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【オメガバース小説】犬のさんぽのお兄さん【第38話】

【地方都市×オメガバース】オメガでニートの園瀬そのせあずさは、T中央公園を散歩中に謎の長髪イケメンアルファ(ダサい臙脂えんじのジャージ姿)に出会う。その瞬間、ヒートが起きて運命の番だと分かり——!?


「さてあずさ。そこに座ってくれるか」
 ディナーを腹一杯食べて巨大なゲップをしたら(ちなみに俺の誕生日兼クリスマスケーキは明日食べる)、京一郎は呆れ顔になったがソファを指してそう言った。
「お? もしかしてプレゼントくれんの?」
「まあそうだが、普通はそう聞かないのがマナーだろう……全くあずさちゃんは」
 京一郎はそう言ってため息を吐いたから、「ごめんって」と言いながらソファに向かう。
 そうして腰を下ろすと、京一郎は俺の前に跪いた。「えっ」と声を上げたら、彼はエプロンのポケットから青いベロア生地の小箱を出したので「あーっ」と叫ぶ。
「いちいち、リアクションが大きい……」
 ムードも何も無いと京一郎がうんざりしているのを見て、俺は慌てて居住まいを正すと神妙な顔つきになった。
「前にも言ったが……もう一度言わせてくれ。園瀬梓、俺と結婚してくれ」
 京一郎はそう言うと、ケースをパカッと開いた。中には大きめのダイヤモンドが付いた婚約指輪が入っていて、予想通りの展開に胸が高鳴った。
「えーっと、どーしよっかな……」
「ええ……」
 この後に及んで断るつもりか、とでも言いたげな京一郎の顔を見て、俺はぷっと噴き出した。それから小さく深呼吸して答える。
「良いぞ! 結婚してあげる!」
「偉く上から目線だな……」
 京一郎はそう言って眉を寄せたが、ふっと笑うと指輪を取り出して、俺の左手を取り薬指に嵌めた。いつの間にサイズを測ったのかぴったりである。
「おーっ! すげえ、めっちゃきれい!」
 指輪を嵌めた手を伸ばして歓声を上げ、ふと思いついて尋ねる。
「でも京一郎、いつの間に買ったんだ? これ」
「何回か俺一人でキョー◯イ(スーパー)に行っただろう。その帰りに近くのショップで注文した。受け取ったのも同じ要領だ。お前に選ばせてやっても良かったが、余りこだわりがなさそうだと思って」
「なるほど……流石、隠密おんみつ行動に慣れているな」
「俺はしのびか」
 阿呆な会話をして、俺は「そうだ!」と言うとソファの下に手を入れ箱を取り出した。すると京一郎が目を見開いて言う。
「まさかその変態漫画、俺に買ったのか……?」
ちげぇよ!」
 俺は眉を寄せて否定すると、ガムテープをビリリと剥がして箱を開封した。すると中から赤い包装紙と金色のリボンでラッピングされた薄い箱が出てくる。
「ほい! メリークリスマス!」
「おお……変態漫画がラッピングされている」
「だから漫画じゃねえって!」
 箱を受け取った京一郎の言い草に突っ込んでいたら、ビリッと勢いよく包装紙を破ったので「思い切りが良いな!」と言う。
「欧米風だ。向こうでは派手に破くのがマナーだ」
「なるほど……」
「どれどれ……って何だこれは」
 包装紙の下から現れたのは、笑顔のう◯この絵文字がたくさんプリントされたポップなデザインの箱だ。透明の窓が付いていて、中にあるフォトフレームが見える。
「う◯こ型フォトフレームか! しかもゴールド」
 京一郎にプレゼントしたのは、金色のう◯こ型フォトフレームだった。シンプルにう◯この形をしていて、丸い窓に写真を入れられる。
「金持ちだし、普通の茶色より金色が良いと思って」
「金が儲かるように、じゃなくて金持ちだからなのか……」
 京一郎は俺の言い草にまた呆れ顔になったが、くすっと笑うと優しい目つきで言った。
「今度、ぽん吉さんのスタジオでお前の写真を撮って入れてやるからな。枕元に飾ろう」
「ええっ、ぽん吉の写真じゃないのかよ! しかも枕元って!」
 まさか自分の写真を入れられるとは思わなかったので、俺は顔を顰めて叫んだ……。

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