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吉本興業について語りたい人は必読。経営者、マネジメントを語る人も必読。「吉本興業の約束」大崎洋・坪田信貴

この本は、思っていた以上に「凄い本」でした。

凄い本を生んだ構成の妙

凄いというのは、吉本興業に関する話がすごく赤裸々で「凄い」ことと、大崎さんという人の「凄さ」がわかることの二つの意味があります。

この本は、昨年、闇営業問題で騒動になった吉本興業の会長である大崎洋さんと著書「ビリギャル」で有名な塾長・坪田信貴さんと言う意外な組み合わせの対談本です。

なぜこの二人の組み合わせなのか。

そこに、すでに大崎さんの凄さの片鱗があるのですが、出会ったその日に大崎さんが坪田さんに吉本興業の社外役員を依頼し、それから二人で週3回以上にわたって会って話していると言う濃厚な付き合いだと言う不思議。

対話の相手は、キングコングの西野亮廣さんに紹介され、会ったその日に意気投合し、吉本の社外役員になることを頼んだという『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称『ビリギャル』)著者の坪田信貴さん。

この本が、ある種の客観性を持って、闇営業騒動を始め、吉本興業に持たれているイメージや疑問を払拭する効果があるのは、この坪田さんが聞き手として、大崎さんの話を補足していることと、この二人に加えて第三者を登場させ、その人と大崎さんのやりとりで話を展開しているという構成の妙にあります。

窓際社員・大崎洋はいかにして会長になったか

エンタメ愛を超えて、地方創生・アジア・デジタルへ!
吉本会長と『ビリギャル』著者がタッグを組んだ!

約6千人の所属タレントを擁する日本屈指のエンタメ企業である吉本興業。だが、大﨑洋会長はこのままでは、デジタル革命に〝よしもと〟は飲み込まれると危惧する。「地方創生・アジア・デジタル」をキーワードに、百年企業はどのように進化していくのか?

第1部吉本会長が語る理由
第2部大阪を元気にしたい
第3部タレントとの理想の契約
第4部吉本が考える地方創生
第5部コロナ後に吉本が向かう未来

文春のコピーはしょうもないのですが、こうとしか書きようがないのもまた確かです。

大崎さんの発想と視点が、吉本興業への愛を出発点に、飛躍しまくっている上に、その種を撒きまくってきたのが2009年からの大崎体制であり、それを実現することが可能になってきたのがここ数年の大崎・岡本体制だということが、本を読むとわかります。

文春オンラインでは、読者が食いつきやすい「ダウンタウン」との付き合いの話を載せていますが、それはほんの入り口で、そこからだんだんと大きな話が出てきます。

2009年に吉本興業の社長に就任し、お笑い芸能事務所から総合エンタメ会社へと大きく成長させ、昨年からは会長職に就いた大﨑洋さん。

これまでは「裏方の自分は表に出ないということをよしとしてやっていく」と考えていたが、「去年の騒動もあり、ちゃんと発信していかないといけないと考えるようになった」という大﨑さんは、昨年末から、トークショーやラジオ番組などで自ら語る場を設けるようになった。そこでさまざまなテーマについて語ったことが、このほど『 吉本興業の約束 エンタメの未来戦略 』(文春新書)にまとまった。

この自ら発信しなければいけないと考えたときに、自分一人で本を書くとか、対談番組に出るというのでは無く、吉本の持ちスペースでイベントを開催し、そこに坪田さんという「通訳」を介する仕立てにするところが大崎さんの面目躍如なのです。

どういうことかというと、自分一人で解決しない、発案はするが運用は出来の良い他人に任せる、責任は自分にあることを明言する、という見事なプロデューサー気質なところです。

転んでもただでは起きないというか、きちんと吉本の仕事として成立させ、波及効果がある。話すと決めれば、イベントだけでは無く、ラジオ番組をKBS京都で持ち、その発信も社外だけでは無く、社内を意識したものにしている。

吉本興業の中で、主流派でも無く、長年、窓際社員だった大崎さんが、やることがないから、自ら手をあげてポジションを求め、さらに新規事業ばかり立ち上げてきたことで、吉本興業が、吉本家の家業を脱して、総合エンターテインメント企業としての今の事業を形づくり、その結果として社長、会長まで行き着くことになったわけです。

その流れが、第1部、第2部あたりになります。

アメリカの契約と吉本の契約、どっちが上?

そして、大崎さんの話の内容は、どんどん濃くなっていきます。

吉本興業という会社の特殊性は、業態よりも何よりも、実は、会社として珍しい経緯をとっているところです。

それは、戦後すぐから長年上場企業だったのが、創業家からの決別を図るために、上場廃止しているところです。

闇営業問題が週刊誌で取り沙汰されたときに、散々見出しになったのが「反社との付き合い」でした。

この問題について答えているのが、第3部です。

もともと、芸能事務所、イベント運営会社、劇場所有会社といういくつもの顔を持つ吉本興業は、業界第一と言えたのも上場企業だったことで、社会的な責任を果たしているという言い方ができたからでした。

この業界の常識であり、長年の慣習である地元興行師=テキ屋との付き合い、高じて反社会勢力との付き合いを覆い隠すために、上場企業であることが重要だと思われてきました。

ところが、2007年大崎洋さんが副社長になり、吉本興業の経営形態が大きく変わります。

まず持ち株会社制度を導入します。ロゴを改めます。

2008年東京本社を新宿区の元小学校に移します。

アメリカ最大手のエージェント会社「CAA」と提携します。

2009年第1回沖縄音楽祭を開催。4月大崎さんが社長になります。

2010年上場を廃止します。

このCAAとの提携や上場廃止を牽引したのが、当時、大崎さんの片腕だった中多広志さん。

第3部のゲストです。今は独立されて吉本の特別顧問についています。

そのイベントの様子がyoutubeにもなってます。

この内容は、実に衝撃的ですが、書いてしまうのがもったいないので、本を読んでいただきたいです。

まあ、イベント動画を見れば大体分かるわけですが。

この動画は、吉本興業のウェブサイトに掲載されています。闇営業問題で取り沙汰された「契約」「ギャラの取り分」「マネジメント」に対する答えが、ここで話されているからでしょう。

その肝となるのは、中多さんが語っている「アメリカの契約が進んでいて、吉本の契約が遅れているわけではない」ということです。

エージェントとマネジメントが分かれていること、契約書が全てであるアメリカの契約が優れているというのは、アメリカのエンターテインメントの契約の実情を知らない人の思い込みだというのです。

吉本は、CAAと提携していますから、アメリカの契約について他の日本のプロダクションに比べて遥かに通じているわけです。

また、上場廃止の理由は、創業家との決別=反社会的勢力との決別だったので、現在の株主との契約から反社会的勢力に対するチェックは遥かに厳しい。

株主

しかし、世間は、そうは思わないわけですね。

朝ドラ「わろてんか」の影響もあって、吉本せい、林正之助時代のままだと思っている。

その辺りが、全く知られていないことが問題だったわけです。

上場廃止に関する経緯は、実に凄まじいですし、当事者の声ですから読み応えもあります。

この章だけでも、読むと良いと思います。

それは、吉本を知るというより、反社会的勢力と株主総会とか、アメリカの契約と日本の契約の問題を考えている人にとって生の声として参考になるからです。

さらに。第4部も面白いのですが、長くなったので、この辺りで。

それにしても、吉本興業がどれだけ多岐にわたる事業をしているかは、この関連サイトでもわかりますね。

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今日、明日、イベント開催してますね。残念ながら募集は終了しています。

<岩手会場>
日時:9月8日(火)受付17:45 開演18:00~19:30終了(予定)
会場:紫波町情報交流館大スタジオ(岩手県紫波郡紫波町紫波中央駅前二丁目3番地3)
出演:大﨑洋、坪田信貴/清水義次、岡崎正信、アンダーエイジ(岩手住みます芸人)

この清水さんが本の第4部のゲストですね。

地方創生と吉本興業という話になります。



サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。