見出し画像

佐藤大史写真集『Belong』

安曇野市在住、佐藤大史さん初の写真集『Belong』(信濃毎日新聞社発行)。
強く美しいアラスカの風景を最大限に引き出しました。

思いをかたちにするために

今回の写真集は約100ページで構成されています。1ページに1つの写真とすると約100枚の写真が使われていることになりますが、カメラやパソコンなどの画面ではそのままで十分美しい写真たちも、紙の上にきれいに印刷するためには1枚1枚“補正”という作業が必要不可欠です。

“補正”といっても、余分なものを消したり、肌をきれいに加工したりするのとはちょっと違います。これをお読みいただいている方の中でも写真データをそのまま紙に印刷したことがある方は分かるかと思うのですが、使う紙の質や色味によって、印刷したものと画面で見た時とではイメージが異なることって、ありませんか?

例えば・・・ザラザラとした手触りの紙であればインクが沈みやすく思ったより落ち着いた仕上がりになったり、黄みがかった紙であれば写真も全体的に黄みがかって見える、など。もちろんそれがいい味を出す場合もあり、あえて選ぶ方もたくさんいらっしゃいますが、私たちが大切にしているのは、お客様がどんな仕上がりを目指しているのかということ。それをしっかりと把握した上で、紙質や印刷環境を考慮して色の濃淡や彩度などを何度も調整していくのが“補正”なのです。

イメージの擦り合わせ

仕上がりを左右する重要な打ち合わせの日。まず出版社、著者、アートディレクターが写真集をどのように見せたいか、どのように表現したいかなどの軸を決め、起承転結をつくりながらページの構成を考えていきます。

営業スタッフとプリンティングディレクターはそのイメージに合った補正・印刷ができるよう、表現したい色以外にも、ひとつひとつの写真にこめられた思いまで漏らすことなく伺います。単語1つとっても人によって捉えるイメージが違うことがあるため、ズレのないよう丸1日かけて擦り合わせた上で補正をおこなっていきました。もちろん(ページが)隣り合う写真のテンションがチグハグにならないようにも細心の注意を払います。

そこから本機校正(※本番と同じ紙・印刷機で刷って確かめること)を経て、迎えた印刷立ち会いの日、また同じメンバーで集まって刷り具合を確認していきます。答え合わせのようにひとつひとつチェックしていただく瞬間はとても緊張しますが、OKをいただけた時はほっと一安心。

打ち合わせの内容を軸に、製作スタッフそれぞれが違う動きをしながら1つの作品を作り上げたのだと思うと感動がより大きなものに感じられますよね。

完成

画像3

画像2

画像3

並製本でも「PUR」という柔らかくて丈夫なノリを使用して綴じているため、見開きページも中央までしっかりと開くことができます。

画像4

カバーを外したときの表紙は白黒に見えますが、ただの黒インキを使っているわけではありません。その証拠に、黒い部分にもしっかりと陰影を感じます。黒は黒でも、DIC-F200ノアールという、フランスの伝統色を使用しているのもこだわりの1つなのです。

『Belong』は、高品質できれいな写真集ということだけでなく、緩急がついたページ構成によって自然の厳しさや、ほっこりとする場面などドラマチックに楽しんでいただけるような内容になっています。写真に加え、佐藤大史さんによる力強くあたたかいメッセージにも注目です。

普段目にすることのできない迫力のある風景を、ぜひ実際に手に取ってご覧くださいませ。

写真集『Belong』 仕様

定価:2,600円+税
ページ数:104
仕上サイズ:A4横特判(天地210×左右282mm)
製本方法:並製本(PUR)
カバー・帯:アルティマックス 菊判/Y目<80.5kg>
(刷色:表→4C)
表紙:サンカード 菊判/T目<15.5kg>
(刷色:表→UV特色1C(DIC-F200ノアール))
本文:アルティマックス  A判/T目<60.5kg>
(刷色:4C、スミ )
見返し:タント(S-7)  四六判/Y目<100kg>
(刷色:表→スミ)

製作スタッフ

著者:佐藤大史
アートディレクター:三村漢(niwanoniwaデザイン事務所)
プリンティングディレクター:鈴木利行(tm&Company)
編集:山崎紀子(信濃毎日新聞社)
印刷・製本:藤原印刷
発行:信濃毎日新聞社

信濃毎日新聞社発行の本 ネットショップ

https://shinmai-books.com/

▽『Belong』購入ページ
https://shinmai-books.com/item-detail/457718

(竹村奈々)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?