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「刺客 用心棒日月抄」を読んだ。

 用心棒日月抄シリーズ、3作目。連作短篇集。「陰の頭領」「再開」「番場町別宅」「襲撃」「梅雨の音」「隠れ蓑」「薄暮の決闘」「黒幕の死」の8篇を収録。
 藤沢周平をはじめて読むのにこのシリーズに当たってよかったと思っている。適度にユーモアがあるし、主人公の青江又八郎が推理を披露するミステリー的な側面もある。
 3作目はお家騒動的な展開だ。嗅足組という藩の秘密組織が大物の敵によって解体されそうになる。藩の地元でも戦いはあるが、とくに心配なのは女子が中心となった江戸表の嗅足組だ。又八郎と関係の深い佐知の危機である。
 国元から凄腕の5人の剣士が敵方として江戸に出て行く。追う又八郎。
 今回は剣豪小説としての側面が強く、剣の斬り合いを描く文章の迫力がすごい。
「足を踏み変えた。剣は微動もせず、筒井の黒い姿はそのまま一本の刀身の鋭さを発散する。
 ――来る。
 又八郎は前に踏み込んだ。」
 といった名調子。息を詰めて読む感じ。
 連作がうまくつながっていて、一本の長編としても読める。読み得な一冊である。

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