リジェネラティブって?-環境を再生する畑#1
北海道もいよいよ35度の日が出てきました。でも夜はクーラー要らずです。
2024年は「リジェネラティブ」ってよく聞くようになったので、身近な北海道の体験を交えて考えてみました。
〈環境再生型農業〉とは?
環境、再生型、農業。……覚えられない時は語源をみよう。と思ったけどオンライン辞典だと定義までは見つからないので、FAO(国連食料農業機関)の個人農家向けプラットフォームを参照。
re + generative (再・生産できる)農業。なるほど。
いや、何を再生産するの?
作物を育てることかと思ったら違った。作物を育てるのと同時に「土とその元となる自然環境まで再生すること」でした。
土って微生物や虫や植物の居場所。水や空気や気候とも切り離せない。土を元気にしておきたければ自然環境全体の話になるよ、ということですね。
土を再生するとは?
日頃接している農家さんたちが、「いい土」「地力(ちりょく)がある」っていうときの条件は、成分バランスと、イイ感じに空気や水が動ける状態(団粒構造)で、さらに詳しく微生物の働きぶりを観察している農家さんも)。
土って岩石や虫や微生物(とその餌になる全てのもの)がつくったものだけど、人間も「速く効率よく産業化!」というわけで笹っぱらを耕したり沼を排水したり土や肥料を移動させたり、知恵を絞って開拓した。
そのおかげで北海道のおいしい食物があります。
でもこれ、いつまでも続けられるのでしょうか。
どの方法が長続きか考えてみる
こうした現代農業の方法にはメリットもあるがリスクもあります。
1. 輸入肥料の高騰と不安
高騰と円安のダブルパンチ状態。これからも手に入るかは不明。なんでもいつでも買える時代じゃないことは、コロナ禍で感じましたよね。
2. 農業人口の減少
よく聞くのはこんなお話です。
農家Aさん「子供が就職したし、自分の代でやめようかな」
ご近所の農家Bさん「そうですか……。畑はどうするの?」
Aさん「農協に相談してるんだけど。Bさんやりませんか?」
Bさん「そうですねえ……」(うちも人手足りないけど、頑張れるかな〜)
やめた方の分まで、周りの方が担っているから、あまり気づかれないんですね。国は農地をまとめて大規模運営しようと言うけれど、すべてはカバーできそうにない。
3. 土の回復力を損なう
栄養素の偏りを解消するため、外から養分(肥料)を持ち込むのは、即効性があるけれど対症療法のようなもの。重機を入れることで土が硬くなる、硬くなったら深く耕すので深さを棲み分ける土壌菌の層が撹乱される。有機物を入れると土中環境の回復力が落ち、ますます人が手を貸さないといけない。堂々巡りです。
農林水産省も2023年みどりの食料戦略システムで、環境保全、農業経営、後継者不足など種々説明。その上で「化学肥料の低減、低リスク農薬への転換、ネオニコチノイド系農薬不使用」などを提言しています。昔は少数派だった考え方を、国がお勧めしている。時代は変わったね〜。
今からできることはまだある、作る人も食べる人も。
土と環境を再生する方法って?
というわけで、冒頭に紹介した「リジェネラティブ農業」が注目されています。おさらいすると「生産を確保しながら、土とその先にある自然環境を再生する農業」です。
人間より土づくりが得意な微生物や生き物たちの力は、いうまでもなく自然全体につながっています。そういう一連のつながりを「生態系サービス」と呼びます。人間は生態系サービスが働きやすい環境を整える。それには色々な方法があるようです。
「有機」と比べて違いを知る
ところで、ちょっとだけ寄り道。
有機農業、無農薬……いろいろあるけど違いは?という方、いませんか。
私もです。改めて有機JAS農産物の定義を見てみました。
表示にも規制が有機JAS制度では、「有機」という表示はJAS認証を受けたものだけが表示できます。(余談の余談ですが、これは記事を書く時も同じで、以前はけっこう色々な呼び方が通っていたけれど、今は認証を受けた場合だけ「有機農産物」「オーガニック」と書いています。)
これに対してリジェネラティブ農業は、栽培や収穫を続けても自然環境を損なわない「状態」を目指しています。有機とも似ているけど、手段でなく目的を指しているところが新しく注目されているんですね。だからアプローチが色々あるんですね。