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花留多唄【か】カスミソウ

 カスミソウはその名の通り、花束に加わるだけで霞のごとく全体的にほわっと広がりを生み出すものです。

 以前、自分の短編小説にカスミソウのような女性という設定の人物を登場させたことがありました。
 普段はそばにいることが自然すぎてわからないけれど、いざ失ったときにその存在の大きさがまざまざわかるような女性。それが私にとってカスミソウそのもののイメージでもあります。

 カスミソウだけで主役になることはあまりないように思われます。大体の場面において縁の下の力持ちというか、文字通り『華を添える』のです。
 まるで漫画などで背景にキラキラしたトーンが張られるように、主役の花の周りに美しい空間が額縁のように生まれる。

 そんなカスミソウの花言葉は『感謝』『淡い心』『深い思いやり』『ありがとう』『清らかな恋』など、ひっそりとそばに佇んでいるイメージのものが多いなと思います。

 ところで、以前エッセイの中で『霞立つ』という季語を取り上げたことがありました。
 いつもはなんとも思わない普通の山も、霞がかっているだけで霊峰のように見えてしまうから不思議です。
 山に霞がたなびいているだけで、なんだか天上の神様が霞を伝って地上に遊びにきてしまいそうだと想像力がかきたてられます。それも、霞のもたらす神秘性ゆえ。
 カスミソウの『魅力』という花言葉は、そんな霞のように他の花々を更に魅力的に見せるヴェールで包んでしまうからでしょうか。

 いいえ、カスミソウそのものも魅力的だと思うのです。だって、カスミソウがなくなったときの花束の寂しいこと。白い粉雪のようでもあり、水面に煌く光のようでもある花は、自身の花言葉の通り魅力的ですね。

文字札:隠れた魅力の持ち主

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