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筒井康隆「朝のガスパール」を読んだ。

 読み残していた「朝のガスパール」を読んだ。
 書かれたのは1991年だった。まだインターネットが普及する以前、パソコン通信の時代である。ASAHIネットに電子会議「電脳筒井線」が開設され、ネットへの書き込みと投書を引用しながら朝日新聞紙上で書き継がれた物語である。
 パーティ部分が不評で、登場人物の大部分を超音速ロケットジェットの事故で殺してしまうなど、過激な展開をみせる。物語の合間に挿入される読者罵倒も凄かった。
 「まぼろし遊撃隊」という物語内のゲーム小説があり、それを楽しむ登場人物たちがおり、それを描いている櫟沢という作家と編集者の世界があり、櫟沢を創作した筒井康隆がおり、毎週小説を読んでいる読者(投稿者)がいるという重層的な世界で、世界の壁が破れていく。読者の感想やプレイヤーの思考がまぼろし遊撃隊のメンバーに影響していく様は圧巻であった。
 やはり天才だなあ、筒井康隆。自身の影響力や連載する媒体の形、反響まで考えに入れて物語を構築していき、破壊するなど、他の誰にもできない。

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