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花留多唄【お】鬼百合

 目の覚めるような鮮やかな橙色に黒い斑点という、なんとも印象的な百合です。
 聖書に出てくる白百合とはまた違い、毒々しいまでの鮮やかな色合いです。

 祖父母の庭に鬼百合がありました。庭木の手前にすっと立ちはだかるように咲くのです。

 キノコも虫もけばけばしい色のものほど毒性が強いイメージのせいでしょうか、なんだか触れたら恐ろしいことが起こるのではないかとびくびくしたものです。
 鬼百合がまるで鬼瓦のように「この庭の草花を手折ることは許さん」と守っているようでした。

 鬼百合の花言葉には『嫌悪』『荘厳』といったものがあります。その鮮烈な色合いゆえに何故か触れてはいけない存在ではないかと思った私には納得の花言葉です。

 けれど、その一方で『愉快』『華麗』『陽気』という花言葉もあります。確かにあの橙色は南国のようでそんな花言葉も似合いますね。

 確かに恐ろしかった鬼百合。けれど触れるのが怖いということは、どこかで触れてみたかったという気持ちがあったのでしょう。知らず知らずに魅せられて、でも気圧されたのですね。

 『純潔』という花言葉も持つ鬼百合は、その色で自分に触れようとする者から純潔を守っているのかもしれません。

文字札:おそろしげで美しい


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