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【レビュー】『信長の野望・大志』アプデを重ねた今なら割といける・・・のか?

 コーエーの看板タイトル、信長の野望シリーズから2017年に発売されたタイトル。
  このシリーズは通例として「パワーアップキット」(以下PK版と表記)というアペンド版が存在し、本作でも既にPK版は発売されているのですが、今回プレイしたのはあえての無印版(ワゴンで超格安だったので・・・)

 発売当初はクソゲーとして歴史ゲーファンの間で悪い意味で話題となり、嘆きと怨嗟の声がネットにあふれる結果となってしまいましたが、一方でアプデを重ね多くの部分で改善がなされた為、改めて今の状態でレビューを書く意味もあろうと考え書いてみました。

志システムによる勢力の特色作りに成功してる

 本作最大の特色として「志」というステータスが各大名に設定されており、例えば信長であれば楽市楽座を活かした商業発展の加速や兵農分離によって足軽を安く雇用できたりといった強みがある一方、農兵の扱いは苦手といった特性が設定されているので、史実通りの強みを活かした戦い方が可能。

上杉家の「義戦」
謙信自らが出撃することで自軍の士気が大幅に上がる「毘沙門天」が強力。

 この志の違いでプレイフィールが結構変わってくるので、大名によって進め方が全く変わるため、飽きにくさに繋がっているのが良いところ。

 またこの志を元にAIにも差が付いていて、例えば島津は九州、長宗我部は四国統一を最優先して拡張していくし、志が領土保全の大名は国力差があってもあまり攻めてこないし同盟も気軽に結んでくれたりする、といった特徴があり、史実を逸脱した状況にならないよう工夫されています。

方策システムも格差が生じ過ぎない程度の差別化に

 方策は簡単に言うと自勢力全体にかかるバフ、パッシブスキルのこと。
 大名の志に応じて取得できるものや順番に差異があり、前述の信長なら足軽に関する能力や鉄砲部隊の強化に強みがあったり、武田なら騎馬が強い、北条なら内政が強いといった感じ。

 こちらもやはり各大名の差別化につながっていて、何度もプレイしたくなる理由の一つとなっています。

PK版はこの方策と大命システムのバランスが極端で・・・

リアリティを詰め込んだ合戦が面白い

 本作の合戦はフェイズ制をとっており、指示を与える→それに基づいて行動の流れを繰り返す形。
 この結果作戦の読みあいの要素が生まれ、リアルタイムで動かしていた創造シリーズより戦略性は増しています。
 また武将によっては独自の作戦を持つ者がおり、上杉謙信なら「車懸かりの陣」、山本勘助がいれば「啄木鳥戦法」といった史実でも登場した作戦が使用可能。
 実際に軍勢がぐるぐる回転しながら戦う「車懸かりの陣」は一見の価値あり。

 他にも狭所で戦うことで大軍相手でも互角に戦える地形の要素や、お金のかかる足軽と金はかからないが弱い農兵の割合をどうするかといった徴兵の妙まで、リアルな戦国の合戦を楽しめます。

当時シリーズ最多の武将数が活かせていない

 これが大きな問題。
 本作の部隊の強さは各部隊の主将の能力のみで決まる為、例えば本多正信や鬼小島弥太郎のような特化ステ武将は戦で役に立ちません。

 また本作では知力が防御力に反映されるため、福島正則や南部晴政といった頭は良くないが戦はめっぽう強いという武将も使いにくい。

 なにより合戦メンバーに選抜される主力以外の武闘派はろくな使い途がなく、永久にベンチを温めることになりがち。

 せっかく一人ひとりに顔グラフィックやステータス、人物紹介などを付けているのだから、なにかしら活躍の機会を与えてあげないと勿体ないです。

引き抜きや離間など調略関連のコマンドが無い

 過去作にはあった調略関連のシステムがまるまる無くなってしまっており、あまりにもリアリティを損なっています。

 シンプルに過去作にできたことが出来なくなっているだけで十分残念なのですが、明智光秀、松永久秀や小早川秀秋といった寝返りで有名な武将の特徴をつぶしてしまうし、忠誠のステータスがほとんど機能しなくなってしまっているのも問題です。

 まあもともと本作は内政すらなかった(アプデで追加された)ので、予算面での限界だったのかなとは思います。
 が、ユーザーからすればそんなこと関係ありませんから、直前の作品からこれほど明らかに劣化したポイントがあれば評価は落とさざるを得ないでしょう。

 もしこの要素があれば前述のベンチウォーマー多すぎ問題を多少なりとも緩和出来ていたかもしれない、という面でも残念な限り。

一部武将を使えるシナリオがほとんどない

 これはまあいつものことではありますが、信長が君主となる以前の世代に活躍した戦国武将や、関ケ原や大坂の陣といった戦国末期で活躍した武将を使える機会が通常プレイではほとんどなく、実質群雄終結(全収録武将が同時に登場する架空シナリオ)専用キャラとなっていました。

石田三成は専用の志まで貰ってるのに架空シナリオ以外では君主として選択出来ない。

 これを解決するにはDLCシナリオを購入するか、PK版を導入するかしかなく、結局いつもの「PK版前提」感が出てしまっています。

要点まとめ

良い点

  • 志システム・方策システムによって各大名の差別化がしっかりとなされ、リプレイ性が高い

  • 近年のシリーズで軽視されがちだった合戦が面白くなった

悪い点

  • 大量に収録されている武将の大半に活躍の機会がない

  • 調略などの要素が省かれてしまい、リアリティに欠ける

  • 年代の都合で仮想シナリオにしか登場しない武将が沢山いる

総評

 アプデ前のどうしようもない有様からはかなりマシになっています。
 初期の評価が酷かったうえPK版や新生が出たこともあり、ディスク版は安く手に入ると思うので今月ちょっとお財布事情が厳しい、という方なら購入するのもありでしょう。

 良くも悪くも本作はシンプルで、煩雑さが少なく覚えやすいという点は一つ強みですが、その分フルプライスで買う内容としては物足りなく底が浅いと言われるのも止む無しかなと。

評価・・・7 - GOOD(良い)/10

※本レビューの点数はIGNのガイドラインを基準としています。


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