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「雨降って地固まる」バスケット人生/奥伊吹①

人生には晴れの日もあれば、雨の日もあります。
その雨が連日続くこともあります。
鬱陶しい……。
そう思うこともありますが、
世界中を見回しても、これまでにやまなかった雨はありません。
いかにその雨を凌いで、青空を待つか。
青空が広がれば、濡れていたはずの地も固まっていきます。
あとはその大地を踏み込んで、青空に向けて思いきり羽ばたくだけ。

富士通レッドウェーブのスモールフォワード、
奥伊吹選手(コートネーム:イブ)もまた、
長い雨の日々を過ごした経験があります。
ただし彼女の心はある思いで覆われ、
その雨が侵食することを許しませんでした。
その思いとは

「バスケットをやっていると楽しいんですよね」

つらい日々を乗り越える強さを得た中学時代

バスケットを始めたのは小学2年生のとき。
隣人がコーチだったというのがきっかけですが、
チームは奈良県内でも強豪チームで、
6年生のときは全国大会の出場権も得ています。
しかし東日本大震災の影響で中止に。

中学は京都精華女子中学(現在の京都精華学園中学)に進みます。
同校は今年度の全国中学バスケットボール大会、いわゆる「全中」を制した強豪校です。
奥選手が通っていたときも、全中でベスト8に入っていますから、
当時から強豪校だったと言えるでしょう。

しかし、だからといって、すべてが晴天というわけではありません。
むしろそこでの日々は、雨が続く梅雨のような日々でした。
1年目は奈良から通っていたそうですが、
「通うことが大変で、人生で一番っていうくらいガリガリに痩せてしまって……」
見かねたお母さんが、ともに京都に住むことになりました。
思春期でありながら、「親に話すことは何の抵抗もなかった」こともあり、
学校生活を語ることで、溜まっていたガスをうまく抜いていたのです。
むろんそれだけではありません。
「つらいこともあったけど、バスケットをやっているときは本当に楽しかったんです」
コートではすべてを忘れて、1つのボール、1つのゴールに集中できる。
土砂降りのなかでも確かな光明を見出していたのです。
そして今、こう言います。
「中学時代は確かに大変でしたが、、でもそれがあったからバスケットを頑張ろうと思えたし、つらいことがあっても乗り越えられるようになったんです」



雨の中でも諦めることなく、頑張ってきたからこそ

子どもから大人への入り口ともいうべき中学時代。
バスケットを頑張っていた理由は、ただ楽しいというだけでなく、
「誰かに見つけてほしい」
という思いもあったと認めます。
そして、その思いは驚くほどに通じるのです。

奥選手を見つけたのは大阪薫英女学院高校の前コーチ、故・長渡俊一さん。
「たまたま長渡先生が、中学最後の近畿ブロック大会で私がよいパフォーマンスをした試合を見てくださっていたんです」
とはいえ、面識があるわけではありません。
意を決したお父さんが学校に電話をかけると、長渡さんからこう返ってきたと言います。
「ぜひ練習を見にきてください。娘さん(=奥選手)のことは近畿大会で見ていたし、どんな選手かもわかっていますから」
大阪薫英女学院の扉が開いた瞬間です。
でもそれは長く続いた雨のなかで、奥選手がけっして腐ることなく、また諦めることもなく、
バスケットに真摯に取り組んできた成果と言えるでしょう。

結果として、長渡さんは奥選手が入学する直前に急逝してしまい、
その教えを直接受けることはできませんでした。
しかし2年目に現在のコーチである安藤香織コーチが赴任してきます。
雲の切れ間から強烈な光が差し込んできたのです。

努力の大切さを知り、さらなる成長へ

安藤コーチについて、奥選手はこう話します。
「本当に怖かったんです。人生でこの人以上に怖い人には二度と会わないんじゃないかっていうくらい怖かった。でも大阪の女性らしく、めちゃくちゃ面白かったです。私もよく面白おかしくいじられていました。(笑)だから大好きなんです。今でも大好き。バスケットのことについても、本当に尊敬できる先生です」
この人ならついていける。
そう感じたコーチに、奥選手はさらに努力の大切さを教わります。

「高2の終わりごろ、新チームになって最初の遠征だったかな。ミーティングで『1.01の法則』という話をしてくださったんです。今も好きな言葉で、チームのホームページにも載っていますが、、毎日1.01……つまり1より0.1頑張る人は、それを365日続けたら365よりも大きい数字になるけど、0.99で1よりもちょっとサボっている人は365にも達しないんだよ、という話です。それを聞いてから、毎日ちょっとでも自分の限界を超えるぐらい努力を積み重ねていけば、うまくなれると信じてやってきました」

それまでは、中学時代を含めて、朝練なども主体的にやっていなかったし、
むしろ「努力が何か」も考えていなかったと言います。
しかしその話を聞いて以来、朝練も主体的に取り組むようになったと言います。

同級生の金田愛奈選手(シャンソン化粧品シャンソンⅤマジック)と、「朝練のときに、どちらが先に体育館に行くか……同じ寮で暮らしていたので、どのルートを通れば、先に体育館につけるかということさえ、競い合っていたんです(笑)」。
傍から見れば他愛もない、バスケットに直接関係ないことでも、
奥選手はチームメイトとともに努力することを楽しんでいました。
その結果が3年生のときのウインターカップでベスト4と結実します。



大学は松蔭大学に進みます。
切磋琢磨を続けていた金田選手が大阪人間科学大学に進み、
「関西の大会で新人王を獲る」と公言するのを聞いて、
奥選手はひそかに「愛奈が関西なら、私は関東で新人王を獲る」と決意。
また「ずっと同じ環境ではなく、違う環境に身を置くことで成長ができるのではないか」という持論もあり、
さらには、一緒にプレーしたいと思っていた高校の先輩が進学していたこともあって、松蔭大学を選びました。
金田選手は公言どおり、関西地区で新人王を獲得、
奥選手も関東地区で新人王を獲得しました。
「これまでつらいことはたくさんありましたが、うれしいこともありました。そのうれしいことのために、必死にもがいていた学生時代だったなって、今は思います」


#12 SF 奥伊吹 Ibuki Oku



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