なんでんかんでんの社長ってすごいな、とふと思った話

うめと散歩していて、電車の高架の下を通ったとき、頭上を爆音を立てながら電車が通り過ぎた。
そのときわたしの脳裏に去来したのはかのなんでんかんでんの社長その人の顔であった。

わたしの中の「社長カテゴリ」のトップはなんでんかんでんの社長である。ちなみに2位はホリエモン、3位はカルロス・ゴーン。
もっとつっこんで言うなら、「マネーの虎」出演時のなんでんかんでんの社長だ。タイ人風の容貌と、彼がつくりだすとんこつスープのようにややにごった白目。斜めにかまえながら少しすぼまった口元から放たれる厳しい言葉……すべてが今でなお鮮明に思いだせるのである。
マネーの虎が放送していたのは10年以上も前でしょう。それなのに、「社長」とくれば「なんでんかんでんの社長」なのである。これはすごい。

思わず「なんでんかんでんの社長ってすごいなぁ、絶対忘れへんもんなんでんかんでんの社長のこと」とつぶやくと、なんの脈略もない会話なのに、うめも「たしかに。なんでんかんでんの社長ってめっちゃなんでんかんでんの社長やんなぁ。」としみじみと言う。
ここがすごい。ふつう、なんの会話のつながりもなく、自分たちと関係の薄い人物の話題が出たとき、人は一瞬考える間が生まれる。その人の名前と、概要と自分との関係性などを瞬時に脳から引きずり出し、そして言葉を選んで発言に至るのである。

しかし、なんでんかんでんの社長はすごい。「なんでんかんでんの社長」と言われ、即座に脊髄反射並みのスピードであの社長の顔貌が思い出され、あの口調が脳内に流れる。会ったこともない、もちろん喋ったこともない、彼のラーメン店にも行ったことがないのに、彼とわたしたちとの記憶の距離感の近さといったら!
街ゆく同年代か、それよりちょっと上くらいの人をつかまえ、「なんでんかんでんの社長ってすごいですよね。」と訪ねて回りたい。きっと、「え、だれですか?それ」という人は100人に1人くらいしかいない。99人/100人はきっと脳裏に去来するなんでんかんでんの社長の顔が焼き付きつつ、「すみません、急いでるんで……」と足早にその場を立ち去るだろう。

でもここまで書いておいてなんでんかんでんの社長の名前を知らないことに気づいた。ぐぐると川原ひろし社長とおっしゃるそうだ。川原ひろし……しかしその言葉は無意味な気泡となってすぐに頭の中から消えてしまう。あまりに強い「なんでんかんでんの社長」というイメージが、個である川原ひろしを食い殺してしまう。わたしはいま手帳のうしろのメモページの『忘れないリスト』に川原ひろしと記入したが、3カ月後くらいに「誰だこれ」と思って消すであろうことは目に見えている。

とにかくそれくらいなんでんかんでんの社長はすごい。タイムリーに、とんこつラーメンの麺とスープのセットがあるので、とりあえず昨日買った肩ロースでチャーシューをしこんだ。

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