エゴン・シーレ ドローイング水彩画作品集

2年前になるのかな、
まだ夏の面影が残る、9月。

初めて二人で出掛けた神保町。
あの頃、神保町に行くたび立ち寄る古本屋があった。そのお店の毎回同じ棚に、エゴンシーレ の作品集が置かれていて、たくさんの本に挟まれているその作品集の背表紙を眺めるのがとても好きだった。毎回来て眺めるだけという行為にお店の人に申し訳なさもあったが、いつかは私の家に置かれることになるという謎の自信や、そこそこ分厚い本だから持って帰るの少し大変そうだななんて考えながら、買うタイミングを見失いかけていた。
ネットで探せばいくらでも同じ本は見つけられたが、あの場所にいたあの本が良かった。

その日も彼を連れて作品集を眺めにお店に入った。
そして数週間後、その本が私の家に置かれることになった。彼が誕生日プレゼントで買ってくれていたのだった。机に置かれているのを見つけた瞬間、そして絶対に私が喜ぶだろうと思っている彼の少し緩んだ頬がとても愛おしかった。完全に視界が渋滞していた。

エゴンシーレが、私の一番好きな画家になった。そして今新しい家で、自分の好きな作品集に挟まれる背表紙を眺めるのもあのお店に置かれていた時と同じぐらい美しい。

そういえばあの日以来一度も神保町に行っていないな。

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