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朗読用ショートショート

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2024年5月の記事一覧

【ショートショート】店長の背中

 オレは背を向けた店長に向かって、アカンベーをした。左目のまぶたを下げ、赤目を見せながら…

深川岳志
5か月前
6

【ショートショート】舌が止まらない

 子どもがだんだん生意気になってきた。  今日もおもちゃを片付けないままご飯を食べにいこ…

深川岳志
5か月前
11

【ショートショート】オツカレデスカ

「しんどいな」  と呟きながらスーパーに向かって歩いていると、途中で黄色いロボットとすれ…

深川岳志
5か月前
3

【ショートショート】読めない手紙

 手紙が届いた。しかも手書きだ。  中身がよくわからない。  アルファベットではない。漢字…

深川岳志
5か月前
5

【ショートショート】昔と出会う

 今は昔。  そりゃそうだ。 「今」  と言ったら、その瞬間に今は過去になっている。  今を…

深川岳志
5か月前
5

【ショートショート】無人マンション

「自殺か、殺しか、わからんですね」  とネモトが言った。 「こういうの、増えたなあ」  と…

深川岳志
5か月前
4

【ショートショート】冷たい家

 隣の空き地にコンクリート造りの立派な家が建った。  表札をみると「氷室」と書いてある。  いつの間に引っ越しがあったのか、ある夜、ピンポーンとチャイムが鳴った。  玄関をあけると、白いワンピースを着た女性が、 「氷室と申します。隣に越してきました。よろしくお願いします」  と言って、挨拶の品をくれた。上物の氷菓子だ。  三人家族といっていたが、昼日中に氷室家の人々の姿を見ることはなかった。  ガレージのなかにある冷凍車でご主人が毎晩どこかに出かけていく。  しばらくたって、

【ショートショート】誕生日酒

「今日を楽しみにしていた」  と父が言って、日本酒のとっくりを持ち上げた。 「ありがとう」…

深川岳志
5か月前
7

【ショートショート】幻覚社会

 街中を歩いていたら、同僚が街中華を指差して、 「この店、前はなんだっけ」  と言った。店…

深川岳志
5か月前
10

【ショートショート】街ゆく部品

 パソコンの調子が悪い。  ときどき不意に落ちる。CPUが限界なのか、接触があまいのか、それ…

深川岳志
5か月前
8

【ショートショート】ナイスアイデア

 オレはトマトだ。  まだ青いときに収穫され、コンテナと倉庫のなかでだんだん赤みを増して…

深川岳志
5か月前
9

【ショートショート】夜の襲撃

 私は定年まで屋形船の船頭をしていた。  次の仕事をどうしようと悩んでいたときに声をかけ…

深川岳志
5か月前
2

【ショートショート】旅の不思議

 まなじりを決した侍がふたり、ススキ野に入ってきた。  入口のあたりで茅を刈っていた百姓…

深川岳志
5か月前
7

【ショートショート】長寿、ありやなしや

 私の知り合いに寿命占いを生業にしている人がいる。  どうやって占うのか仕組みはわからないが、よく当たると評判で、私もみてもらった。私の寿命は七十八歳だそうだ。  そこまで生きられれば十分だ。 「こんにちはー」  友だちのタロウがやってきた。 「ほら、お土産」  といって、へんな卵を一個、くれた。真っ黒な卵なんてはじめてみる。 「なんだいこれ」 「たいへんな温泉卵だ」 「なにがたいへんなんだい」 「一個食べると、寿命が七歳のびる」 「はは、なんてお気楽な」  と言いつつ、ぱく