漫才師とコント師"二刀流"ランキング:コントが得意なコンビの漫才が「漫才っぽくない漫才」になってしまう理由
M-1でいつも議論になるのが,「あれは漫才なのか問題」です。特に,コントが得意なコンビの漫才がよく問題になります。ジャルジャルやアルコ&ピースやさらば青春の光などなど…
漫才っぽくない漫才でも突き抜けておもしろければ高得点は狙えると思いますが,M-1は漫才の大会ですし,ネタを二本やるので,二本とも漫才っぽくない漫才で優勝するのは難しいと思います。その辺は,どんなにおもしろくても漫才っぽくない漫才には高得点を付けない審査員がいることで,「漫才の大会」としてのバランスを保てているのかもしれません。
「漫才っぽくない漫才」って何?
「お笑い好き」の方はそんなに気にはならないのかもしれませんが,「漫才好き」にとってはどうしても「漫才っぽくない漫才」が気になってしまいます。
漫才のベースは「二人の素の会話」であり「素の自分(たち)」です。一方,コントのベースは「演技」であり「役」です。コントが得意なコンビは,漫才でも何かの「役」を演じていて,それを「漫才風に見せるというやり方」をする場合が多く,これが「漫才っぽくない漫才」という印象を与えます。
ちなみにこれは,漫才の中でコントを演じる「漫才コント」かどうかという話ではありません。
漫才師らしい「漫才コント」と漫才っぽくない「しゃべくり漫才」
「漫才コント」であってもベースが「素の自分(たち)」であれば「漫才師らしい漫才コント」になります。アンタッチャブルがまさにこのタイプです。
逆に,コントが得意なコンビは「漫才風に見せるというやり方」をするので,いわゆる「漫才コント」ではなく「しゃべくり漫才」の形にすることがよくありますが,ベースは「演技」(漫才師を演じるというコント)という状態なので,漫才が好きな人にとっては「あれは漫才ではない」と感じます。
コントが得意なコンビの漫才が「漫才っぽくない漫才」になってしまう理由
コントは,「役になりきる」ことによって生まれる空気感や緊張感が独特の笑いにつながります。本当に役になりきってくれたほうが,コントは見やすいですし,「おもろしろい」と感じます。
一方漫才は,基本「素の自分(たち)」でいることによって生まれる普通の会話のような空気感があるとおもしろく,見やすいです。「漫才師を演じる」という形で役になりきってしまうと,「普通の会話感」が消え,「演じてる感」が出てしまうので,違和感を覚えます。「完全に決まっているセリフを言っているだけ」という雰囲気が出てしまうからです。
コントが得意なコンビはコントでの確実な笑いの取り方を知っているだけに,「役を演じる」という方法で漫才をしてしまうので,「漫才っぽくない漫才」になってしまいます。こういう漫才はなかなか「何回も見たい」という気持ちになれません。
漫才が得意なコンビは結構「コントっぽくないコント」をしている
実はその逆もあります。漫才が得意なコンビがコントをやる場合,「役になりきる」のではなく「素の自分(たち)を出す」という方法を使うことが多いので,「コントっぽくないコント」になることがよくあります。
そこで,漫才は漫才らしく,コントはコントらしく,両方できる「二刀流」芸人のランキングを作ってみました。m…漫才を漫才らしく演じている漫才ポイント,c…コントをコントらしく演じているコントポイントで,最高得点は[m50.c50]の合計100点です。完全にわたしの主観ですが,漫才らしさ,コントらしさ,ネタや演じ方の完成度などで点数をつけています。同点の場合は,漫才とコントのバランスがいい方が上位になります。点数は随時変更します。
※追加してほしいコンビがいましたら,コメントからお願いします。
漫才師とコント師「二刀流」ランキング
92 タイムマシーン3号 [m46.c46] タイムマシーン3号のお二人には,「漫才とコントは別物」という感覚があるのではないかと思います。ここまで見事に漫才とコントを演じ分け,しかもどちらもおもしろくネタの完成度が高いコンビはなかなかいません。漫才においてはボケとツッコミが自由自在に入れ替わるスタイルを確立したすごいコンビです。
89 サンドウィッチマン [m42.c47] サンドウィッチマンは元々コントをそのまま漫才にしていたようですが,うまく漫才にはまったパターンだと思います。「うまくはまった」というより,伊達さんのあの雰囲気が「漫才向き」なのかもしれませんが…。コントにおいては伊達さんがボケまくるネタもあり,芸の幅が広いです。富澤さんはツッコミもうまいので,今後はボケとツッコミを固定しない「しゃべくり漫才」をどんどんやっていただきたいです。
85 アキナ [m41.c44] 漫才とコントを演じ分けられるコンビ。コントのほうがより得意なのかもしれませんが,コントでも掛け合いのテンポがいいので,漫才も向いていると思います。もっとしゃべくり漫才をやってほしい!
85 かまいたち [m39.c46] 山内さんは漫才でもコント寄りの雰囲気ですが,濱家さんが「漫才の空気」を作っています。年々漫才もうまくなっている印象。
85 パンクブーブー [m43.c42] コントの時は黒瀬さんがコント感を作っているかんじがします。
85 おぎやはぎ [m43.c42] おぎやはぎは何をやらせても「おぎやはぎ」。それでも,「漫才とコントの区別がちゃんとしている」という印象を受けます。
84 藤崎マーケット [m43.c41] 藤崎マーケットは漫才がうまい!コントはコントで世界観がある。どちらもいいですね。
82 ライセンス [m41.c41] ライセンスは漫才もコントもうまいです。
82 中川家 [m49.c33] 中川家のコントは独特の世界観がありますが,やはりベースが漫才ですね。
81 インパルス [m33.c48] インパルスは漫才とコントは別物としてネタ作りをしているように かんじますが,漫才は向いてないんですかね。コントは絶品です!
81 品川庄司 [m45.c36] 漫才もコントもうまいコンビですが,漫才のほうが向いているように思います。
80 ジャルジャル [m32.c48] ジャルジャルは「漫才の空気」を出せそうで出せないという印象です。ネタは間違いなくおもしろいのですが…
80 アンタッチャブル [m49.c31] アンタッチャブルは「漫才コント」をやることが多いですが,どんな役でも「素の自分たち」であり続けるので,まさに「漫才そのもの」というかんじがします。コントをやる必要がないコンビ。というか,漫才復活してください!
79 さらば青春の光 [m30.c49] 天才的なコントを作る森田さんだけに漫才のネタもコントになってしまうのだと思いますが,東口さんが「漫才の空気」を作れる方なので,「漫才の感覚」をつかんでネタ作りできたらすごいことになると思います。
78 銀シャリ [m49.c29] THE 漫才師。オチが強いネタを追求してほしいです。
77 チュートリアル [m44.c33] あの独特の徳井ワールドが活きるのは漫才なのだと思います。
76 トータルテンボス [m41.c35] 漫才もコントもあまりキャラが変わらず,「うまい」というかんじではありませんが,どのネタでも確実に笑いが取れるコンビ。キャラを作っているようでいて,あれが結構「素」なのかもしれません。
76 天竺鼠 [m40.c36] 非常に点数がつけにくいコンビ。どちらかというと漫才ベースのような気がします。コントでも役になりきるかんじではないので。漫才でもコントでも独特の世界になっているだけなのかもしれませんが…。余談ですが…,川原さんってかなりまじめな人なんじゃないかな?
76 ピース [m30.c46] 漫才とコントは別物としてネタ作りをしているように
かんじますが,「漫才は向いていない」という印象を受けてしまいます。
75 麒麟 [m45.c30] 川島さんと田村さん二人の持ち味と関係性が活きるのはコントではなく漫才なのだと思います。
73 ブラックマヨネーズ [m44.c29] 自分たちの独特の漫才スタイルを見つけたコンビなので,コントをしてもあのかんじになる。漫才やってほしいですが,なかなか新ネタ作れないようですね…
66 アルコ&ピース [m21.c45] アルコ&ピースは「漫才」というコントをやりきってる感があります。あそこまでやってくれるならもうあのままでいい気がします。
65 タカアンドトシ [m45.c20] もしかしたら「エンタの神様」で無理やりコントをやらされていただけかもしれませんが,漫才をそのままコントにするのは微妙ですよね…
※追加してほしいコンビがいましたら,コメントからお願いします。
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