第19回Book Fair読書会@南町田~グランベリーではぐれたら~

はぐれたら、スヌーピーミュージアム...の隣にあるまちライブラリーへどうぞ!

2020年最初のBook Fairは、初の図書館開催!8名での読書会となりました。

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今回の舞台は『まちライブラリー@南町田グランベリーパーク』。以前Book Fairに参加してくださった、「きんじょの読書会」の主催者さんもこちらのスタッフです!

賑やかな郊外型ショッピングモールにあって、屈指の癒しスポット!待ち合わせ場所にも最適です。


第19回は、ひとことで言うと「お正月で溜めたパワー大放出!」回になりました。ユニークで読みごたえのありそうな本が続々登場します。お楽しみに!

◆ヒロさん(11)→大谷崇『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想 』星海社新書

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「令和1冊目に、いきなりネガティブな本を持ってきてしまいました~」と苦笑いのヒロさん。

〈鬱々としてきたせいでポジティブな歌詞の音楽が聴けなくなり、ネガティブな歌詞の音楽、歌詞のない音楽、歌詞が意味不明な音楽しか受け付けなくなった〉という著者あとがきに「ナイスコメント!!」と惹かれ、購入を決めたそうです。(←こう語るヒロさんの表情はとてもにこやかです)

この新書では、20世紀の悲観主義的な思想家(ペシミスト)・シオランについて解説しています。彼が残した言葉を見ると、〈怠惰は高貴な悪徳〉〈自己主張が弱いからこそ、他者に寛容になれる〉〈人生は辛い、虚しい〉と、常に相当な諦めムード。

しかし、そんなシオラン本人は、自殺などせずいきいき長生き。なんと晩年には、30も40も年下の愛人とイチャイチャしている。あれ?なんか楽しそう…。

実はここから、著者が見出す「ネガティブな言葉の裏にある、生き延びるための知恵」が明らかに。ポジティブな人、「生の哲学」を唱える人でも病んでしまう世の中で、なぜシオランは天寿を全うできたのか。ヒロさん曰く、この鮮やかな「ひっくり返し」に注目です。

◆あつしさん(初)→西村佳哲『自分の仕事をつくる』筑摩書房

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まちライブラリーの企画にも携わるあつしさんが、飛び入りで参加してくださいました!

そんなあつしさんの紹介本は、「働き方研究家」と自らを定義づける著者の、主にデザイナーへのインタビュー集です。パタゴニア社や柳宗理さんなど、ものづくりに関わる人々に仕事のスタンスを問いかけています。

あつしさんが一番好きなのは、「私達の生活は沢山の仕事に囲まれてできている。だから、雑な仕事を見つけると、自分が雑に扱われているような気分になる」というところ。例えば、カーボンボードの本棚の裏側に、色が付いていなかったら、「裏なんて誰も見ていないでしょ」という手抜きを感じ、テンションが下がってしまいますね。

逆に、まちライブラリー@南町田のテーブルは地元産の木材で丁寧に作られていて(引き出しに本が入っているサプライズも!)、世界が豊かになったように思えます。

※ただいま、若干のヨイショが入りました

豊かな世界を作る仕事(成果物、アウトプット)の根っこには、どんな土壌があるのか。働き方に悩んだ時、必ず読み返したくなる一冊になっています。

まちライブラリー@南町田グランベリーパークには、あつしさんが選書した本棚もあります。是非お越しください!

◆ニャンちゅうさん(14)→皐月コハル『さよならLetter』スターツ出版文庫

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Book Fairをきっかけに、小説をよくネットで買うようになったニャンちゅうさんが、ある日Amazonにオススメされたのがこちら。

元々ケータイ小説でのヒットから、2012年に出版された本です。「手紙」がテーマの恋愛小説ということで、横書きのスタイルが目を引きます

男子高校生のソウが、サッカー部の練習後に、下駄箱で手紙を見つけます。それは、「学校一かわいい」と言われる女子・ルウコからでした。文通を始めた2人は、やがて付き合うようになります。

ルウコは心臓に疾患を抱え、余命宣告を受けていました。「(死ぬまでに)やりたいことをやろう」と決めた彼女は、自分よりも明るい性格のソウと一緒にいたいと思い、手紙で気持ちを伝えたのでした。ソウと結婚し、子どもを1人産むまで、ルウコは生きることができました。

作者はあとがきで、

人の命には、必ずリミットがあります。命は、儚くて尊いものです。それは、誰でもわかっていることだと思います。ルウコとソウの人生を通して、毎日を大事に、後悔なく生きてほしいというメッセージをこめました。

と綴っています。

なんとなく生きてしまいがちだけれど、「いつか終わりが来る」という前提に立って考えてみる。ニャンちゅうさんはこの読書をきっかけに、改めて一日一日を大切にしようと感じたといいます。

私は、ニャンちゅうさんがパッと開いたページに〈幸福と絶望は紙一重〉と書かれていたのを発見し、「だよなあ…」と物思いに耽ってしまいました。

◆あやほさん(初)→青山美智子『鎌倉うずまき案内所』宝島社

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オンライン読書会を主催するあやほさんは、年代の違う6つの物語からなる連作短編集を紹介。主婦や中学生など、悩みを抱えた人々が『鎌倉うずまき案内所』に引き寄せられ、前に進むヒントをもらうファンタジーです。

2019年からの平成30年間を、6年ごとに遡っていくという構成が特徴的。また各編には、ある人物の名前が共通して登場します。「こんなところにつながりが!」と気付くと、逆からも読みたくなってしまうのだとか。

あやほさんは、元々『木曜日にはココアを』という作品で青山さんのことは知っていましたが、今作ではカリスマ書店員の新井見枝香さんが帯を書いており、興味を持ったそうです(「帯買い」!素晴らしい!)。そして読了後は、新井さんの〈困ったな。好きな人しかいない〉というコメントを「本当にその通りだな」と思えたそうです。

登場人物が魅力的で、また会いたくなる(再読したくなる)小説。あやほさんは、「好きな台詞」のページにたくさん付箋を貼っていました。Book Fair的には、前回の小川糸『ツバキ文具店』からの鎌倉つながり!古都の力は偉大ですね。

◆タイチさん(初)→葦原瑞穂『【新版】黎明 上巻』太陽出版

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続いては、前週に同じ場所で開催された『気ままに哲学対話』で知り合ったタイチさんです。書店では「精神世界」に分類されている、分厚くて文字もびっしりの本を紹介してくださいました。

この本は感覚的・抽象的に表現されがちなスピリチュアル系の話題を、論理的に解説している「教科書」です。よって、宗教に対して「嘘っぱちだ」「怖い」と思っている人こそ、読むと学びがあるといいます。特定の宗教が好きな人しか楽しめないのではなく、ある程度客観的に書かれた文章という点が、初心者にオススメだそうです。

マイ帯の言葉は〈これから新しい時代になり、人類はお金や争いではなく、別の方向に興味が変わっていく〉という、著者の主張が素になっています。決して裕福ではない中、自費出版で本書を出した著者の執念も感じられますね。

タイチさんの話にあった「宗教とは神様を信仰するだけでなく、神様に少しでも近付くため、精神的に向上していくためにある」は、いわゆる無宗教な私にとっても、胸にストンと落ちるものでした。

◆ようこさん(初)→似鳥鶏『100億人のヨリコさん』光文社文庫

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町田の本読みたちの憩いの場である『いちばんゆるい読書会』から、常連のようこさんが来てくださいました。

似鳥鶏さんの小説に登場するキャラクターや、台詞回しが好きと語るようこさん。「おかしなことを真面目に語り、読んでる人だけが笑ってる」、独特のテンションが面白いそうです。

ヨリコさんがどんどん増えていき、やがては世界の危機にまで発展していく、ドキドキの展開が待っています(ネタバレになるので言えませんが、その「増え方」も恐ろしい...)

表紙ではほのぼのとしてかわいいヨリコさんが、作中では血まみれに…?ホラーが好きな方にもおすすめです。

ちなみに、ようこさんが「直前までどちらを紹介するか迷った」というもう一冊の方は、有川浩さんの『旅猫リポート』でした。

◆こーせーさん→橋下徹『実行力』PHP新書

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それまで、「ある年齢に達したら選挙権が自然とくっついてきて、その権利で投票に行くのが民主主義」ととらえていたこーせーさんが、再考するきっかけとなったのがこの本だといいます。

歴史・民主主義・資本主義…これらは選挙に臨む上で基礎となるものですが、時間を取っての勉強は疎かにしがちです。

しかし、政策について学ばず、一時の感情に流されるまま投票していては、民意が反映された代表者を選べない、あるいは実行する準備ができていない政治が続いてしまいます。

反面教師となるのがイギリスのEU離脱です。2016年、国民投票で「離脱」という結論を出したものの、制度的な準備が不十分だったために、履行にはかなり時間がかかってしまいました。

一方、政治家として「大阪都構想」を掲げていた著者は、どんなグランドデザインを描き、実行に移そうとしていたか。そして、有権者である私たちは、民主主義とどのように向き合うべきか。突き詰めれば「どう生きたいか」の問題にもなりうるテーマに切れ込んでいるということで、深く考えさせられそうです。

◆ふっかー→又吉直樹『人間』毎日新聞出版

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この小説の個人的な見所は、作者自身の内面を投影した2人の男の語り合いです。

ひとりは、心に過去の傷を抱えた主人公・永山。もうひとりはお笑い芸人にして作家の影島です。

表現者として(やや)挫折していた永山は、メディアによく登場する影島に冷ややかな感情を抱いていましたが、ある日バーで遭遇。話しているうちに、思いがけず意気投合します。

その中でも、特に印象に残った言葉はこれです。

「記憶も叙述も一秒が一秒ではない。一秒のことを一秒では想像できない。一秒は一秒より遥かに大きい。その一秒を再現しようとしたら、莫大な労力がかかる」
「そんな一秒をこの瞬間も一秒で過ごしているということが、最も身近にある奇跡」(P.278)

当然のことかもしれませんが、見落としがちな事実です。だからこそ、その一秒を見逃したくない。不器用であっても、日々を大切に生きていきたいと思いました。

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参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました!!



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