会社が継続的な成長を成し遂げています。

ソフトバンク、楽天、リクルート、サイバーエージェント、DeNA、GREE、メルカリといったいわゆるメガベンチャーは、次々と新規事業をたちあげ多角化に成功しています。

BtoBの新興企業でも、freee、マネーフォワード、ビジョナル、ラクスルなど、複数の事業の立ち上げに成功した会社がいま大きな評価をえています。

一度IPOを経験した経営者として感じることは、企業には「慣性の法則」が存在すると強く感じます。1つの事業がうまく行けば行くほど、(皮肉にも) そこから飛び地の新規事業を立ち上げるのが難しくなっていきます。

前述の偉大なる会社たちを研究していくと、1つの共通点が見えます。1つ目の事業が完全に成熟し切る前に、2つ目の事業を立ち上げているという点です。

その中で株主からの反対や経営陣の中での意見のぶつかり合いもあったことは想像に難くありません。

「なんでこのタイミングで?」「まずしっかりこの事業が成熟したあと新規事業を考えればよいのでは?」「1つの事業にリソースを集中させるべきでは?」etc

そんな中で、強い意志をもって複数事業を立ち上げに行く。この意志こそが、新規事業を創出しようとする会社の文化となり、「慣性の法則」を突破する力になっているのではないか。と私は考えます。

LayerXが目指したい会社は、先程あげたような偉大な会社です。

LayerXは意志を持って、3つ目の事業を立ち上げに行きます。そして4つ目、5つ目も、立ち上げていきます。LayerXはどんな時代でも、どんなに大きな既存事業を持っていても、自社でオーガニックに「新規事業を創出する」会社になりたい。そんな企業文化を作っていきたいと思っています。

最後に


PrivacyTech事業もついに採用を開始しました。

医療、金融、行政、小売、デジタルといった幅広い領域において、プライバシー保護とデータ活用の両立という難題に様々なテクノロジーを組み合わせながら挑戦する、そんな仲間を募集しています。

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