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「アルトゥロ・ウィの興隆」を観た。

 KAAT神奈川劇場で草彅剛主演の演劇「アルトゥロ・ウィの興隆」を観た。
 ベルトルト・ブレヒトの劇作を白井晃が音楽劇として再構成したものである。舞台の中央にばかでかいバンドワゴンがあって、生演奏を背景に草彅剛がジェームス・ブラウンの楽曲を唄い踊る。ライブか! と思ったくらい音楽性が高かった。
 ギャングのショーといった体裁で、合間合間にセリフが飛び交う。草彅剛演じるアルトゥロ・ウィは悪いやつなのだが、自分からはあまり悪逆非道なことはしない。そういうことは部下たちがやって、ウィは白々しい正論を述べ立てる。またそういう自分を信じているようなところがあって、ウィの狂気がだんだん客席に浸透してくるのがわかる。
 劇作は第1部と第2部に分かれており、第1部ではウィがギャングの親玉としてシカゴで伸していく過程を、第2部では隣町のシセロまで支配していくありさまを描く。シセロはオーストリアに相当する。大不況の中、一人の独裁者が生まれていく過程を細かく描き、それはいまの日本の状況とも照応しそうだ。

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