相対的貧困から透けて見える「底抜け社会」
以前、貧困について考える記事を書きました。
この中でも最後には、相対的貧困について考えています。
今日、日経ビジネスのメルマガで読んだ記事が、そのあたりに関わっていました。
貧困にはもう1種類、「相対的貧困」と呼ばれる指標があります。その国の文化・生活水準と比較して困窮した状態を指し、具体的には「世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない人々」と定義されています。
この相対的貧困率が、日本は、16%くらい。つまり6人に一人くらいが貧困だというわけです。OECDの調査では、日本はG7でアメリカに次いで下から2位。この図では下から7番目です。
この後、この記事では、様々なデータから状況を読み解いていきます。
貧困に関する研究の第一人者である阿部彩先生の「貧困統計ホームページ」に、詳細な分析結果が掲載されています。
その結果は、若者と高齢独身女性でした。
主に10代後半~20代前半の若者と70代以上の高齢者の相対的貧困率が高いと分かります。70代後半の女性の4人に1人が相対的貧困というのは、なかなか衝撃的な結果です。
そして、その中身を見ていくと、世帯構造的には、単身世帯とひとり親世帯の貧困が目立ち、結果として、相対的貧困が世代で受け継がれていく可能性を示しています。
10代後半~20代前半の若者、70代以上の老人、そして母子・父子家庭(子ども含む)。この3つの層に、相対的貧困が多くいると言えるでしょう。
若者の貧困については、冒頭に挙げた自分の記事でも引用したSPAの記事でも取り上げていました。貧困家庭に生まれて、教育を受けていない(進学できない)ことがさらに貧困を固定してしまうことになります。
この日経ビジネスの記事でも、いろいろなデータを見た上で、結論として貧困の世代継続性というか再生産について導き出しています。
本人が自らの意志で「大学に行かない」と選んだならともかく、「大学に行けない」と言わざるを得なかった。「学ぶ環境」が無く、適切に学業を修められなかった。これこそが貧困が与える影響でしょう。その結果、その家庭に生まれた子どもも相対的貧困に陥りやすくなる。結果、貧困は連鎖し、再生産されてしまう。
次に生活保護と貧困の関係についてデータを掘り起こします。
捕捉率(生活保護を利用する資格がある人のうち実際に利用している人の割合)の低さと、地域差の問題です。
学術研究の一環として就業構造基本調査の「オーダーメード集計」を用いて、都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、生活保護の捕捉率を集計した論文を発表されたのが山形大学の戸室健作准教授です。
これを見ると、沖縄の特殊性が浮かび上がります。貧しくても地域や仲間内でなんとかしようという考え方があるのが、この飛び出した点から見えます。
一方で、生活保護を受けている人の問題(多い、該当しないのに受けてるなど)が指摘される大阪府は抜群の捕捉率であることがわかります。
東京が貧困率の割に捕捉率が高いことも見て取れます。生活保護を受けている率がある程度あるということです。
逆に、捕捉率が低い県は貧困者が生活保護を受けていないということですから、その原因が気になります。比較的裕福だといわれる県である福井、富山が貧困率が低いのはわかりますが、ただ、捕捉率も低いのは、その県で貧困だと生活保護を受けにくいのかなとうがった見方をしてしまいそうになります。
この記事は、こうしたデータから見た相対的貧困について、次のように締めくくります。
数字を見えないままにしておくと、あるはずの現実も無いことになってしまいます。それが生活保護を巡る現状です。貧困の実態は3年に1回の国民生活基礎調査(厚生労働省)と、5年に1回の全国消費実態調査(総務省)のデータを加工しないと分からないのが現状です。こうした状況でよいのでしょうか? これは、行政を動かす政治家の仕事です。
私は、このデータを見て、日本社会の底が抜けている感じが現れている気がしました。
日本社会の「底が抜けている」、というのは、宮台真司さんが使って知られてきた言い方なのですが、たがが外れたというか、境界線があやふやになっている現代社会で、それまでの常識で囲っていたような前提が意味をなさなくなっていることを意味しています。
社会保障において底が抜けているとなると、落ちるだけ落ちていくしかない貧困者の姿が浮かんできます。支えがない感じ。セーフティネットがない感じ。
相対的貧困の問題は、実は、超高齢社会を考える上でキーワードになるのではないかと考えていまして、次世代社会構築の前提として認識しておくべき問題だと思います。
一億総中流時代が懐かしいということですね。
社会なんてあっという間に変わるんだなあ、と思います。まあ、一億総中流時代から元号も二つ目なわけですけどね。
サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。