【オメガバース小説】犬のさんぽのお兄さん【第98話】
【地方都市×オメガバース】オメガでニートの園瀬梓は、T中央公園を散歩中に謎の長髪イケメンアルファ(ダサい臙脂のジャージ姿)に出会う。その瞬間、ヒートが起きて運命の番だと分かり——!?
慣れないプリクラ撮影に四苦八苦しながら仕上がった一枚は、確かに二人共盛れていたがはっきり言って奇妙な写真だった——京一郎はそのままでも脚が長いのに、ふざけて脚長加工もしたからバランスがおかしい。黒目は猫みたいに大きくなっているし、顎はどこかに刺さりそうなくらい尖っている。俺はそれを見て爆笑したが、京一郎はふん、と言って「これをう◯このフォトフレームに入れるか?」と聞いたので、「りょーちゃんが夜見たら泣くだろ!」と突っ込んだ。
「今日は写真ばかり買っているな……」
ヴェレヴェンも軽く冷やかした後、地下一階のミナミムラへ戻りようやく仕上がった写真を受け取った。それらの入った紙袋を手に店を出て、京一郎がそう呟いた。
「京一郎きゅんは写真が大好きだからな! 元気が出るだろ?」
「もしかして元気付けようとしていたのか?」
「そうだよ。京一郎きゅん、この前からずっとしょんぼりしてるから……」
「……」
そう言うと、真面目な顔をした京一郎は少しの間黙っていた。これから駅ビルの北にあるT中央公園へ散歩に行くから、手を繋いで線路沿いの道を歩いている。
「あずさが俺を振り回しているようで、本当は俺があずさを好きにしているからな」
「は? 好きにするって……」
「あずさは乗り気でなかったのに妊娠させたり、殆ど無理矢理一緒に住まわせたりしただろう」
「まあそうだけど」
「後悔はしていないが、反省はしているんだ。だからあずさが尻餅をついて腹が痛くなった時、もし何かあったら全部俺の責任だと思ってな」
「……」
そんなに深刻に考えていたのか、と思って俺は無言になった。けれどもすぐに顔を上げて言う。
「京一郎きゅん、きっかけはどうあれ、子どもは二人で生み育てるもんだぞ。だから何でも一緒だ! 京一郎きゅんだけ不安にならなくても良いぞ」
「あずさ……」
「そんで、不安になったら今みたいにすぐ言うんだぞ。ちゃんと慰めてやるから」
「……分かった。流石あずさ、頼りになる」
「実はこう見えて、かよわい京一郎きゅんを守る騎士だからな」
「はは。しょっちゅう落馬していそうな騎士だな」
「何おーう!!」
俺は京一郎の言い草にぷりぷりして、繋いでいる手をぶんぶん揺らした……。
家に帰るとすぐに、プリントした写真をう◯このフォトフレームに入れた。選んだのは市役所の隣のS公園で撮影した一枚で、楓の木がバックで金のフレームに良く映えていた。
「う◯この中であずさが笑っている……会心の笑みに見えるな」
「そうだな! 俺はずっとう◯このフレームに入りたかった……って違ぇよ!!」
「珍しい。ノリツッコミも出来たんだな」
「どこまでも失礼だな!!」
寝室のベッドサイドテーブルの上に飾ったフォトフレームを見ながら、そんなやりとりをする。京一郎はこれから夕食を作るところだからエプロンを着けていて、俺はこの前し◯むらで買った、キャラクターもののもこもこした部屋着に着替えている。
「さて。外は寒かったし、何か体が温まるものを作るか……」
「あ! じゃあクリームシチューが良い!」
「よし。ではルーから手作りしてやろう……」
「わーい!」
きっと、京一郎が手ずから作ったルーはとびきりクリーミーで美味しい筈だ。俺はわくわくして思わず飛び跳ねたくなったけれど、もちろん危ないから我慢した……。
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