山田風太郎リスペクトの長編忍者小説「機忍兵零牙」を読んだ。

 月村了衛の初期作品「機忍兵零牙」を読んだ。異世界ものである。
 山田風太郎を偏愛しているというだけあって、見事な忍法帳になっている。
 敵方は、数多の次元世界を制する支配者集団〈無限王朝〉であるが、これは名前しか出てこない。その配下である骸魔忍群と光牙忍群との闘いを描く。
 山風忍法帳と同じく、ひとりひとり忍者が激突していく。その忍法がSF的だ。巨神兵を思わせる機忍獣が出てきたり、次元をまたいで降り注ぐ次元弓が出てきたりと、楽しい。
 ストーリーは旅ものである。骸魔忍群に滅ぼされた王国の王子と王女を北方に逃がすために光牙が手助けをするという展開。
 青柳美帆子のインタビューが、百合SFという観点で「機忍兵零牙」を追及していて驚いた。読んでいる最中にはそんなことはまったく感じなかったなあ。私が鈍感なのかもしれない。
 二次元とか亜空間といった異次元は出てくるのだが、多次元は出てこなかった。これはシリーズ化を想定していたのかなとちょっと思ったが、もういまとなっては続編は出てこないだろうな。

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