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誰かの代わりではなく、私は私らしく/田中真美子

学生時代にさまざまな経験をした田中真美子選手(コートネーム:マナ)。
それはバスケットの経験という意味だけではありません。
さまざまな考え方を持つ人たちと出会い、
彼女たちの考え方を通じて自分の生き方を見出していく。
そうして田中真美子という人間を形成していく経験も重ねてきたのです。

感謝を込めてレッドウェーブへ

富士通レッドウェーブに入団するときも、
けっして即断したわけではありません。
高校時代から憧れていた根岸夢さんや、
同じく早稲田大学の先輩である桂葵さんは、
自らの意志でWリーグへの道を断ち、
Wリーグに進むことだけが女子バスケットの道ではないことを示してくれました。

根岸さんも桂さんも学生時代に名を馳せたプレーヤーです。
そんな2人は今もバスケットに関わりながら、
自らの人生を自らの足で立ち、歩んでいます。
そんな先輩たちの考え方に触れていたからこそ、
田中選手もレッドウェーブからのオファーを即断しませんでした。


熟考に熟考を重ね、そのうえで
「誰もが挑戦できる舞台ではないと思ったし、
私がその場に立てるのはいろんな人が支えてくれたからです。
そうした人たちへ感謝の気持ちを持って、
挑戦できるのであれば挑戦したいと思って入団を決めました」

苦悩の3年間……でもまだやれる努力はある

しかし入団直後の3シーズンは苦悩の連続だったと明かします。
「レッドウェーブの一員としてWリーグで戦うためには、
3ポイントシュートを打てなければいけなくて、
もうポストプレーをやってはいけない、みたいな感覚をずっと持っていました。
今までやってきたことはもう通用しないんだぞ、みたいに思っていたんです」

レッドウェーブのチームスタイルを考えると、
田中選手がそう思ってしまうのもわからなくありません。
しかし一方でポストプレーを絶対にやってはいけないというわけでもなく、
ましてや、それまでの田中選手のプレーを否定するものでもありません。
学生時代に得た「チームとともに、チームのために」という思いが、
逆に田中選手を思い悩ませていたのです。

やや長い言葉になりますが、あえて、当時の田中選手の思いを全文記しましょう。
「周りはもうみんなすごい選手ばかりで、言われたことをできることが当たり前のレベルなんです。だから、できないのは自分だけで、本当にWリーグはレベルが違ったんだなってずっと思いながら、プレーしていました。どんどんどんどん自信もなくなってくるし、今まで得意だったシュートも入らなくなるし……。すべてがマイナスに向いて、シュート1本外すだけでも気持ちが下がっていました。今思い返すと、どうしてそんなにマイナスに考えていたんだろうって思えるんですけど、これまでの3年間はそれくらい思い詰めていて……練習中の1本のシュートにさえ思い詰めていました」

苦悩の3年間を思い返して、目に涙を浮かべる田中選手。
勝負の世界では「弱い選手」という見られ方をするのかもしれません。
しかし、田中選手は自らの弱い部分を認めたうえで、
それに打ち勝とうと今もコートに立ち続けています。
昔とは異なりWリーグも移籍がしやすい環境になりましたし、
極論を言えば、引退だってできたはずです。
それでも、それらを選択しなかったのは
「心の奥底ではすごく負けず嫌いなんです」
と言う、田中選手の強さです。


「私は本当に負けず嫌いだから、やはりまだ自分に納得できていないんです。
結果として、求められたことができなかったにしろ、
できなかったところまでのプロセスに納得できていないところがあります。
ここまでやったけど駄目だったと思えたら、辞める決断もできたと思うのですが、
まだちょっとやれるんじゃないか、
まだできる努力があるんじゃないかって思っているんです」

結果がすべての勝負の世界において、
自らを結果だけで見ずに
結果に至るまでのプロセスで自らを信じる田中選手。
そこに彼女のプライドを感じるとともに、
彼女がレッドウェーブに欠かせないパワーフォワードだと確信を持てます。

さらなる飛躍へ

入団4年目の今シーズンは開幕当初こそベンチスタートでしたが、
ケガ人が続いたこともあって、
12月24日から年が明けた1月22日のゲームまで、
スタメンとしてコートに立っています。

その間、試合中に涙を流すこともありました。
しかし皇后杯のセミファイナルで敗れたとき、
田中選手はこうコメントしています。
「誰かの代わりではなく、自分の強みを発揮することでチームの勝利に貢献したいです」
自ら発したこの言葉で彼女は目を覚まします。


「それを言ってからすごく気持ちが楽になって、バスケットができるようになりました。
それまでは、どうしてもケガをした選手の代わりという捉え方をしていて、
それがまた自信をなくす要因になっていました。
でもそうじゃないって思えてからは、
本当に楽しくバスケットができるようになってきたんです」

そう言って浮かべた笑顔は、
ファンの人たちが見たいと思っている田中選手の笑顔です。

リーグ戦が再開すれば、ケガを負っていた選手たちも復帰してくるでしょう。
もしかすると再びベンチスタートに戻るかもしれません。
それでもスタメン起用されていた日々につかんだ自信が失われることはないと言います。
「ケガ人が戻ってきても、頼りすぎないようにして、私らしくプレーするだけです。
そして私が今まで経験してきたことを生かして、
やっぱりチームの勝利に貢献したいなって思いますね」

原点を見つめ直し、楽しむ心を取り戻した今、
田中選手はさらなる飛躍のときを迎えるでしょう。
「少し前の試合中に泣いちゃったとき、セイ(#3岡田英里)が爆笑してきたんです。
『何、泣いてんの~』って(笑)。
それで私も笑うことができたし、
今も本当にチームメイトに助けられています」

涙を流しながらも自分を取り戻したマナの笑顔は、強い――。





#14 PF 田中真美子 Mamiko Tanaka


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