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筒井康隆「虚航船団」を読んでいる。

 なぜか途中で挫折してしまった「虚航船団」を今頃になって読み直している。
 作者は「第一章の舞台は宇宙船の内部である。乗組員はすべて文房具である。作者の一面をそれぞれ持つ各文房具の異常性ばかりがえんえん描写される。ここでまず、SF嫌いと、主人公にしか感情移入できぬレベルの者と、物語の展開だけを求めて小説を読む読者が疎外される。」と述べているのだが、文房具ばかりが乗り込んだ宇宙船が旅をしているという状況自体がまず面白い。
「まずコンパスが登場する。彼は気がくるっていた。」
 という有名な冒頭以下、いろいろな文房具が登場する。自分の行為ひとつひとつに番号を打たざるを得ないナンバリング、性欲が旺盛すぎる糊、日付がわからなくなったタイムスタンプ、喧嘩っ早いホチキス、ゲシュタルト崩壊をおこす輪ゴム、自分のことを天皇だと信じている消しゴム、若作りをする下敷き……。執拗にその性格を描写するうちに物語も進み出す。第1章は順調に読み終えた。第2章は世界史の知識があるほうが面白そうなのでちょっと辛い。

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