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怖いよアニメ版Apple Music/ジョナサン・ヒックマンのG.O.D.S.を読もう

Apple Musicのジャケ写が動く話

 プロのキュレーションが手厚いApple Music、一般ユーザーのプレイリスト文化が成熟しているSpotify。どちらも音楽好きとしてはたいへん魅力的で、片方でしか配信してない曲もちょくちょくあるから、どっちかといえばSpotifyに軸足を置きつつ、完全に一本に絞りきれないままズルズル使い続けて早数年。まあ系統の近い音楽雑誌を2誌購読しているようなもんだし、こっちは実際に聴けるわけだしね……とのんびり構えてたんだけど、定期的にappの動作が激重になるSpotifyのこの夏の症状がなかなかヘビーで、必然Apple Musicの出動が増え、そこをきっかけに両者を本格的に併用するように。

前のめりに聴くのだ!

 厳密に決めてるわけではないが、Spotifyでは長尺のプレイリストでシーンやアーティストごとにおおづかみに追いかけ、特に気に入ったものはAppleでアルバムを通して聴く、みたいなイメージ。同じような再生履歴を辿っても、SpotifyとApple Musicで薦めるものは微妙に変わってくるので、そこを漏らさずチェックしていきたい。広く浅く追いかけるタチなので、各アルゴリズムには常に自分の好みの半歩先の選曲をお願いしたいし、こちらはこちらで諸君の裏をかくような聴取を心がけます。今後ともよろしく。

 さて、先日のiOS / iPad OSのアップデートで、Apple Musicでは一部アルバムのジャケットアートにアニメーション処理が施されるようになった。それ自体はまあ愉快でいいんだけど、最近出た新譜だけかと思いきや、過去の名盤のジャケットもグニャグニャと動き出していて、便利で快適な音楽サブスクが一転、深夜の音楽室めいた戦慄空間と化している。
 アルバムを半分ほど聴いたところで、チャイルディッシュ・ガンビーノ『“Awaken, My Love!”』のジャケがユラユラと動いていることに気付いたときのぼくの震え上がりぶりを想像してほしい!

 見慣れたもの、動くなんて夢にも思ってないものがいきなりカタカタ動いたら怖いに決まってる。60-70年代の英国ロックアルバムなんか、まるでモンティ・パイソンのオープニングのよう。ツェッペリンリボルバーも、リバティ・ベルがよく似合う。

 どの旧譜がアニメーションジャケットになってるのかよくわからないので、みんなで順繰りに一枚ずつアルバムを選んでいってジャケが動いた人はアウトの『名盤だるまさんがころんだ』という遊びができそう。
 気になって色々覗いてみた。

 モトリー・クルーは非常に協力的で、1stから『Dr.Feelgood』までの5作品が派手にグリグリ動く。キラキラ光るデフ・レパード『Hysteria』は、レアシールを引き当てたような気持ちになれてうれしい。

 ウィーザーのグリーンアルバムが最初ユラユラ…からいきなりススス、と動きだしたのは笑っちゃった。あんたら棒立ちでナンボでしょうに。
 このサービス精神の後でヴェルヴェット・アンダーグラウンドの例のジャケを見ると、バナナめちょっとすかしてやがんな、と思ってしまう。

 なんとなく見回した感じ、US人気の高いところがアニメ化してるようにみえる。たとえば90年代のロックでいうと、グランジは対応率高いがブリットポップはそんなに、といった具合。
 一方で、ヒップホップはトラヴィス・スコットクエイヴォらの最新作が動くけど、今のところ90年代、00年代の名盤はあまり対応していない模様。そんな中、最近サブスク解禁されたデ・ラ・ソウルはバッチリくるくる回る。

 しかしU2が動かないのは意外だ。なんなら率先して動くべきだと思うのに……。

 と、いろいろ見てみたけれど、名盤だるまさんがころんだをやってくれるような友達も別にいないので、最後に「このジャケが動いたら怖すぎる、動いてくれるな、動いてくれるな……」と祈りながらクリックしていく新遊戯『名盤きもだめし』にチャレンジして終わります。みんなも面白いアニメーションジャケットを探してみよう!

キング・クリムゾン『クリムゾン・キングの宮殿』
フリートウッド・マック『英吉利の薔薇』
ディスターブド『The Sickness』
ザ・ラーズ『The La's』

さあ動くのはどれだ

 クリムゾンは定番としても、こんなに張り詰めた気持ちでラーズの1stに臨む日がくるとは……

でも結局いかにも動かし甲斐のありそうなジャケが微動だにしないのがいちばんこわい

Jonathan Hickman & Valerio Schiti〈G.O.D.S.〉#1

 話は変わりまして、ジョナサン・ヒックマンの最新コミック〈G.O.D.S.〉誌を読みました。

 リヴィング・トリビューナルの杖を手にした悪しき魔術師による〝バビロン・イベント〟の危機が世界に迫っている。

 ドクター・ストレンジの号令で、ヒーローや地球の叡智が世界図書館に集う。
 その中にまじって、一歩引いた位置から高みの見物を決め込む者たちもいた。
 千年の長きにわたり〝ザ・パワーズ・ザット・ビー〟に仕えるただひとりのアバター、サー・レッドウィンと、〝ザ・ナチュラル・オーダー・オブ・シングス〟の代理人ディミトリ・ザ・サイエンスボーイ。対立する両概念のバランスを保つ任に就くエージェントコンビが、久々にその姿を現したのだ。

「我々こそが世界の最後の希望なのです……」ヒーローたちを鼓舞する勇ましい演説が最高潮に達する中、ウィンはディミトリに退室を促し、そしてこう言ってのける。「見たかあれ? だからあいつらが苦手なんだ、なんだか芝居がかっちゃってさ……」
 バビロン・イベントに正面から挑むヒーローたちには背を向けて、〝ザ・パワーズ・ザット・ビー〟の化身がその手腕を発揮する!

「きみはどうなんだ、ウィン?  君は善なのか、悪なのか?」
「おいおいスティーヴン……いまどき誰にその見分けがつけられるっていうんだ?」

 コミック読者だけの"Our little secret"がここにまたひとつ。

 MARVEL最新・最先端、鳴り物入りで今週から始まった完全新規シリーズ。とはいえヒックマンということでちょっと構える向きもあるかと思いますが、たしかにThe-Powers-That-Be、The-Natural-Order-Of-Things、97th Centivar、などのきいたことないマーベルワードこそあれこれ飛び交うものの、ひとまず#1は奇想や斬新なコミック話法は控えめ、ニューヒーロー紹介編のきれいな「第1話」という感じで非常に読みやすかったです。謎めくニューヒーロー・ウィン、口の減らないクールな相棒と思わせて、なかなかのワトソン感というか、関口感、石岡感というかが可愛らしいディミトリ、ナチュラル側の科学機関The Centumでのしあがる野心家にしてウィンの元妻アイコ・マキなど、ヒックマンが送り込んだ新キャラクターたちもすでにしっかり出来上がっていて、楽しく物語を追えます。

 もちろん、ミスティックもコズミックもみんな巻き込む壮大な物語の予感はビンビンに漂っており、Valerio Schitiのアートにも〝この新規フランチャイズはきっと太いものになりまっせ〟という説得力が充満。ことによると後々「あれをリアルタイムで目撃したんだ」と自慢できちゃうタイプの作品かもしれない、し、そうじゃない可能性だってもちろんあるけれども、ちょっとでも気になってる方はとりあえず#1だけでも読んでみればいいじゃない!

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