50首連作『喫茶と歌人』

こんばんは、ふーかです。
ついに20代最後の1年を迎えることとなりました。
毎年のようにこの賞の多い時期に50首を既発表にする蛮行をしているわけですが、今年もやります。

喫茶と歌人 笠原楓奏(ふーか)

今日お客少ないっすね そうっすね、いつも少ないけど そうっすね
ドリンクで一番安いブレンドが一番美味いちょっとしたバグ
バスク風チーズケーキの焼き立ての上からの写真(ほぼ黒い円)
この店はパフェを置かない 完全なものなど無いと知っているから
映えるやつ出し始めたら俺のこと殴ってくれとマスターは云う
殴るのは別にいいけど警察に怒られるのは僕の方だよ
それよりも僕が誰かに媚びている歌を詠んだら殴ってほしい
殴るのは別にいいけど警察に怒られるのは俺の方だよ
そんなことばかり言ってる僕たちが頑固者だと揶揄されている
こだわっている人がやる店だから全体的に思想のお店
思想屋と定義したなら歌詠みもほとんど思想で生きるいきもの
僕というフィルターを通して見える世界は今日も輝いていない
星5個のレビューをするとサービスで店主がうれしそうになります
人間が集まってくる場所だから人を詠むには格好の場所
万人に開かれているべきだからレディースデーをやらない喫茶
美しく二層になったカフェオレは庶民と上流階級のよう
あ、でもそれ混ぜたほうが美味しいんでと言われて起こす小さな革命
赦される国でよかった洋風のケーキに挟んでいるあんバター
独特なフォントで書かれたメニューには美味しいですとだけ添えてある
(コーヒーの)問診をして(コーヒーの)処方箋を出している店
常連の高校生の数学を誰も解いてはあげない空間
いま君が行くべきなのは喫茶ではなくおそらくは心療内科
いくつまで子どもだとかは置いといて不健康なら力になるよ
詠うことしかできないと言いながら歌の力を信じています
できる限りの言葉尽くして救えない人がいたこと忘れられない
哲学の話がしたいコーヒーは薄まっていく一方だから
おじさんは何が楽しくて生きてるのまだやり残したことがあるの
夢を見る人を眺めていつからか現実だけを直視していた
運命を変えられるかは知らないが生き方ってこんなにも自由だ
ドアの外では雨が降る 脅威からきちんと距離を取れて安全
コーヒーに甘酸っぱいという味があることを知る、初恋ですか
大切な誰かと生きるということはやさしさだけじゃ成り立たなくて
大抵のことはお金が、その他のことは人脈が、君を助ける 僕ではなくて
文筆にできることってささやかでささやかながら油断ならない
今までにもらった手紙を捨てられずいる人たちはすこしやさしい
マッチングアプリで会ったらしい人が他人行儀な会話をしている
ジャズが好きなのかどうかは知らないがジャズを流している喫茶店
冷房が直接当たるここの席からだけ見える夕焼けがすき
店内に飾られている絵にちゃんと描いた人がいてよろこんだ
世の中に余裕がないといけないね本も喫茶も娯楽のひとつ
マズローはすごいんだな、と語り合いこんな喫茶があってたまるか
手の届く範囲の人の幸せを本当に願ってる本当に
どこを切ってもおんなじでこのように生きたいと思うショコラテリーヌ
フルタイム勤務じゃんって笑う人(ごめん喫茶に8時間居て)
午後8時プレイリストの終わるとき働きすぎたマスターの顔
今日お客少ないっすね そうっすね、特に少ないけど そうっすね
インディーズのバンドを応援するように売れてほしいが居場所もほしい
メレンゲのクッキー噛み締め日常を逃れる場所があってよかった
喫茶とは万人に開かれていて別け隔てなくコーヒーが出る
今度誰か連れてきてよと言われれば倍頼むから一人で来るね

お好きな歌があったらぜひ教えてください〜!
今年も笠原楓奏(ふーか)をよろしくお願いいたします。

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