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【オメガバース小説】犬のさんぽのお兄さん【第35話】

【地方都市×オメガバース】オメガでニートの園瀬そのせあずさは、T中央公園を散歩中に謎の長髪イケメンアルファ(ダサい臙脂えんじのジャージ姿)に出会う。その瞬間、ヒートが起きて運命の番だと分かり——!?


 そうこうしているうちに、あっという間にクリスマスのイブイブがやって来た。
 四六時中京一郎がべったりくっ付いているので、内緒でプレゼントを買いに行くことが出来なかった。だから通販一択だった訳だが、選ぶのには結構苦労した。知り合ってから三ヶ月ちょっとの間毎日、ほぼ二十四時間一緒に過ごして、互いの趣味嗜好は粗方あらかた理解しているのだけれど。
 料理をよくするしキッチン用品がまず初めに候補に上がったが、こだわりがありそうなので、素人の自分が選ぶのものな、と思ってやめにした。それはペット用品も同じである。
 アクセサリーのことも頭に浮かんだが、金持ちだし俺が買える程度の安物は要らないだろうと思った。それに、そもそも京一郎は指輪もネックレスも着けない。
 そうして俺が選んだのは無難も無難、ギフト雑貨の代表格であるフォトフレームだった。けれども中中良いんじゃないかと思った——この前ぽん吉の撮影スタジオに入らせて貰ったら、壁面一杯に様様なフォトフレームに入った写真が飾ってあったのだ。全て京一郎が撮影したものである。
 もちろんきたりなものをあげても意味が無いから、敢えて京一郎が絶対に選ばなそうなデザインのものにした。

 京一郎の作ったマカロニグラタンに舌鼓したづつみを打った後、淹れて貰ったコーヒーに牛乳を注いでカフェオレにして飲みながらのんびり寛いでいたら、ピンポン、とインターホンが鳴った。
「あ、俺出るよ」
「気を付けるんだぞ。刺されるかもしれないからな」
「俺は元カノに恨みを買った浮気男か何かなのか!?」
 洗い物をしている京一郎の言い草に眉を寄せると、俺はショチハタ(※朱肉が要らないタイプの印鑑)を持って玄関へ行った。すると「宅◯便でーす!」と叫ぶ声がしたので黒猫さんだと分かった。
「あ、もしかして……」
 通販で買った京一郎のプレゼントかもしれない、と思って俺は青くなった。阿呆なことに、本人が居るところで受け取ることになってしまった——というか、そもそも片時も離れずに居るからそれ以外不可能なのだけれど。
「どうもーっ! あざーっした!」
 配達員のお兄さんは爽やかな笑顔でそう言うときびすを返し、タタタッと走ってトラックへ戻って行った。それを見送ってパタン、とドアを閉めると、奥から「何が来たんだー?」と尋ねる京一郎の声がした。
 俺は数秒間何と答えるか迷った後、「密林ア ゾンで買った漫画だよ!」と答えた。
 そして、部屋着のパーカーの中に隠して運んだ商品の箱を、リビングのソファの下にごそごそ突っ込んだ。すると京一郎がキッチンからひょいと顔を出したので慌てて立ち上がる。
「何をしているんだ? あれ、受け取ったものは?」
「変態系のえっちな漫画だから隠した。探すんじゃないぞ!」
「わ、分かった……」
 京一郎は俺の嘘にドン引きした様子だったから、「変態系」とまで言わなくても良かったかな、と俺は後悔した……。

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