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「戦争育ちの放埒病」を読んだ。

 色川武大の作品は小説、エッセイを含め、ほとんど読んだ気がしていたが、死後の2017年に幻戯書房からこんなエッセイ集が発売されていたとは気づかなかった。「戦争育ちの放埒病」は全集、単行本に未収録のエッセイを集めた本である。406ページとかなりぶ厚い。
 全体をいうとざっくり自分のこと、戦争のこと、本や新劇や能のこと、交遊録、映画のこと、青春のことに分かれている。
 読書日記が面白い。「本が怖い」というタイトルである。
「どうも、本だけは、読まないようにしたい。ただ買ってきて静かにおいておくだけでも健康にわるいのに、読んだりすれば私はどうなるかわからない。」「本というものはそれなりに著者の力の結晶でもあって、そういう力感に私は出遭いたくない。私は何も見ず、何も聞かず、何も読まず、このままなんとかごまかして手早く一生を終えてしまいたい。」
 なんとも色川武大らしい。こんなことを書きながら「他者とのキャッチボールを」では西洋文学を読むための必読書として旧約聖書を読んだりもしているのである。

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