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漫才論| ⁴⁵カバー漫才台本 「チュートリアルの『バーベキュー』をおぼん・こぼんがカバーしたら」

「カバー」と言いながら,カバーではなくコピーやモノマネになってしまうパターンが多いカバー漫才ですが,その原因についてはこちらの記事で書きました

原因が分かっても,コピーやモノマネではない「カバー漫才」がどのようなものなのかを見てみないとイメージが湧かないかもしれないと思い,カバー漫才台本を作ってみました

元ネタは,2005年のM-1グランプリ決勝で披露されたチュートリアル「バーベキュー」のネタです。今回はこのネタを「おぼん・こぼんがカバーしたらこうなるのではないか」というイメージで書いてみました(読みやすいように元ネタよりも短くしてあります)

こぼん:明後日ね
おぼん:ほぅ明後日
こ:バーベキューに行こうと思ってるんですけどね
お:一人で?
こ:みんなでですよ
お:みんなで?
こ:あたりまえでしょ
お:あんなもんみんなで行ったらあかんて
こ:なんでバーベキューに一人で行かなあかんねん
お:一人で行ったらね
こ:うん
お:串に具材を刺し放題ですからね
こ:食べ放題じゃなくて?
お:刺し放題
こ:「串に具材を刺し放題」はうれしくないでしょ
お:うれしいですよねぇ
こ:一人でひたすら串に具材刺すってことでしょ?
お:そうそう
こ:寂しいだけやないか
お:少しも寂しくないよ
こ:なんで?
お:
自由に具材を串に刺せるんやから
こ:ああいうのはみんなでやるから楽しいんですよねぇ
お:一人なら自分の好きな順番で刺せる
こ:「好きな順番」って何?
お:誰にも邪魔されず,一人で好きなように具材を刺すのが楽しい
こ:みんなで行っても,みんな自分の好きなように刺してるでしょ
お:みんないても自分の好きな順番で刺してええの?
こ:いいでしょそれは
お:そういうもんなんですか?
こ:あなた誰に気遣ってんの?バーベキューの時
お:そしらたまず肉を刺してね
こ:まずは串に肉を刺しますわなぁ
お:バーベキューですからね
こ:ほんで?
お:お次は,ピーマンを刺してもいいんでしょうか?
こ:だから誰に気遣ってんねん
お:諸先輩方に
こ:「諸先輩方」って
お:気遣いますよねぇ
こ:老人クラブでバーベキュー行ってんのか
お:あほなこと言うな。シニアクラブや
こ:おんなじことやないか
お:バーベキューの"先輩"に気を遣ってるんですよ
こ:バーベキューの"先輩"ね
お:そうそう
こ:まぁつまり年下の"先輩"もいるってことね
お:ほとんど年下ですよ
こ:まぁまぁこの年になるとね
お:年下の"先輩"に気を遣いながら
こ:そこまで気遣わんでもええと思うけど
お:「肉の次に本当にピーマンを刺してもいいのだろうか」と,諸先輩方の顔色をうかがいながら
こ:気遣いすぎや
お:そうですか?
こ:ただねぇ
お:何?
こ:ちょっとダサいですけどね
お:何がダサい?
こ:「肉→ピーマン」から刺し始めるのは80年代の刺し方ですからね
お:「80年代の刺し方」って何?
こ:私やったらね
お:ほぅ君やったら
こ:まず肉を刺してね
お:まずは肉ね
こ:次にとうもろこし,とかね
お:それは90年代の刺し方やないか
こ:「90年代の刺し方」ってなんやねん
お:それは古いしダサいでしょ
こ:80年代の刺し方より新しいやないか
お:何事にも「流行り」というものがありますからね
こ:そうでございますよ
お:知ってますか?
こ:何?
お:
今年の流行り
こ:2021年は,ピーマンから刺すのが流行り
お:そうなんですよ
こ:知ってます?
お:
今年のバーベキューはみなさんこぞってピーマンから刺し始めるんです
こ:流行りというのはそういうもんでございますからね
お:だから私はね
こ:あなたは
お:ピーマン→ウィンナー→鶏肉→エリンギでいってみようかと思ってまして
こ:ニューヨークスタイルね
お:ニューヨークスタイル?
こ:今年ニューヨークで大流行した刺し方
お:具材を串に刺すのにそんな「スタイル」とかあんの?
こ:ありますよなんでも
お:あ〜そう
こ:スタイルというものが
お:ニューヨークスタイルね
こ:私のスタイルはねぇ
お:あなたのスタイルは
こ:ピーマン→たまねぎ→エリンギ→ホタテ
お:それはトーマス・マッコイの刺し方やないか
こ:「トーマス・マッコイの刺し方」って何?
お:近代バーベキューの父
こ:近代バーベキューの父!?
お:
トーマス・マッコイですよ
こ:あの「ニューヨークスタイル」の生みの親の?
お:え?あっそう!あのニューヨークスタイルの!
こ:「ニューヨークスタイル」知らんかったやないかさっきまで
お:実はぼくもねぇ
こ:はいはい
お:トーマス・マッコイにも引けを取らない刺し方を考えてきましたから
こ:具材の刺し方を考えてきたんですか?
お:考えてきました!
こ:そういうことを家で考えてくる人はあんまりいないですけどね〜
お:
まずはピーマン
こ:ピーマンからが今年の流行りですからね
お:そして,ベーコン→アスパラ→ウインナー
こ:普通やなそれは
お:「普通」って。「スタンダード」と言うてくれ
こ:ええように言うな
お:ほんならあんた刺してみいな
こ:私が?
お:刺し方にオリジナリティを出すのが難しいんでございますよこれが
こ:私やったらね
お:君やったら
こ:ピーマン→エリンギ→とうもろこし→とうもろこし
お:君やってた?
こ:何が?
お:初めてではないやろ?
こ:バーベキューはやったことありますけどね
お:そうやろ?
こ:「やってた」とかそういうもんと違うんじゃありませんか?
お:最後「とうもろこし→とうもろこし」でしめるなんて完全に師匠の刺し方ですからね
こ:師匠の刺し方?
お:そう
こ:これが?
お:ホームページ持ってんの?
こ:なんの?
お:バーベキューの
こ:バーベキュー専門のホームページなんて持ってるか!
お:師匠!もう一本刺していただいてもよろしいでしょうか?
こ:私,バーベキューの「師匠」ではないんですけどね
お:もう一本お願いします
こ:ほんなら,ピーマン→イカ→ベーコン→とうもろこし
お:素晴らしい作品ですね。師匠!
こ:師匠になると,「作品」って言うてもらえるんですか?
お:早速その新作を披露されてはいかがでしょうか?
こ:「新作」とかそんなたいそうなもん違いますよ
お:明日のバーベキューで
こ:「明日のバーベキュー」って何?
お:私あの〜明日バーベキューに行く予定なんですよ
こ:それは知らんけど
お:そうなんでございますよ
こ:私は明後日みんなでバーベキュー行く予定ですからね
お:いや師匠。明日も行きましょう
こ:なんで二日続けてバーベキュー行かなあかんねん
お:明日のバーベキュー,一人で行くの寂しいんですよ
こ:一人で寂しいんやないか

これを読んで,「チュートリアルのモノマネ」という印象はなく,「おぼん・こぼんのネタのようだ」と感じられたら,「カバー漫才」として成功だと思います

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フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔  出演: おせつときょうた

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あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】