自分の性質はキャラの集合体、と考えてみた

先月、三週間ほどタイ・ミャンマーへと旅に出た。
今年は２月、４月、５月、７月と、新作の脚本・演出が立て続き、
「もう何にも新しいアイディアが浮かばん！」となってしまったので、
充電のための旅だった。

https://note.mu/fujiwara3/n/n6d6db71688d4

海外へ行くのは、大学時代に友人に会いにNYに遊び行った以来なので、１０年以上ぶり。
わたしは昔から「◯◯せねば」という思考が強く、気がつくと、仕事も遊びも衣食住さえもすべての行動が「◯◯せねば」に支配されてしまっていることに気がついた。始まりは、面白いもの作りたい、とか、「◯◯したい」という衝動から始まっていたはずなのに、気づくと日々の行動はTO DOに追われている。「◯◯せねば」。ねばねばねばねば、ねばねば思考がへばりついて取れない現状が嫌になり、日本を離れてみて、自分のそういう思考の癖から距離を置いてみたかった。

しかし、タイに行っても、ミャンマーに行っても、「◯◯せねば」の頭は、全く休んでくれなかった。あほみたいな話だが、今度は「ちゃんと休まねば」という思考が頭を支配していた。（そう考えている時点で全然休めていない。）
日本人とはほとんど会わなかったし、タイ語もミャンマー語も全く分からず、英語もあまり通じないことが多かったので、異国ではっきりと理解できる日本語が聞こえてくるのは、自分の頭の中だけ。
環境を変えさえすれば「ねばねば」思考は薄まるもの、もっといえば消えてくれるんじゃないかと淡い期待を抱いていたのだけど、消そうと思えば思うほど、「ねばねば」のこだまは大きくなり、日本にいるときよりも存在感が増していた。

わざわざ海外にまで来て、数週間経つのに、どうにも思考は変化する気配はない。そうして、諦めることにした。
これはもう、今の自分にへばりついた、one of themのキャラだ、と思うにことにしたのだ。
ねばねば思考のキャラの他にも、せっかちなキャラ、飽き性なキャラ、とっ散らかるキャラ、神経質なキャラ、臆病なキャラ、いろんなキャラがいる、だいたい列挙したやつは自分の中でわたしが嫌いなキャラ達だ。

キャラを減らせないなら、増やしたみたらどうだろう？と思いつき、
自分の中に、のんびりおじさんというキャラを追加してみた。

「あーこれ、◯◯しなきゃ」
ねばねば思考氏が出てきたとき、サッとのんびりおじさんを召喚してみる。

「まあまあ、焦らずサー　のんびりいこうサー　なんくるないさー」
もちろん、出で立ちはハイビスカスのシャツ、小脇に三線、である。

すると、ねばねば思考氏の強迫観念が、のんびりおじさんの三線の響きに相殺されていった。

あほみたいに思えるかもしれないが、こののんびりおじさんキャラ追加作戦は、思った以上の効果があった。
おじさんが追加されてから、まず、待ち合わせ時間に遅れることが激減した。いつも家を出る前に焦って準備するところを、のんびりしているはずなのに、遅刻しないのだ。
思い返してみると、焦って準備しているせいで持っていくべきものを忘れたり、待ち合わせに行くまでにやらなくていい用事を何故か済ませようとしたり、やらんでもいいことをやっているのが原因で遅れていたのだと思う。

また、のんびりおじさん加入後、人と衝突することもかなり減った。それは、イライラしなくなったのではなく、短気なので一旦イライラするのだけど、短気キャラをそばで見ているのんびりおじさんが「まあまあ、歌って踊ろうサ〜」と声をかけてくれるのだ。三線弾きながら。島人ぬ宝である。

このポイントは、自分は、自分という一人の要素でできているのではなく、何十人かのキャラの集合体だ、という考え方だ。
この考え方は、わたしを随分生きやすくしてくれた。
何か失敗しても、自分一人の責任ではなく、自分A、自分B、自分C、自分D……の集合、自分というチームの責任だ、と思うと、
まあ、みんなで協力して頑張っていこうや、という気持ちになれる。

今は目下新入りののんびりおじさんが活躍中だけども、また新しいキャラが必要になったら、随時メンバーに入れていこうと思う。