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2023年【読書回想】

毎年嘆いているが、本がなかなか読めない。ようやく55冊。今年は3月に1冊しか読めていないのが致命的だし、冬にも読書が進まなかった。言い訳のようにスロー・リーディングに関する本を二冊も読んでいる。来年の目標60冊。
堀江敏幸全冊読破計画は進行中である。年内に終わると思っていたが、無理だった。三年かかることになる。

今年の収穫本(2023年に刊行された本ではありません)。
いつか王子駅で』(堀江敏幸)。面白かった。競馬雑誌に連載されたと知って驚く。そういえば、馬に関する蘊蓄がよく出てきたな。不在小説の一種であって、冒頭、印象的に登場する人物が失踪する。それでもつづく人生。
虚栄の市』(小林信彦)。古い小説であるが、読んでよかった。カリカチュアというのはこうやるものだ、というお手本のような小説。ある時代の風俗が確実に切り取られている。
ある男』(平野啓一郎)。印象に残る小説である。これも不在小説といっていいだろうか。語り手は弁護士だが、事件を捜査するわけではない。調査し、ある男の姿が浮かびあがってくる。書き方が丁寧。
ザリガニの鳴くところ』(ディーリア・オーエンズ)。主人公の造形がすごい。人生がすごい。すごいすごいと呟きながら読んでいたら、最後でこれがミステリー小説であることに気づかされ、驚愕する。
川岸忘日抄』(堀江敏幸)。妙に後を引く小説である。人生の中の休日のような時間、パリの川の流れにたゆたい、日本の知人とはファクシミリで連絡をとりあう。ゆっくりと時間が流れる。
菜の花の沖』(司馬遼太郎)。新しい小説ではないが、司馬遼太郎作品のなかでは後期に位置するだろう。もはや大御所としてなんでも好きに書けるようになったとき、司馬は武将ではなく、一商人を取りあげ、ロシア問題を掘り下げた。
『鵺の碑』(京極夏彦)。百鬼夜行シリーズ待望の新作である。「なにもなかった」。ただ、もつれていただけだった。とうとうここまで来たかと感慨深いものがある。
クララとお日さま』(カズオ・イシグロ)。ノーベル賞作家の作品であると構えて読み出したのだが、言葉がとても平易。平易でありながら、誰も真似できないような書き方をする。内容は人工知能についての寓話である。人工知能側の視点で描くのが常人ではないところ。

1月
『子午線を求めて』(堀江敏幸)、289ページ
『厭な小説』(京極夏彦)、472ページ。
『言語はこうして生まれる「即興する脳」とジェスチャーゲーム』(モーテン・H・クリスチャンセン)、327ページ。
『役に立たない日々』(佐野洋子)、256ページ。
『死ぬ気まんまん』(佐野洋子)、198ページ。
『冬の神話』」(小林信彦)、213ページ。
『回送電車』(堀江敏幸)、261ページ。

2月
『いつか王子駅で』」(堀江敏幸)、185ページ
『がんばりません』(佐野洋子)、270ページ。
『旅の絵日記』(平野レミ 和田誠)、220ページ。
『虚栄の市』(小林信彦)、318ページ。

3月
『遅読のすすめ』(山村修)、318ページ。

4月
『秘伝「書く」技術』(夢枕獏)、195ページ。
『影法師夢幻』(米村圭伍)、274ページ。
『ある男』(平野啓一郎)、384ページ。
『いまだ、おしまいの地』(こだま)、191ページ
『ここは、おしまいの地』(こだま)、272ページ。
『ずっと、おしまいの地』(こだま)、192ページ。
『ゼラニウム』(堀江敏幸)、185ページ。

5月
『魔法の石板 ジョルジュ・ペロスの方へ』(堀江敏幸)、291ページ
『ザリガニの鳴くところ』(ディーリア・オーエンズ)、512ページ。
『書かれる手』(堀江敏幸)、282ページ。
『一階でも二階でもない夜 回送電車Ⅱ』(堀江敏幸)、263ページ。
『本の読み方 スロー・リーディングの実践』(平野啓一郎)、244ページ。

6月
『川岸忘日抄』(堀江敏幸)、407ページ。
『暗殺者たちに口紅を』(ディアナ・レイバーン)、352ページ。
『もののはずみ』(堀江敏幸)、251ページ。
『バン・マリーへの手紙』(堀江敏幸)、247ページ。
『今日はそういう感じじゃない』(宮沢章夫)、186ページ。
『めぐらし屋』(堀江敏幸)、194ページ。
『探偵は田園をゆく』(深町秋生)、322ページ。

7月
『香港警察東京分室』(月村了衛)、320ページ。
『未見坂』(堀江敏幸)、268ページ。
『菜の花の沖一』(司馬遼太郎)、402ページ。
『彼女のいる背表紙』(堀江敏幸)、251ページ。
『菜の花の沖二』(司馬遼太郎)、430ページ。
『ある家族の会話』(ナタリア・ギンズブルグ 須賀敦子訳)、288ページ。
『菜の花の沖三』(司馬遼太郎)、426ページ。

8月
『菜の花の沖四』(司馬遼太郎)、400ページ。
『正弦曲線』(堀江敏幸)、205ページ。
『菜の花の沖五』(司馬遼太郎)、421ページ。
『菜の花の沖六』(司馬遼太郎)、448ページ。
『象が踏んでも 回送電車Ⅳ』(堀江敏幸)、321ページ。
『なずな』(堀江敏幸)、462ページ。
『天路の旅人』」(沢木耕太郎)、573ページ。

9月
『振り子で言葉を探るように』(堀江敏幸)、432ページ。
『燃焼のための習作』(堀江敏幸)、210ページ。

10月
『目ざめて腕時計をみると』(堀江敏幸)、208ページ。
『クララとお日さま』(カズオ・イシグロ)、440ページ。

11月
『鵺の碑』(京極夏彦)、829ページ。
『戸惑う窓』(堀江敏幸)、207ページ。
『余りの風』(堀江敏幸)、306ページ。

12月
『ヒト夜の永い夢』(柴田勝家)、573ページ。
『嘘と正典』(小川哲)、252ページ。
『坂を見あげて』(堀江敏幸)、201ページ。

2022年【読書回想】


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