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未来を信じているからこそ/奥伊吹②

もがいていた学生時代。
しかし、けっして諦めることなく、
ほんのわずかでもいいから今日の自分を越え、
明日の成長を信じて、前に進もうとし続ける。
それが夢の扉を開かせるパワーになるのです。

富士通レッドウェーブのスモールフォワード、
奥伊吹選手(コートネーム:イブ)は
今を越え、未来を信じて、
太陽のような笑顔を湛えて、コートに立っています。

実はレッドウェーブのファンでした

大阪薫英女学院から松蔭大学に進学したのは、
異なる環境に身を置き成長するため、そして親友や先輩の存在が大きな理由としてあげられます。
しかし、実はもうひとつ、奥選手がひそかに考えていたことがありました。
「神奈川の大学に行けば、レッドウェーブとのつながりもできるんじゃないか。そういう思いもあって、大学4年間頑張れたんです」

奈良県で生まれ育ち。
京都、大阪で育成期を過ごしましたが、
小学生のころから町田瑠唯選手(コートネーム:ルイ)のファンだったと認めます。
「小学6年生のときに、ルイさんがいた札幌山の手高校のウインターカップをずっと見ていて、ルイさんはどこのチームに行くんだろう? と注目していたんです。そうしたらレッドウェーブだったので、今度はレッドウェーブの試合を観るようになって、レッドウェーブのファンになりました。」
だから実際にレッドウェーブからオファーが来たときは、
他チームからのオファーがあったにもかかわらず、
二つ返事で「行きます!」と答えたそうです。

今シーズンこそ、プレータイム獲得へ

苦悩を乗り越えて、努力とともに夢の扉を開いたわけですが、
その先にある次の扉は、これまでとは比べものにならないほど、分厚い壁でした。
むろん、誰もがすぐにゲームに出られるほど、
Wリーグは甘い世界ではありません。
奥選手も
1年目は20試合中5試合、
2年目は26試合中13試合
しか、ゲームに出られていません(アーリーエントリーを除く)。
しかもそれぞれ
7分42秒
38分49秒
の出場時間です。
1試合平均ではありません。
総出場時間です。

プレータイムがそれほど与えられていない選手と言えるでしょう。
それは本人も認めるところです。
「常に悔しいという思いはありますが、まだまだみんなのレベルに達してないというか、自分がもっと成長しなきゃ出られないんだという反省はありました」
学生時代は本能的に、かつ自らが得意とするフィジカルの強さを生かすことで通用していました。
しかしWリーグは、それだけでは足りません。
むしろ本能でプレーをしても、さらに鍛えられたフィジカルと、知識や経験といった、目では見えないものの差によって、簡単に封じられてしまいます。
あるいは、かわされてしまいます。


それについての努力をしなかったわけではありません。
努力の大切さは、高校時代の恩師からの言葉からも理解しています。
レッドウェーブの先輩たちのそれも目の当たりにしています。
だからこそ自分も、とは思うのですが、なかなか実を結ばず、悶々とする日々が続いていたのです。
ただ、3年目の今シーズンは、これまでとは異なる手応えを感じています。
「今年のサマーキャンプが全然駄目だったんです。シュートは決めたけど、ディフェンスでミスをしたり、昨年と同じようなことをサマーキャンプでもやってしまって……。それを見たルイさんが『プラスを伸ばすんじゃなくて、マイナスを伸ばす練習をしたほうがいいと思うよ』という話をしてくれたんです。私のマイナスと言えばディフェンスなので、今は日下光アシスタントコーチにお願いして、午後の練習前に個別でディフェンスの練習をしています。その成果か、少しずつディフェンスで予測をしたり、判断することなどもでき始めているように感じています」

周囲と未来に支えられた心からの笑顔

これまでの2年間、そして3年目のプレシーズンも苦境に立たされています。
しかし奥選手の笑顔が絶えることはありません。
悔しい思いはありますが、それを表に出すことなく笑顔でいられるのは、
逆説的に言えば、バスケットで苦しんでいるからです。
大好きなバスケットで苦しんでいるからこそ、
その先の成長した自分に胸を膨らませているのです。
つまりは未来に引っ張られているとも言えます。
未来の自分を思い描くからこそ、笑顔でいられるのです。

「本当に今楽しいんですよ。悔しい思いもありますが、自分がうまくいかないときに、先輩方はたくさん声をかけてくださるし、同期は試合に出ていて頼もしいし、後輩たちもかわいい。中学のときがしんどかった分、高校以降に出会う人たち、レッドウェーブだけじゃなくて、会社の人やファンの人たちもそうなんですけど、本当に周りの人に恵まれているなと思います。素敵な人がたくさんいるおかげで、悔しさを人前で出さないことを心がけているというわけではなくて、心から暗い顔にならないんです」

心の底から自然と湧き出る笑顔だからこそ、奥選手のそれは多くの人を惹きつけるのでしょう。

いつか奈良に最高の笑顔を届けられるよう

とはいえ、奥選手もまた勝負の世界に住むアスリートです。
いつまでもベンチに甘んじることをよしとはしていません。
どこかで必ずヘッドコーチの信頼を勝ち取り、
コートに立ちたいという思いは強く持っています。
今の彼女を支えているのは、目標とする元選手の存在です。
「ずっと目標としているのはシィさん(篠崎澪さん)です。いつかシィさんみたいになりたいとずっと思っています。本当に努力家でしたし、チームを安心させてくれる存在でした。プレーだけではなく人間性も本当に素敵な女性で、後輩からも慕われていて、、、私にとってのシィさんみたいに、『この人と一緒にプレーできてよかった』と思ってもらえるような選手になりたいです。プレーだけではなく、人としても成長していきたいなと思っています」

そう言いながら、「いや、ちょっと待ってください……難しいな……」と言葉を探り始め、こう続けます。
「ルイさんと一緒に試合に出たいという気持ちもあるし、ずっと支えてくれた親にも試合に出ているところを見せたいし……今の私を頑張ろうと思わせてくれるものはたくさんありますね」
笑顔でそう語る奥選手を見ていると、つい
「じゃ、今シーズンはないけど、来シーズンあたり、奈良でレギュラーシーズンの試合ができるといいですね」
と向けたくなります。
それを聞いて、そうか、といった驚いた表情を見せると、
「したい! めちゃめちゃしたい! ええ、奈良に行きたいです……よし、頑張ろう!」
そして、またも心から湧き出る笑顔。

「今まで悔しい思いをした分、自分のなかで今シーズンに懸ける思いはあるので、これまでコツコツ頑張ってきたことをしっかり生かしていけるように頑張っていきたいです。ファンのみなさんにも試合に出ているところ、活躍しているところを見ていただきたいので、チャンスをしっかりと掴んで、今年こそはプレータイムを得られるように頑張ります。応援よろしくお願いします!」
そして、こう繋ぎます。
「今、何かつらいことのある人もいると思うんですけど一緒に頑張りましょうね」

かつての大雨を、さまざまな人との出会いで脱し、
自らの笑顔を太陽のようにして、周りを明るく照らす奥選手。
彼女の努力は、今の彼女を覆っている雲さえも、きっと突き抜けて、
コート上にその光を差し込ませることだろう。





#12 SF 奥伊吹 Ibuki Oku



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