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飛浩隆「グラン・ヴァカンス」を読んだ。

 国産SFというと、どうしても第一、第二、第三世代を中心に読んでしまうのだけど、ここのところ、比較的新しい世代を読むように心がけている。
 飛浩隆も、その一環で読んだ。
 10年かかったという廃屋の天使シリーズ第1弾「グラン・ヴァカンス」だ。
 2002年の作品。あとがきノートに「ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。飛にとってSFとはそのような文芸だからである」とあるが、まさにそのようなSFに仕上がっている。
 放棄された仮想リゾートが舞台である。計算リソースがあり、それぞれキャラ立ちされた2000名余のAIからなる「夏の区界」。50年ほどゲストを迎えた時期があり、その後、なにがあったのかはいっさいわからないが、1000年が過ぎている。突然、なにかよくわからない凶悪なものが攻めてくる。一昼夜にわたるその攻防を描いた作品ともいえるだろう。
 少年と少女が主人公なので、文体は眩いばかりだ。読み終えたいまは次の作品「ラギッド・ガール」への期待しかない。

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