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SDGsは「大衆のアヘン」なのか「アイデンティティ経済学」の希望なのか

岸田総理のいう「新しい日本型資本主義」の正体を考えるために、こんな一文を書きました。

そして、ステークホルダー資本主義に行きつきました。

どうもこの辺りに、岸田首相がいう「新しい資本主義」の元ネタがありそうです。さらにステークホルダー資本主義が重視するのはESGであり、企業活動はSDGsを意識したものにならざるを得ないようです。

となると、資本主義の行き詰まりを指摘する本とSDGsを称揚する本に当たらないといけませんよね。

この二つの本を読み比べています。

なぜならば、SDGsに対する期待が全く真逆だからです。

「人新生の資本論」では、はじめにで「SDGsは「大衆のアヘン」である!」と言い切っているからです。

SDGsは一見すると非常にポジティブなものとして捉えがちですが、それに対して、私は警鐘を鳴らす意味で「SDGsは大衆のアヘン」と言っています。その意図は単純で、SDGsが今のような間違った使われ方をすることで、求められている社会の大転換の必要性が見えなくなってしまうことへの危機感です。SDGsの17あるゴールの内のいくつかを恣意的に取り出し、企業がその推進をPRすれば、消費者もマイボトルやマイバッグを持つようになって自己満足感を得られます。しかし、それでは問題は根本的には何も解決せず、むしろ危機は深まるばかりなのです。

これは、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんが環境問題に気付いていながら、それでも「経済発展」の牽引力の一つとしてしか、環境問題を考えていない経済人に向かって「怒りのスピーチ」をしている状況と近いと感じます。

それなのにあなたたちが話しているのは、お金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!

既存の経済活動の延長戦に、現在、人類が直面している諸問題を解決する方法はない。だからこそ、グレタさんがいうように「今すぐ止める」のか、斉藤さんが言うように「脱成長コミュニズム(コモン主義)」を目指し「コモンの復活」に注力するのか。

私は、そのどちらも「活動」にはなるかもしれないけど、体制を動かせないようなもどかしさを感じていました。カウンターパンチにはなっても決定打ではないというか。

ではどうすれば良いのか。

活動家でも経済学者でも政治家でもない私に「腹落ち」する言葉はないものか。

そこに、竹下さんの本と出会いました。竹下さんは以前、編集教室で講義を受けたことがあり、その明晰でロジカルな語り口に納得するところが多く、さすがハフポスト編集長と思っていたらば、お辞めになって、新たに起業されると言うので注目していたのです。

その竹下さんの著書が「SDGS」に関するものなのは、新たな会社の事業領域だからなのですが、なぜそうなったかが、この本に書いてあるらしい。

 2021年6月に編集長を退任し、ハフポストを辞めて、新しい経済コンテンツサービス企業「PIVOT」の創業メンバーになった。新しい職場のPIVOTでは3億円の資金調達を実施。私は、執行役員兼SDGs専門のチーフエディターになる。

竹下さんは、SDGsが注目されているから、これから大事だから、と言うようなレベルではなく、その裏側に大きな変動があることを感じ、これをビジネスの方向性だけでもない、人類の必然的な変化の方向性と捉えているようなのです。

なぜ、いきなりSDGsが流行しているのか。地球環境が悪化し、このまま気温が上昇してしまうと人類や他の生物が住めなくなったり、異常気象によって命が奪われたりする「危機」が迫っているということもある。しかしながらSDGsは、よくある誤解と異なり、環境問題だけを扱っているわけではない。ジェンダーや教育の平等も対象だ。まちづくりや健康、福祉の分野も含まれる。

グレタさんや斎藤さんが「環境問題」と社会経済の話だけをしているのだとしたらば(斎藤さんはもう少し別の側面もありますが、それは置いておいて)、竹下さんはSDGsを17項目全てで捉えようとしているわけです。

そして、どうやら竹下さんは、前回の記事で私が気になった「ステークホルダー資本主義」の方向性に期待を持っているようなのです。仕事の中心にSDGsを置くことで見えてくる世界があると思っているようなのです。

一方で、ビジネスの力で社会問題を解決すると言うことになると、CSVと言う概念があります。CSV(Creating Shared Value)は、経済学者のマイケル・ポーターが提唱したものです。

日本でもCSV開発機構と言う団体が企業を取りまとめて事業推進しています。

社会問題の解決と企業の利益、競争力向上を両立させ、社会と企業の両方に価値を生み出すための経営フレームワークです。資本主義のメカニズムを生かし、ビジネスの力で社会的課題に取り組み、社会価値と企業価値の両立と、ソーシャルインパクトの継続的拡大を促します。

当然、そのテーマにはSDGsで挙げられている問題は含まれています。

しかし、もっと企業活動そのものが、SDGSそのものに立脚すると何が変わるのでしょうか。

そう言う話を、竹下さんの本から読んでいきたいと思っています。


サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。