見出し画像

リサーチの専門家に聞く、生成AIが意外と検索に活用できない理由と、活用方法

こんにちは、富士通 広報note編集部です。

皆さま、普段どのくらい生成AIを使っていますか?
生成AIが話題になってから1年以上が過ぎ、生成AIが日々の業務において欠かせないバディになっている方も多いのではないでしょうか。
私自身も生成AIは普段の業務でかなり活用しているのですが、生成AIを使った「検索」に関しては、期待していたほど上手くいっていないという印象があります。

生成AIは万能!と思われがちですが、苦手なことや、現時点では意外と役に立たない分野もあるのかもしれません。
ある調査会社から2024年4月に発信されたプレスリリースでは、生成AIの活用には慎重なアプローチが必要であることが指摘され、そのアウトプットの信頼性や倫理性を含め、第三者の視点で評価する必要があるということが強調されています。

この点を踏まえても、生成AIはもしかしたら、そもそも検索が苦手なのではないかと疑問が沸いてきます。

そこで、今回は富士通グループのコンサルティング会社であるRidgelinez株式会社で、リサーチを専門に行っているリサーチセンターの菊地に
・生成AIはなぜ検索が苦手なのか?
・検索に役立てるためにはどのようにすれば良いのか?
を聞いてみます!

プロフィール

生成AIは検索が苦手?なぜ?

残念ですが、結論から言えば検索の部分では、生成AIはあまり役に立たないというのが私の考えです。なぜかというと、現時点では検索の目的と生成AIが可能なことの間にギャップがあるからです。

皆さんが普段検索をするのは、ブラウザを通じてのネット検索だと想像します。この場合、検索対象のネット空間は、現状、生成AIが正しく情報を引き出し、答えを導き出すために必要な「構造」にはなっておらず、また、引き出す情報についても様々な形式のデータ(不定形)の寄せ集めの状態となっています。そのため、特殊な制限をせずに生成AIを使って検索するということは、その不定形の情報をAIが関連の強さなどを基準に情報を評価して、整合性や論理性、論理性を見ながら回答してくる、というのが私の理解している生成AIによる検索の大雑把な仕組みです。

この時の情報の評価基準である「関連性」「整合性」「論理性」といった部分は、生成AIが学習している内容により判断されるのですが、どのようなアウトプットになるかは一意に決定されないという状況になりますし、またその正確なメカニズムも「よくわからない」というブラックボックス化しています。これが、生成AIで同じ文言や条件で検索しても、毎回異なる結果が返ってくる理由です。

検索目的と生成AIの限界

そもそも、皆さんが「検索」をする目的は何でしょうか?
恐らく情報収集と答える方が多いかと思います。もちろん、情報収集といっても様々な種類がありますが、一般的には「事実確認」や「条件検索による事例収集」が多いのではないでしょうか。
「事実確認」は言葉の通りで、「これって正しかったっけ?」というのを確認するために、信用のある出所の情報を探して確認するという作業です。

一方、「条件検索による事例収集」は、一定の条件に合う事物・事象を検索するというもの。これも業務で日常的に行っている人は多いでしょう。自分が設定する調査範囲(スコープ)の中で、仮説に基づいてロジックを構築して定義を固め、検索のキーワードを駆使して情報を収集していく作業です。

さて、果たしてこれらの作業において生成AIは期待通りの効果を発揮してくれるのでしょうか?

この部分に関してはNOというのが私の意見です。

前述の通り生成AIの特性上、検索のたびに違う答えが返ってくるとなるなど、検索者は正しい答えに到達しているのかどうか確証が持てず、結局旧来の検索方法で再確認という二度手間が生じ、業務効率化の点で効果的な活用は望めません。
また、最近改善が進んでいるものの、ウソをアウトプットしてしまうという問題(ハルシネーション)も完全に解決されたわけではなく、信頼性という点でも課題が残ります。

つまり、生成AIには私たちが望むような厳密で正確な回答を求める「検索」は難しく、ニーズとシーズにギャップが生じます。
どちらかというと生成AIは、より柔軟で創意に富んだ作業を得意としており、いわゆる壁打ち・アイディア出しや、見落としているような事象の発見や、人間が考え付かないような組み合わせを生み出すことを目的とした使い方の方が適当と言えます。

その点を考えると、生成AIに自分にはなかった切り口の検索条件を提示してもらい、サーチエンジンで検索することで、より洗練された結果が得られるということはあると思います。また、生成AIでの検索はSearch Engine Optimization(SEO)の影響を受けないというのも良い点で、バイアスなく情報を得ることができます。

生成AIは検索キーワードを導き出すために活用

従来のネットサーチでも、曖昧な定義やスコープでは、生成AIでの検索と大差ない「緩い」結果になります。生成AIが得意とする「良き壁打ち相手」や「アイディア出しのツール」として、検索の前段階(目指す検索結果の定義やスコープを絞る作業)に生成AIを活用し、求める結論を導くためのキーワードを絞って、サーチエンジンで検索するというのが現時点でベストな生成AIの検索への活用かと思います。

事実を基にした仮説の構築と証明や事例収集によるベンチマークを使った評価などが重要な活動であるビジネスパーソンにとっては、正確で一貫性のあるアウトプットの確保こそが最優先です。

そのため、現時点では検索そのものに対して直接大きな貢献はしませんが、将来的に、生成AIがアウトプットで正確性や一貫性に基づく信頼性を獲得して行ったとしたら、「検索」の部分での貢献も大きく変わる可能性はあります。

曖昧な質問に対しても、統計的に最も確率の高い回答で、尚且つ個人の嗜好や過去の問いを考慮して—-という事が実現すると、やがて曖昧な質問から正確なスコープや定義を導き出せるようになるかもしれません。現在の物凄いスピードでの進歩が続き、あっという間にその時が来るのか、逆に意外とその部分はあまり改善しないのか、今後も要注目であると考えています。
皆さんはどの様に考えますか?

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

富士通 広報noteについてメディア取材ご希望の方は以下よりご連絡ください。 ご利用環境により、以下ボタンが反応しない場合は、<fj-prir-note@dl.jp.fujitsu.com>をご利用ください。