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浅田麻衣子(芸名:深田萌絵) スラップ訴訟 クリプトロッカー事件

※浅田=浅田麻衣子(芸名:深田萌絵)
 原告=ジィアンスィ・ジェイソン・ホウ=后健慈(ジェイソン ホー)
 レバトロン副社長については個人につき名前を伏せています
 被告=藤井一良


平成27年1月27日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成26年(ワ)第11027号 損害賠償請求事件  
口頭弁論終結日 平成26年12月9日
判決
当事者の表示 別紙当事者目録記録のとおり
主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告らの負担とする。
事実及び理由

第1 原告の請求
被告は原告らに対し、各100万円及びこれらに対する平成26年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 当事者の主張
本件は、原告らが有する暗号技術を被告が悪用したために原告らの名誉が毀損され、精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

1 請求原因
(1)当事者
ア 原告ジィアンスィ・ジェイソン・ホウ(以下「原告ホウ」という。)は、サーチエンジン及びデータ圧縮技術の開発、設計、販売及び輸出入などを目的するRevatron株式会社(以下「レバトロン」という。)の最高経営責任者であり、スーパーコンピューターに必要な各種技術の開発者及び発明者であり、レバトロンに技術を供与する者である。

イ 原告****(以下「原告**」という。)は、レバトロンの副社長であり、原告ホウと暗号技術などの共同開発を進めている者である。

ウ 被告は、コンピューターのソフトウェアの開発及び販売などを目的とする会社を経営する者であり、平成23年ころ、原告ホウと会ったときから、自らをハッカーであると話していた。

(2)インターネット犯罪「クリプトロッカー」と被告の関与について
ア クリプトロッカーとは、インターネット経由によりコンピューターに侵入し、不正ソフトウェアをインストールさせるものであり、それによって上記コンピューター内のファイルを暗号化し、その暗号を解除するために金銭を求めるというものであり、平成25年9月ころから各国で被害が生じているものである。

イ そこで用いられている暗号技術の特徴は、秘密鍵という概念がないかわりに、ファイルを暗号化した後に自動的にファイル複合化用のカギを生成するが、同時に大量のダミーの鍵を生成し、上記複合化用の鍵と誤って使用すると上記複合化用の鍵を壊すプログラムが発動するというものである。

ウ 原告らは、被告に対し、平成23年から約1年間、被告と共同事業を行うことを前提に、被告に暗号技術等を用いたデジタルビデオの不正防止用サービスの提供事業を検討し、被告にもタペストリーエクスジェンジという独自の暗号技術を教えたが、平成24年中ごろ、被告から暗号技術を用いた犯罪行為を一緒にすることを持ちかけられた。原告らは、その申し出を断ったところ、その後、被告からの連絡が途絶えた。

エ 原告ホウが被告に教えた暗号技術を利用するのは、原告ホウ以外にはなく、その技術を教えた相手方は原告**と被告のみであるところ、クリプトロッカーとタペストリーエクスチェンジの暗号技術は同じ役割を果たすものである。また、クリプトロッカーの暗号技術には、メルセンヌツイスタの疑似乱数生成器が利用されているところ、原告らは被告にその利用を勧めたし、メルセンヌツイスタのサイトには英語によるものがあるが、英文のレベルが低いため理解ができないのであるから、日本語が分からないハッカーやプログラマーが独自に習得することはほぼ無理であるし、仮に犯人が英語圏の人物であった場合には、英語圏基盤の疑似乱数生成器を持ち用いるはずである。

オ クリプトロッカーを生成するためには、システムアーキテクチャ、ソフウェア、ファームウェア、ドライバー及び暗号技術を組み合わせる必要があり、それぞれ高度の専門性を有する技術であるところ、レバトロンは一社内でそれらのすべてを有する珍しい会社であり、原告ホウがこれらの技術のすべてを教えたのは被告のみである。

カ 原告ホウが被告に上記オの技術を教えていたのが平成24年5月ころまでであり、今回のクリプトロッカーの被害が発生したのが平成25年の9月ころであるが、これは、ソフトウェアの開発、デバック及び検証にそれぞれ6ヶ月かかること、平成25年1月にレバトロンの代表取締役である浅田に被告がコンタクトを取り、同年2月に原告ホウの技術を再度学びたいと相談したタイミングと符合している。

キ 以上からすると、インターネット犯罪であるクリプトロッカーに被告が関与しているということができる。

(3) 原告らの損害
ア 被告は原告らから技術を教わる前に当該技術をデジタルビデオの不正コピー対策に関する事業にしか使わないと約束していたのに、その約束を破り、原告らから教わった技術を用いて、上記のインターネット犯罪に関わっている。

イ 暗号技術には開発の個性が明確に表れるところ、クリプトロッカーの暗号技術を用いた犯罪行為が行われる場合、原告らは、当該犯罪に関与していないにもかかわらず、最悪の場合は実行犯として厳罰を受ける可能性があることを被告は知っていた。また、原告ホウは、以前にも組織犯罪によって被害を受けたことがあるところ、今回のことで再び犯罪組織に目をつけられるおそれがある。実際に、原告ホウはアメリカ政府関係者より任意聴取を受けており、これらの精神的苦痛は耐え難く、静かな平和的生活を過ごす権利を脅かされており、原告らの社会的な評価を害する名誉棄損であるといえる。

ウ また、原告らは自らの技術をより安全性の高い社会作りのための平和活用を目的として利用してきたにもかかわらず、勝手に凶悪なサイバー犯罪の収益確保のために利用されていたことを知り、多大な精神的苦痛を被った。

エ これらにより原告らが被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料額は、各原告に100万円が相当である。

2 請求原因に対する被告の認否
レバトロンの目的及び被告は、コンピューターのソフトウェアの開発及び販売などを目的とする会社を経営する者であることについては認めるが、その余の事実については。不知ないし否認する。原告らは、クリプトロッカー、暗号技術、それらによる犯罪やその被害などについて一般論を述べたうえ、それが被告によるものと根拠なく主張しているに過ぎない。

第3 当裁判所の判断
1 弁論の全主旨によれば、平成25年9月以降、アメリカを中心に、クリプトロッカーによる被害が発生していることが認められるが、それが被告によるものであることを認めるに足りる証拠はなく、弁論の全主旨によっても認めることができない。

2 以上によれば、原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

判決文1

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