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なぜ日本実写BLは海外でウケるのか?

2023年からBLの実写ドラマ化が活発になっていますよね!
また、最近の傾向として日本よりも海外での人気が高い作品も生まれるようになりました。
日本のドラマコンテンツの海外輸出を目指すのであれば、今一番可能性のあるジャンルは「BL」なのではないでしょうか。

しかし……日本人気=海外人気とは限らないなど、今後実写BLコンテンツを制作していくうえで一筋縄ではいかない問題も浮かび上がっています。
また、商業BLネイティブのファンの間では「実写化」は今でも議論が耐えない話題となっており、国内における商業BLファンと出演俳優ファンの人気の分断も顕著です。

今回は実写BLドラマブームとその在り方について考えていきます。



日本実写BLの現状

BL実写ドラマ7年史

映画、続編、配信のみの作品を除く主要なBL実写ドラマ

「おっさんずラブ」(2018)以降の実写BLドラマの系譜をみていくと、『美しい彼』(2021)から本格的BLドラマの制作がスタートしていることが分かります。

日本ではメインカップル以外のキャラにも焦点を当てて多角的なつくりとなっている「一般向きBL」、画面が全体的に明るめでテンポ良く展開していく「ラブコメBL」などの作風も人気となっていますが、
海外では画面が全体的に暗めで霞がかっており、情感に寄った演出などBLジャンル独特な「スモーキーテイスト」のBL作品が特に人気となっています。

2021年までにヒットしたBLドラマは『おっさんずラブ』『きのう何食べた?』『チェリまほ』などで登場人物も多く、予算をある程度担保した一般ドラマのスタイルで制作されていました。
一方で『ポルノグラファー』のようにBLのエッセンスであるセクシーさを取り入れたスモーキーで映画的なスタイルも2000年代から伝統的につくられており、 その系統を組む『美しい彼』(2021)のヒットにより、現在の実写BLのスタイルが確立したように思われます。

そして、『体感予報』(2023)ではタイや韓国を参考にドラマ以外のプロモーション活動を出演者が積極的に行うようになり、ドラマとの相乗効果で人気を獲得していきました。
今後はドラマをきっかけに登場カップルの活動をデザインするという、ドラマ本体とは違う新しいエンタメとしてBLドラマが進化していくと予想されます。

日本実写BLと海外実写BL

ここ10年の日本BLドラマ(映画)の制作数

ここ10年のタイBLドラマ(映画)の制作数

2020年からの韓国BLドラマ(映画)の制作数

実写BLが多く制作されている3ヵ国(日本・タイ・韓国)の推移を見てみると、数ではタイが圧倒的ですが、伸び率でいうと日本も負けていません!

2023年は前年比で約3倍の制作(映画・ドラマ合算)となった日本産実写BLですが、前述の「スモーキーテイスト」の作品は最小限の登場人物で織りなす湿っぽい空気感が特徴的な作りとなっています。

一方、海外各国のBLドラマの特徴を見てみると、
タイBLは一般ドラマ的な総合的な作り、韓国BLは二人の関係に絞ったショートドラマ的な作りとなっています。

さらに、台湾BLドラマはライトでロマンチック、クセが少ない作品が多い印象です。
中国BLは現代劇だと幸せになれないシリアステイストな作品が多いのに対し、ブロマンス時代劇は冒険劇の中でカップルのロマンスが挿入されるという作りとなっており、一般の人気が高くなっています。

中国人気と連動する日本実写BL

中国のXといわれるWeiboの海外ドラマ超话トレンド(2024/06/19)を見てみると、アジア全体でヒットしているタイを中心に韓国、日本のドラマが独占状態!
また、面白いことにタイはGL、韓国は男女、日本はBLとそれぞれ人気のジャンルが異なっています。

RED(中国版インスタグラム)で人気の高い日本の実写BLドラマとそうでないドラマを見ても、テイストの違いがはっきりと浮かび上がっています。
日本のラブコメ的なテイストは海外ではあまり受け入れられていないようです。

単に肌色が多いシーンというよりも独特の表情、背徳感を煽られるようなキャッチーなシーンの切り抜きが拡散される傾向にあります。
そして、その切り抜きをきっかけにドラマ自体に興味を持つユーザーが増え、作品がヒットする構造となっています。

国内・海外で流行したBLドラマの共通点

日本国内・海外で人気の高いBLドラマの共通点は主に3つあると考えます。

1.役者の表情の演技力
全体的な演技力よりも表情のエモさ、オス味、かわいらしさが求められる

2.背徳感・性癖
ディープなキスシーン、裸体、濃厚なベッドシーンよりも、
フェティッシュ・倒錯的なシチュエーション、行為などが強い印象を残す

3.ピュアさ
多くの男性が清純派アイドルのエロシーンを見たいのと同様、
BLドラマのキャラはエロくてピュアな属性が絶対必要な要素

反対に、BLドラマのヒットと相関の薄い要素もいくつかあるようです。


たとえ人気の役者をキャスティングしたとしても、多くの固定ファンがついている原作を使ったとしても、ふんだんに予算を使ったとしても、良いものができるとは限らないのがBLドラマなのです…。

まとめ

2023年、日本全体のドラマ制作本数は年間100本と近年大幅に増加していますが、その20%をBLドラマが占める時代となりました。

日本のドラマは、アニメと比較して海外では人気(実態は違法視聴)がありません。
しかし、BLドラマのみは例外となっており、中国を中心に大きなプロモーションを事前に打つことなく自然に人気が広がっています。
今後、コンテンツ事業を海外に積極的に輸出していくという政府の方針が打ち出されましたが、もっとも輸出しやすく、投資に見合ったリターンが得られる可能性が高いのがBLではないかと考えます。

また、現時点でBLドラマは低予算で制作されており、有名役者のキャスティングは積極的には行われていません。
そのため、新人役者の登竜門になり、中堅役者の再ブレイクのきっかけにもなるという、制作陣や演者にとっては願ってもない状況となっています。
これを利用しない手はありませんね!


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