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赤ちゃんの首(ひなてこ)


不妊治療によって念願の赤ちゃんを授かり、帝王切開でズバンと出てきたのが昨年の11月。私は母になった。外は寒いし生まれたての赤ちゃんを連れ出す理由もなく、静かに家の中で春を待つうちに世の中が大変なことになったので、行きがかり上外出自粛も5ヶ月目といったところ。とは言え赤ちゃんは小さくてまだおっぱいとねんねの繰り返しだし、外出できないことへのストレス自体はさほどない。あったかくなったら子育て支援センターへ行ってママ友を作るんだい、と意気込んでいたのでその機会もなくじっとしているのは寂しいけど、大阪へ移り住んでから4年経つのにママ友どころか普通の友達すらゼロ人なので支援センターに行けても状況は同じだったのかもしれない。そう私は友達作りが下手な人。よろしくお願いします。

さて、うちの赤ちゃんは大きい。生まれた時から大きめだった。
とりあげてくれた先生から助産師さんへと手渡されるときも「大きい」「大きい!」という声が行き交っていた。ボディビルダーの掛け声?毎月の予防接種でも必ず先生に「おっきいね〜」とニコニコされてしまう。ねぇ、ボディビルダーなの?確かに待合室を見渡せば、おすわりが出来始めているような2〜3ヶ月上の赤ちゃんと同じくらいの大きさだったりして、赤ちゃん同士を比べることになんの意味もないと知りながらもつい見比べてしまう。首が据わっていない赤ちゃんは全体重を無防備に親に預けてくるためとても重い。意識のない人を運ぶのがめちゃくちゃ重いのと一緒だ。学生時代、酔っ払って眠りこけてしまった友人を台車に乗せて一番近くに住む子の家に運んだ時、150cmくらいの小柄な子にも関わらずあまりにも重すぎて疲労困憊し、「人を殺したあと死体をバラバラにする意味がわかるね」と頷き合った夜を思い出す。ああ、首さえ据わってくれたら。縦抱きできるようになれば、この腕と背中と腰の痛みがマシになるんじゃない!?毎日首よ据わってくれと祈る私の気持ちに反して、4ヶ月経っても赤ちゃんの首はいつまでもグニャグニャだった。

健診の時に「この子体が大きい割にぜんぜん首が据わらないんですが……」と相談すると、「体が大きい”から”でしょう。重たくてうまく動かせないんだよね。そういう子は寝返りもゆっくりだよ」と言われてびっくりした。体が大きいせいだったのか。図体がでかくて動きは愚鈍って、そんなのもう巨人じゃん……?そう思った途端、なぜかガリバー旅行記の小人の国のイメージが降ってきた。仰向けに転がって眠る赤ちゃんの周りに杭を打ち、ロープをかける小人たち。目覚める赤ちゃん!突然バタバタと動かされる手足に小人たちは大混乱!そんな妄想が広がってあわてて赤ちゃんの隣に横になり、めいいっぱい布団にめり込んで低い目線から赤ちゃんを見上げてみる。夕日に照らされて金色に光る頬の産毛。瞬間、ああ、私はこの赤ちゃんが大好きだなぁと思う。まだ話したこともない人のことが好きなんて不思議な気分だけど、どうにもこの小さな巨人が好きだ。いったいどんな性格なんだろう?全然抱っこ抱っこって感じじゃないから、今のところ結構さっぱりした人だと思う。どんなものが好きなのかな。お母さんと仲良くしてくれるかな。

こういったしんみりとあたたかい気持ちは、たいてい赤ちゃんがブンブン振り回す無軌道な拳に顔面を殴られるなどして強制終了される。もう新生児の頃のことをうっすら忘れかけているように、今日の赤ちゃんがどんな風だったかもすぐに忘れてしまうんだろう。せっかくこうしてZINEに参加しているので、毎週赤ちゃんの記録を書いていきたいと思う。

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Author:ひなてこ
タツノオトシゴが好き。赤ちゃんが起きてる時は早く寝ないかなと思うのに、寝たら寝たで寂しいなと思い、起きたらあ〜あ起きちゃったと思う。
Twitter @Hinatic
ブログ「海を走る氷の馬」https://www.hinatic.club/

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