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深島にゃんこの事情

深島には「島猫」なる島で可愛がられている地域ねこが約80匹います。

深島のねこたちは、昔からずっと、島の人にごはんをもらってくらしています。

全頭不妊手術済。
一代限りの命です。

さて、今回は、島だからこそ、
だけどどこでも起こりうるであろう、葛藤や悲しさを書きたいと思います。

不妊手術をする前の2019年1月。たくさんの猫たちが風邪を引きました。鼻水がでている猫がおおく、あわてて栄養のあるごはん(パウチ)をあげたりSNSにヘルプを求めたり。どうぶつ病院の先生も相談に乗ってくださいました。
その、みなさんのおかげで、数週間経つとほとんどのねこたちの風邪が治りました。

そして3月。

わたしがとても可愛がっていた「くまお」というねこが突然姿を消しました。
それをきっかけに、明らかにねこが減っていることに気がつきます。
その後もねこは減り続け、なかには道端で息絶えている子も。島のおじちゃんやばあちゃんたちも、それぞれが可愛がっていたねこがいなくなってしまった、としばらく探したりもしていました。
その状況を見るに耐えず、様々なところへ相談しまくり、なんとかつてを頼りに大学の先生にみてもらった結果、細菌性感染症とウイルス性感染症がみとめられ、肺炎などを引き起こしていた、ということでした。(詳しいことは素人のためわかりませんが、獣医さんもなるほどな結果だったので、珍しいことではないのかな?と。。)

実はこの大量死以前から、子ねこの死や若い猫の死が目立つようにはなっていて、島だからこその血縁の関係や先天性のなにかがあるのかもしれない、と思っていました。

実際に、2018年に県内の方が通院にと連れて帰ってくださった深島のねこさんは、見た目よりも内蔵が未発達だった、とのことで、きっとまだそんなねこさんがいるんだろうなぁと思っています。
(そのねこさんは、連れて帰ってくれた方がおうちでかわいがってくださっています。本当に感謝です。)

そして、2019年の3月に死んでしまったねこたちは、きっと、どこか弱いところを抱えていたんだろう、と思いました。島のねこなりの、強い遺伝子を残す、と言うことなのかもしれないとさえ思います。
血縁をみれば、たぶんこの子たちは生きられないだろう、というのは正直すぐにわかります。強い子からうまれた子は強いです。だけど、4匹うまれたらそのうち一匹は弱かったりもします。母猫はそんな子猫はさいごまで面倒を見なかったりもします。
大きくなっても、弱い子は弱く、ずっと鼻水がでていたり、くしゃみをしたり、痩せていて大きくなれなかったり。そんな子たちは長くても3年くらいの生涯です。


悲しいけど、これが島のねこたちの現実です。
島にずっと住んでいると、こねこがうまれて、その中の1匹が育てば良い方、というよくわからない感覚になってしまいます。3歳くらいで死んでしまうねこたちに対しても、仕方ないね、くらいにしか気にとめません。
かならずしも、すべての島の人がそうだとか、みんながそうというわけではありません。でも、どうしてもそうなってしまうのもわかります。
考えていたら、身も心ももちません。あえて深く考えないようにしてるような印象です。

でもやっぱり、いなくなるのは悲しい。
悲しいし寂しいし辛いしなんとかして止めたい。
これまでねこがたくさん生まれてたくさん死んできた島で、それをとめるのは不妊手術しかないと思っています。

だから、島の猫たちには、せめて、手術だけはしてあげてほしい。

エイズキャリアがいたら、交尾などで感染してしまいます。
メスねこは妊娠、出産のたびに自分の体力や健康が失われ、子宮の病気にもなってしまいます。若くて小柄なねこにとっては出産のリスクは高いです。さらに、島の環境ではうまれた子ねこ全頭が生き残るのはかなり困難です。

そういったことだけを鑑みても、手術だけは、してほしいと思っています。

ただ、
こねこがいなくなるのはさみしい、
手術をするのはかわいそう、
というきもちもすごくわかります。
わたしも葛藤しながら、考えに考えて考え抜いた結果の不妊手術でした。

きみたちの本能をうばってごめんね、
人間の勝手で決めてしまってごめんね、
こわいおもいをさせてごめんね、
今でもやっぱり思うこともあります。

でも、それを一緒に乗り越えてくれたねこたちに感謝をしているし、乗り越えたからこそ、わたしと深島のねこたちは、もっと他のねこたちのためになにか伝えるべきなのでは、と考えています。
がんばったねこたちへの恩返し、
これまで島に生きたねこたちに恥じぬよう、
みんながここで生きたことを無駄にしたくないから、
少しずつ、少しずつ、がんばります。


深島の場合、どうぶつ基金さんの出張手術をお願いしましたが、ワクチン(3種)もしてくださいました。レボリューション(のみ、ダニ、回虫駆除)もです。手術費用などはかかりません。
※必要備品の購入代金は発生します。これが結構な額にはなってしまうのですが💦

本来ならば、えさをあげているねこたちに、手術をして、糞尿のお掃除をして、病気などの対応をして、ワクチンをして、きちんと管理されている猫を「地域ねこ」と呼び、島猫もそうある方が良いのだと思っています。

深島では、その体制が整いつつあり、まだまだ試行錯誤とどう進めていくかを考えながらではありますが、以前より格段に環境が良くなったと思います。
それでもやはり葛藤があるのです。

目の前で弱ってしまうねこ、
知らない間にいなくなってしまうねこ、
風邪で目やにやくしゃみがひどいねこ、
本来ならば、病院に連れて行って、診察してもらって、お薬を出してもらって、投薬して、が当たり前です。
そして、ほんとうはわたしだってそうしたい。

でも、これまで「ありのまま」を受け入れてきた島の人たちは、そこまでしなくても、という意識がどうしてもあって、そこにわたしが時間を使うことをよく思わない人もいるのです。
また、動物病院までは船で出なければならず、電話をしても予約がとれなければいけないし、夕方の船までに帰ってこないといけないし、市内で理解のある獣医さんもおらず、かなりハードルが高いのです。
さらに、うちには小さい子が3人いて、わたしがねこのために動く、というのをどこまで優先すべきか、とも考えます。島に住んでいるのはねこたちだけではなくて、私たち家族やじじばばもいて、わたしがいちばん気にかけないといけないのは家族です。


島の中では比較的自由に動けて、ねこたちへの対応もある程度細やかにできるものの、それが島の外にでるとなると、ほんとうに肩身の狭い思いをしながら、になります。
(ここを島外の方にお願いできるようになると違うんだろうなぁと思っています。)


もちろん、投薬はしています。島でできる限りのことはしています。
みなさんからのフードの支援でかなりふくふく健康的なねこたちも増えました。

ただ、まだまだ、今後少しでも幸せに暮らせるねこさんを増やすためには、試行錯誤と挑戦が必要だな、と感じています。
本当はねこたちに関わる、お世話することも、保護することも、ボランティアでは限界があります。だから、私が目指すのはボランティアではない、持続的な活動です。

深島のねこさんたちは手術をして、ごはんをもらって、日本の離島に暮らすねこさんの中でも恵まれている方かもしれません。
もし、離島のねこさんに関わる機会のある方がいたら、手術はどうかしてあげてほしい。ただご飯をもらうだけが幸せじゃないこと、知ってほしいです。

深島のねこさんとわたしたちがもっともっとTNRやそとねこさんのことを広めていけるように頑張ります^^


安部あづみ

深島での活動にサポートいただけるとうれしいです!ねこたちのこと(ごはんや治療など)、島の環境整備(ベンチの設置や清掃活動)に使わせていただきます🙏