【レビュー】『スーパーロボット大戦30』進化を続ける鋼の協奏曲は新たな境地へ
バンダイナムコエンターテインメントより発売のスーパーロボット大戦シリーズ、記念すべき30周年作品。
同シリーズをよく知らない方向けに説明すると、スーパーロボット大戦シリーズは「機動戦士ガンダムシリーズ」や「マジンガーZ」、「ゲッターロボ」などの往年のロボットアニメから、「新幹線変形ロボ シンカリオン」や「SSSS.GRIDMAN」といった最近のロボットアニメ、はては「宇宙戦艦ヤマト」のようなロボットの登場しない作品まで様々な作品が夢の共演をするシミュレーションRPG。
特に近年の作品は難易度的にもシステム的にも初心者に優しい作りであり、本作もその例に漏れず「シミュレーションってなんか難しそう・・・」という人でも手軽に手を出せる、いわゆる「キャラゲー」です。
ちなみに本作はNintendoSwitch、PlayStation4、Steamに対応していますが、Switch版は所有してるmp3ファイルをBGMとして置き換えるエディットBGM機能に対応していない為、個人的には非推奨。
一応Switch版でも「プレミアムサウンド&データパック」を別途購入することで曲を追加することは可能です。
ただし、4,000円超と中々の金額なうえ、特にコードギアスシリーズはTV版が参戦していない都合上戦闘向き楽曲が採用されていないことや、DLC追加キャラ用の楽曲を含んでいないはっきり言ってガッカリ仕様。
(決して特定のハードを持ち上げたり、貶す意図はありませんよ!)
寝転びながら遊べるのはシミュレーションゲームと好相性なので勿体無い部分ですね。
システム面の各種変更について
本作は従来のスパロボシリーズからシステム面において様々な変更が加えられています。主に二点に分けてレビューしていきます。
「タクティカル・エリア・セレクト」
本作最大の特徴とも言っていい新システム「タクティカル・エリア・セレクト」。
簡単に言えばある程度自由に攻略するステージを選択して進めていけるシステムです。
メインシナリオ進行に必須の「キーミッション」がいくつか指定されており、これ以外のミッションはスルーしてしまう事も可能。
これにより時間がかかりがちなスパロボを比較的短時間でも楽しめるようになったり、好きな作品のミッションを優先的に進めることが出来る様になりました。
特に本作は未だかつてない大ボリュームとなっていますので、取捨選択ができるようになっているのはライトゲーマーにもうれしいですね。
勿論メリットがあればデメリットもあり、ミッション毎に分割された結果としてシナリオ上前後の繋がりが希薄になってしまったのが痛いところ。
何故今戦っているのかがわかりにくく、全体的な筋が見えにくくなってしまいました。
従来のシリーズと比べ一長一短ではありますが、まあこれはこれで面白かったなとは思います。
正直今後ずっとこのシステムでやります、となるのは勘弁願いたいのですが、時々ならアリですね。
UIの改修について
発売当初、UI周りについては酷評が集まってました。
大胆な変更が多かったので戸惑ったのかもしれませんが、ハッキリ言って慣れの問題です。
WindowsとかiOSがバージョンアップする度に文句を言われるアレと一緒ですので、気にする必要は一切ないと断言します。
戦闘演出オンオフがワンボタンで切り替えられたり、マップ上で残HPが一目瞭然になったり、戦闘演出中もバーが円形になったことでコンパクトになりダイナミックなアニメーションをより楽しめるようになるなど、細かいところに手が加えられていて非常に遊びやすくなりました。
ひっそりと追加された新要素、HPなどの表示を完全に隠すUIオフモードなら戦闘アニメを最大限楽しめます。
頻繁に変更するとなると設定が少し面倒なので、これがワンボタンツーボタン程度で手軽に切り替えられるようになると尚良かったのですが、ここは次回作以降に期待でしょうか。
ほとんどの改修がプレイフィールの向上につながってる中で、唯一気になったのはワールドマップ関連。
まず操作性が悪く、直感的に意図した場所をポイント出来ません。
次に強化パーツを得たり出来るいわゆる遺産ミッションの仕様。
こちらはミッションリストには表示されず、必ずワールドマップ上から探さなきゃいけない仕様となっています。
これは寺田プロデューサー曰く、リストにこれを並べちゃうとやらなきゃいけない感が強くストーリーメインで追いたい人にとって邪魔になる、との判断だそうで、私も一理あるとは思います。
ただ、前述の操作性の悪さに加え、お題が特殊な遺産ミッションは戦力値が難易度予測の当てにならないせいで、一回ミッションをスタートしないとクリア出来そうか判断がつかないなど問題が多く、 遺産ミッションだけでいいから推奨レベルを付けるなど改良が必要だと感じました。
さらにミッションクリア後、マップ上にいくつかビックリマークが出現し、選択するとポイント等が入るミニイベントもいまひとつ。
この恩恵を余さず受けたいならミッションクリア毎に全マップを確認して回る必要があり、正直面倒極まりないのですが、ゲーマーなら面倒に思いつつもやってしまうのが性というもの。
これ多分ユーザーが毎回探し回るのは想定してないと思うんです。
見つけたらちょっとラッキーくらいの要素だとしても、何度も戦える戦線ミッションの解禁が少し遅いこともあって、少なくともそこまではゲーマーなら全部回収しようとするでしょう。
それなら過去作のサブオーダーシステムを継続するなり、いっそ失くしてしまったほうがよかったんじゃないかなと。
かなり改善されつつある戦闘アニメ
スパロボシリーズは、かつてPSPを主戦場としたためにHD機への移行が遅れ、初のHD機で発売された第三次Zで戦闘アニメが悲惨なクオリティとなってしまった歴史があり、そこに追い打ちをかけるように開発期間が短縮され、アニメーションのクオリティに暗い影を落とし続けていたのはファンの方には言うまでもないことでしょう。
今回は以前問題になった極端に武装が少なかったり、最低限出なきゃいけないレベルのキャラが参戦していないケースも無く、戦闘アニメ関連のがっかり感は感じなかったので一安心でした。
予算と期間が限られている以上、「主役のアニメがリッチになる=脇役が割を食う」なので、この辺のバランスが破綻するとXみたいな「脇役はみんな武器二つ」とか、第三次Zみたいに「アスラン(召喚武器)」みたいなことが起こるわけですが、開発期間が二年になってるとはいえ、このあたりのバランスは最近の作品としてはかなりうまくいっている印象です。
ライノスやヌーベルディザードなどの脇役機、実は大して動いてないのに全くそう感じさせない、上手な手抜きがされていて熟練の技を感じます。
またGジェネのような3Dモデルを使ったと思われるアニメーションが、今までごく一部のシーンのみだったものを各機体に本格的に導入し始めたことも好印象ですね。
大半が手書きだった今までがおかしいんですが、これで作画における労力は改善されると良いなぁと。
その分なのか、カットインのクオリティもかなり上がってました。
充実してる、と言い切れないクロスオーバー
様々な作品が共演してるスパロボですから、当然様々なクロスオーバーが作中で行われています。
しかし本作では前述のタクティカル・エリア・セレクトが採用されたことによる弊害なのか、全体的にクロスオーバーや演出の面で物足りなさを感じるケースが多かった印象です。
エーストークに無難なものが多すぎる
パイロットの総撃墜数が60機に達するとエースボーナスというキャラ固有の特殊能力が解放されるなど様々な恩恵がある他、エーストークと呼ばれる会話を見ることができます。
各キャラの本編では触れにくいパーソナリティや、関連作品へ間接的に言及するファンサービスなどなかなか好評を博していたように思います。
しかし、本作では過去作と比べ明らかに内容が薄くなってしまっています。
過去作ではエーストークは主人公の相棒ポジのキャラが担当してて、男女どっちの主人公を選ぼうが内容が全く一緒だったんですが、今回主人公が担当した為に男女差分が必要となったわけです。
その手間を減らす為にどっちの主人公でも通用する無難な内容が増えてしまい、面白さが失われてしまった、というのが原因なのではないかな?と推測しています。
今作実質ミツバ艦長が主役みたいなとこあるので別に主人公が担当しても良いのですが、別に艦のクルーで良かったところをわざわざ主人公にやらせたんですから、差分作りに労力かけてでもユーモアある内容にして欲しかったですね。
近年あまり活用されなくなってしまったDVE
こちらは本作独自、というより最近の作品で継続的に起こっている問題。
DVEとは戦闘以外のイベントでキャラクターがボイス付きでセリフをしゃべること。
これが非常に少ない。
いや、最低限抑えなきゃいけないところは抑えているようには思いますが、ここDVE欲しかったな、と思うシーンがちょくちょくあって残念でした。
近年ずっと据え置き機向けのスパロボでは減少傾向だったので、もともとあまり期待してはいませんでしたが、せっかくの記念作品だったので多少リッチに喋ってくれても良かったんじゃないの?とは思います。
DLCについて
本作ではスパロボOE以来だったかと思いますが、久しぶりに参戦作品を新たに追加するDLCが登場しました。
私自身はDLC2を購入しておらず、DLC1とエキスパンションパスのみ購入してますので、そのうえでの評価という点にはご留意ください。
衝撃の追加参戦作品、内容も文句なし
DLC追加参戦作品を簡単にまとめると以下の通り。
超電磁マシーン ボルテスV
サクラ大戦シリーズ
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
ULTRAMAN
装甲騎兵ボトムズ
超獣機神ダンクーガ
劇場版 マジェスティックプリンス
ゲッターロボデヴォリューション
劇場版 新幹線変形ロボ シンカリオン
その他スパロボOGシリーズ
ご覧のようにラインナップは非常に豪華で、特に競合他社版権であるサクラ大戦やシンカリオンの参戦が実現したことには大変驚きました。
本格的に本編に絡むわけではありませんが、会話シーンが追加されていたりしてクロスオーバーもしっかりやってくれており、内容については文句ないクオリティだったと思います。
ただ、正直値段が高過ぎる
権利関係、楽曲などの費用が諸々載っかってくるのである程度は仕方ない部分もありますが、DLC1と2がそれぞれ2200円(税込)、エキスパンションパスは4400円(税込)と追加参戦作品を揃えようとするだけで本体がもう一本買えてしまうのはやり過ぎ感があります。
これに加え、前述のプレミアムサウンド&データパックやボーナスミッションなども含めると定価で2万超という恐ろしい数字に・・・
全盛期ハーフミリオン売れていたシリーズですが、随分ユーザー総数も減ってしまったようですし、限られたユーザーからしっかり集金しないと商売が成り立たないのはわかりますが、結局それはユーザーを減らすことに繋がるわけで、なんとも苦しいところ。
主にアニメーションが流用できるOGシリーズの一部キャラ追加や、難易度追加などをある程度無料アプデで対応してくれているのはありがたいんですけどね。
不具合・バグについて
触れないのもおかしいので言及しますが、Twitterでトレンド入りも果たした悪名高いレッドファイブ消失バグを筆頭に、本作は不具合が多数発生しており、一度は被害を受けた方も多かったのではないでしょうか。
ほかにもV2アサルトバスターの股間パーツが描写されてない作画ミスや、一部の敵がマップ兵器を使用すると確定でクラッシュするバグ、まだ加入していないキャラが会話に出てきてしまうミスなどは特に目立っていましたね。
幸い全DLCが出たころには主だったものは修正され、今遊ぶ上で問題はありません。
webラジオのうますぎWAVE内で寺田プロデューサーからの謝罪や現状報告なども行ってくれていたので対応には誠意を感じましたが、そもそもそんな致命的なバグがある状態で出すな、というのが当然の意見かなと思います。
要点まとめ
良い点
システム面の変更によりライト層もヘビーユーザーも各々のプレイスタイルに合わせて楽しめるように
細かなUIなども改善されてより遊びやすくなった
戦闘アニメも一時期からかなり良くなった
DLCも満足のいく内容
悪い点
システム変更の負の側面としてシナリオ・クロスオーバーの部分に弊害が出てしまっている
ワールドマップ関連の仕様が不便
全てのDLCが結構な高額で、種類も多すぎる
総評
悪いところもちょこちょこ目立つとはいえ、総合的に見れば良作と呼んでも良いとは思います。
システム面の違いから過去作と単純比較しにくい部分もありますが、30周年記念作の看板に偽りなしです。
参戦作品のうち、見てはいないけど知ってる程度の作品が一つ二つあればきっと楽しめると思いますので、ロボットアニメには詳しくないという方でもぜひ一度遊んでみてください。
以下は余談ですが、残念ながらスパロボはもはや大型タイトルではなく、人員も予算も開発期間も大量には掛けられなくなっているのが実情です。
VXTとやや保守的なタイトルが一年スパンで出た時、正直状況苦しいんだろうなと心配していましたが、こうして節目の年に挑戦的なタイトルをぶつけて来てくれた制作チームの心意気を買いたいですね。
引き続き関わり続けるとはいえ長年スパロボシリーズの制作を指揮してきた寺田Pが退社、フリーになった事で今後のシリーズにどのような変化があるのかわかりませんが、良い方向に向かってくれる事を祈ります。
評価・・・8 - GREAT(素晴らしい)/10
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?