東京大学授業料引き上げ問題の報道記事まとめ

最終更新:2024/06/25
※二次情報を中心に掲載しています。授業料引き上げに対する各種抗議活動などが全てまとめられているわけではありません。


概要

授業料引き上げ検討報道

5/15、TBSが関係者からの話として「東京大学が大学の授業料の引き上げを検討している」と報じました。

東京大学の授業料引き上げ検討に関する報道としては、恐らくこちらが初出だと思われます。


以降、NHKや大手新聞各社が同様の内容を報じています。


報道に対する大学側の反応

5/16、東京大学は報道を受けて、学務システム「UTAS」にて「授業料値上げの検討に関する報道について」というタイトルのお知らせを学内向けに出しました。

5/17の東大新聞によれば、大学側は同通知の中で授業料改定検討の事実を認めた上で次のように説明しています。

・現段階では検討中で決定事項として周知できる情報はない
・検討結果を速やかに知らせる
・改定された場合、導入年度の入学者から新たな授業料が適用され、授業料免除の拡充などの経済的支援を検討している
・6月ごろ、学生向けに「総長対話」を開催する


6/10、東京大学は授業料値上げに関する検討報道について、「授業料の改定を検討しているのは事実だが、決定はしていない」と強調しました。


授業料引き上げの検討状況

5/23、東大新聞は複数の関係者からの話として、授業料引き上げの検討状況について以下のように報じました。

・研究科長・学部長・研究所長・総長などが出席する14日の科所長会議での議論を経て、現在、各学部・研究科の教授会で議論されている
・科所長会議の素案では、学部・大学院(法科大学院を除く)での年間授業料を現行の約53万円から2割ほど値上げした64万円程度に引き上げる
・来年度の新入生より約10万円増の新料金が適用される可能性がある
・値上げの理由として物価・人件費の高騰が挙げられ、増収分の約29億円は主に学内のDX(デジタルトランスフォーメーション)拡充のために使用される
・授業料全額免除の家計基準について、現行の世帯収入400万円以下から600万円以下まで引き上げる案が出ている


6/3の毎日新聞では、検討状況の詳細として次の内容が報じられました。

「経済的支援策の拡充」もセットで示され、現在は世帯所得が年間400万円以下の学部学生が対象の学費全額免除を、同600万円以下の学部学生及び大学院生に対象を広げる▽世帯所得600万~900万円の学生は、状況を勘案して一部免除する▽博士課程学生への経済的支援の充実も予定--などの項目が盛り込まれた


6/5の朝日新聞では、検討状況の続報として次の内容が報じられました。

・6/4に「学部長、大学院研究科長、研究所長から意見を聴く『科所長会議』」を実施
・「教育・研究の国際化やデジタル化を進める"ために値上げを行う」
・「今月中に決定し、7月中旬に発表する日程案が浮上している」


6/10、東京大学は授業料値上げに関する検討状況について、以下のように発表しました。

・「物価や光熱費の高騰、人件費増大、設備老朽化などに対応する必要がある」
・値上げをする場合は「授業料免除の拡充や奨学金充実などの支援の仕組みを検討している」
・総長対話にて検討案を示す予定である


総長対話

東京大学は、藤井輝夫総長による検討状況の説明と学生との意見交換を行う「総長対話」を6/21に実施すると発表しています。


6/14、東京大学は総長対話「総長と授業料および東京大学の経営について考える」に先立ち参加申込者へ事前資料を配布しました。資料には「学生へ向けた支援制度の紹介と、東大を取り巻く財務状況についてのデータ」が記載されています。

また、大学本部広報課は東大新聞の取材に対し、学生約750名の参加申請があり、当日は東大執行部の関係者複数人が出席すると回答しています。

合わせて、総長対話当日は学生有志による以下のパブリックビューイングが開催予定だと報じられています。

・駒場Ⅰキャンパス 13号館(東京大学前期教養学部学生自治会主催)
・本郷キャンパス 赤門総合研究棟2階(教育学部連絡会主催)
・本郷キャンパス 安田講堂前(文学部連絡会主催)


6/21夜、総長対話がオンラインにて開催されました。

当日は「教養学部と文学部、教育学部の学生有志が駒場Ⅰキャンパス13号館、本郷キャンパスの経済学研究科学術交流棟・小島ホール、赤門総合研究棟のそれぞれでパブリックビューイングを実施」し、「各会場で100〜150人ほど」が参加しました。会場には一部の「大学教員や教育関係者」も参加しました。

このうち、教養学部学生自治会が主催した駒場会場では、13~19日に実施した「授業料引き上げをめぐる学生投票の結果を公表」。「有権者(前期教養課程生)の36.6%に当たる2409票」により投票が有効となり、4項目すべて賛成多数で可決したと報告しました。
また、総長対話終了後には、「『本日の総長対話は意見交換の場として不十分なものであった』などとする会場議決」がなされたとされています。

藤井総長の説明、学生からの質問とそれに対する総長の回答などは以下の東大新聞の記事をご参照ください。


総長対話終了後、「授業料値上げに反対する学生ら数十人が安田講堂前に集まり、藤井学長との面会を求めるなど」の動きが見られました。これに対し、東京大学は6/22、複数の学生らが安田講堂に侵入し「制止しようとした警備員がけがを負った」と発表しました。

こちらに関する報道状況については別記事にてまとめています↓


授業料引き上げに対する東大関係者の反応

学生による全学アンケートの実施

5/18から5/20にかけて、東京大学前期課程生を構成員とする「東京大学教養学部学生自治会(以下、自治会)」は授業料引き上げに関する簡易的な調査を行いました。

その後、自治会が5月下旬に行った学生アンケートでは、学部生・大学院生2297人の回答のうち「反対」が71%、「どちらかといえば反対」が20%という結果であったと公表されました。


五月祭での東大生によるデモ

5/19、第97回五月祭が開催されている東京大学本郷キャンパスにて、東大生有志による値上げ反対デモ「五月祭学費値上げ阻止緊急アクション」が行われました。

この有志組織は現在、「学費値上げ反対緊急アクション」に名を変えて活動を続けています。(6/3の毎日新聞の記事参照)


総長対話への要望と大学側の回答

5/21、自治会は「東大の授業料値上げに関する『総長対話』の在り方について要望書」を東大に提出するとともに、「授業料値上げに関する運動の一本化と拡大」を全学生に呼びかけました。内容はそれぞれ以下の通り。

「総長対話」について、①対面実施②徹底的な討議③学部交渉(教養学部と自治会の間で年に1回行われる直接交渉)形式での実施④学生の理解を得られるまで複数回の開催─を求めた。(中略)自治会は相互的対話の実現のため、対面形式で実施した上で、駒場と本郷での2回開催実施またはオンライン会議システムを利用した同時中継を要請している。

要望書に合わせ全学生に対して、「総長対話」に向けた自治会への連携、実施予定の全学一斉アンケートへの回答・広報を呼び掛けた。併せて自らの学部・大学院研究科を代表する自治団体が存在しない学生には、総長対話で学生代表による質問機会が確保された場合に備え、各学部・大学院研究科を代表する組織の新設・再建を求めた。


5/23、東京大学は「授業料値上げに関する『総長対話』を6月21日午後7時から1時間半開催することを学務システムUTAS上で発表」するとともに、自治会の要望書に対し「提示された四つの要望を全て否定」する回答を行いました。


全学集会の開催

5/23、東京大学文学部連絡会は他学部・研究科と自治会合を開催し、「東大の授業料値上げについての全学的な集会を、6月6日午後5時より法文2号館1番大教室で共催する」と決定しました。


6/6、東大本郷キャンパスにて「学費値上げに反対する全学緊急集会」が学生主催で開かれ、大学に対し「引き上げ案の撤回」「引き上げの根拠や詳細、経済的な支援策についての情報開示」「学生団体との交渉の場の設定」等を求める決議をとりました。


院内集会の開催

6/14、学費値上げ反対緊急アクションは衆議院議員会館で院内集会を開催し、「大学・大学院の授業料免除の拡充や、国立大学に国が支払う運営費交付金の増額を求める要望書」を文部科学省の担当者に提出しました。
同日、東京大学教養学部学生自治会ら学生有志団体は記者会見を開き、授業料値上げ反対を訴えました。


駒場決議案の採択と学生投票の実施

6/10、自治会は第148期自治委員会第2回会議にて「授業料値上げに関する駒場決議」案(駒場決議案)とその付帯決議案の採択を行い、賛成93反対12で可決されました。駒場決議案の内容は以下の通り。

①授業料値上げ検討の取りやめの要求
②学生に大きく関わる決定に学生が携わる権利の確認
③「総長対話」での対等な交渉の要求
④総長に対する継続的な交渉の要求

これに基づき、自治会は6/13から19にかけて前期教養課程生を対象にした学生投票を行っています。


東大生への取材記事


東大教員の反応

東大大学院教育学研究科の本田由紀教授、隠岐さや香教授、同人文社会系研究科の堀江宗正教授は、授業料の引き上げに対し懸念を表明しています。


授業料引き上げに対する学外からの反応

5/17、テレビ番組「羽鳥慎一モーニングショー」にて長嶋一茂氏や玉川徹氏が授業料引き上げ検討の報道についてコメントしています。


6/6のテレビ番組「News23」では、東京大学OBである伊沢拓司氏が授業料引き上げ検討の報道についてコメントしています。


6/7、全国の国立大学により組織される国立大学協会が声明を発表。各大学の財務状況は危機的で「もう限界です」と訴えるとともに、運営交付金の増額、そして中長期的な予算確保に向けた世論喚起のため、国民に対し「理解と共感、そして力強い協働」を求めました。

同日、国立大学協会の永田恭介会長は声明に関する記者会見にて、次のように述べました。

・「運営費交付金の増額を(国民に)後押ししてもらいたい」
・「理由を表明して値上げできる大学は値上げすればよい。国大協としてとやかく言うつもりはない。だが、中長期的には、学生と国が授業料をどのような割合で負担するのか、しっかりと議論する必要がある」


6/11、東京藝術大学の学生で芸人のカニササレアヤコ氏は自身のX(Twitter)にて、国立大の授業料値上げに対する私見を述べました。


6/11、千葉大学の横手幸太郎学長は今後の大学運営方針などに関する記者懇談会にて、国からの更なる支援が必要であると述べました。
千葉大学は東京大学に先立ち、省令で定める上限まで授業料を既に引き上げています。


6/11のラジオ番組「田畑竜介Grooooow Up」では、音楽プロデューサーの松尾潔氏が国立大学の授業料値上げに対する私見を述べています。


6/12のネットテレビ番組「ABEMAヒルズ」では、山田進太郎D&I財団COOの石倉秀明氏が国立大学の経営の在り方についてコメントしています。


6/21のテレビ番組「「日経ニュース プラス9」では、桜美林大学特任教授の小林雅之氏と株式会社ガクシーCEOの松原良輔氏が、高等教育の費用負担についてコメントしています


国立大学の授業料引き上げに関する論説

ここでは、5/15の報道以降に書かれたものを取り上げます。

東京大学の授業料引き上げ検討報道の他に、慶應義塾大学塾長が4月に行った「国立大授業料年150万円」の提言に対する反応も含まれています。


ネットテレビ番組「ABEMA Prime」では、授業料値上げ反対を表明している東大生ラッパー・法念氏をゲストに迎え、学費値上げに関する議論が行われました。


他大学での授業料引き上げ検討

値上げを検討中・検討予定の大学

5/24、中国新聞は広島大学の授業料について、大学側が2年以上前から引き上げを検討しており現在も調整中であると報じました。


6/5、熊本県民テレビは、熊本大学が早ければ来年度以降に授業料引き上げの検討を行う可能性があると報じました。


値上げを検討していない・検討予定でない大学

6/1、京都大学は京大新聞の取材に対し、現時点で授業料値上げに関する議論は行っていないと回答しました。


6/12の国立大学協会の定例総会にて、東北大の冨永悌二総長、名古屋大の杉山直総長、北海道大の宝金清博総長はそれぞれ、自身の大学における授業料値上げは検討していないと回答しました。
同総会では、京都大の湊長博総長も授業料値上げを検討していない旨を改めて回答しています。


6/16の中日新聞では、国立大学連携組織「C2-FRONTS」に参加する岐阜大学・名古屋大学・愛知教育大学・名古屋工業大学・豊橋技術科学大学・三重大学・信州大学が同紙の取材に対し、授業料の値上げは現時点で検討していないと回答したと報じられています。


6/23の朝日新聞では、東大を除く旧帝大6大学(北海道、東北、名古屋、京都、大阪、九州)は同紙の取材に対し、授業料値上げの具体的な検討を行っていないと回答したと報じられています。

このうち、九州大学の石橋達朗総長は5月下旬の会見にて以下のように述べています。

・大学はいま非常に苦しい状況。電気代や実験道具の値上げ、人件費上昇などがあり、授業料値上げも考慮に入れなければならない
・本来なら、こうした大学運営の厳しさに対しては国が運営交付金を引き上げるなどの方法で対応しなければならない
・それなのに授業料で、というのは問題。本当にそれでいいのかという議論をもっとしなければならない


関連サイト

東大新聞オンライン特設ページ


東京大学教養学部学生自治会特設ページ


全国大学院生協議会

東京大学に先立ち2020年に授業料引き上げを行った一橋大学で行われた、一連の値上げ反対運動について記録されています。


『黒の巨塔』 – 時代錯誤社

時代錯誤社による、東京大学現総長・藤井輝夫氏の総長選考を巡るスキャンダルを取りまとめた記事です。


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